羽鳥慎一さん夫人が綴る、‟夫”賛歌エッセイ~マガジンハウス担当者の今推し本『あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる』

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こんにちは、マガジンハウスです。愛を誓い合って人生を共にしているはずの相手なのに、なぜか「元気で留守がいい」とか「ATM」とか揚げ句には「タヒんでほしい」なんてネットに書き込まれがちな存在、それが〝夫″…。
今回お勧めしたい一冊は、世間でオチ的に扱われることもある夫たちへの見方が変わるようなエッセイ集です。著者は、『天体観測』や『べっぴんさん』、また現在放送中の『ウチの夫は仕事ができない』など数多くの人気ドラマを生み出した脚本家の渡辺千穂さん。超人気アナウンサーの羽鳥慎一さんを夫に持ち、1歳の可愛い女の子のママでもある渡辺さんに、ご自身の結婚生活や本書に登場した夫婦のその後についてなどなど、うかがいました。

渡辺さん、初めまして。この本、最初は渡辺さんと羽鳥さんのご夫婦関係をまとめたのかと思ったんですが、そうではなく、渡辺さんのご両親や周辺の夫婦たちのエピソードから浮かび上がる、愛しかったり憎たらしかったりする夫列伝でした。あの、「私の夫」だけで書こうとは思わなかったんですか?

渡辺:いや……私の夫だけだと、きっとこんなにネタがなかったです(笑)。

そうなんですか! 確かに、本書でちょろっと出てくるエピソードを見ると、実はあんまりご自分の夫には不満がないのかな~って。

渡辺:ないですね、全然。

それは羨ましい。

渡辺:たぶん、私があんまり不満を持たないタイプなのかもしれないです。この本を書くにあたって、夫がいるいろんな女性にお話を聞きましたが、不満についてたずねると、たいていみんな「○○してくれない」とか、「私ばっかり~~してる」とかなんですよね。私は基本、やってもらわなくていいと思ってるから。頑張って働いてきてねって感じなので(笑)。

でも、ご主人が朝の番組やってらっしゃるから、結婚した途端、かなりの朝方生活になりましたよね。それも別にいやではなく?

渡辺:ええ、流れで。だって彼がレギュラーで仕事している以上、こちらの生活には絶対合わせられないですよね(笑)。だからそういう不満は全然ないです。

では、結婚してみたら思ってた彼とちょっと違うかな? というのもないですか。

渡辺:ないですね。彼も文句をあまり言わないタイプだし、ダイエットしてるのであんまり夜も食べないから楽です(笑)。最近は健康のためにお酒もそんなに飲まず炭酸水だし。

ちなみに「夜」ってどれぐらいの時間のことを言うんですか?

渡辺:えっと、一緒に夜ごはんを食べに行くとしたら、だいたい17時スタート。

はやっ(笑)。

渡辺:16時半からやってるお店があると、「ここやってるらしいよ!」ってチェックしたり。18時はまだギリギリOKですが、19時になると「ダメだよそんな遅いスタートは」ってなりますね。もちろん、誰かと食事に行く時などは合わせますが、20時スタートだとさすがに翌日響くので金曜じゃないとダメですね。

さっきも仰ってましたが、そういう生活を、渡辺さんが嫌じゃないんですよね。そんな早い時間から外食なんてとか、もっと夜通し飲んでいたいわとか。

渡辺:そうですね、もうやりきったんで(笑)。

20代30代でそこらへんはもうやりきったと(笑)。

渡辺:はい。その頃はもう目覚まし時計をセットするのもいやだった。

どういう意味ですか?

渡辺:別に何時に起きようが、原稿さえ書けばいいやっていう生活だったんですよ…。起きてから時計見て「ああ3時か…これって夜中の? 昼の?」みたいな(笑)。

うわあ(笑)。今の朝方生活と真逆ですね。

渡辺:ほんとそんな感じだったの。

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独身時代から売れっ子脚本家として激務続きの生活だった渡辺さん…なのに美しさを保たれているのが素晴らしい。

本書に出てくるような、妻がちょっと不満を持っている夫婦って、主な原因はどこにあると思いますか?

渡辺:やっぱり、さっきも言いましたが、「あれをやってくれない」など、相手に期待しすぎることかな。

渡辺さんはあんまり羽鳥さんに期待してないんですか(笑)。

渡辺:うん、できることは相手に頼らず自分でやろうと思ってるから。とはいえ彼も気を遣って色々やってくれたりするから、そういう時は「ありがたいな」って思いますね。

偉い…。

渡辺:そんなことないですよ(笑)。あとは、子供に関することの不満もすごく多かったですね。子供がいない頃は、まあごはんは妻の方が作ったとしても、自分のことは夫婦各自でやってたのが、状況が変わってくる。子供をお風呂入れるのってほんと大変なんですが、それを妻がひとりキーッってやってるところに、夫は酔って帰ってきたりすることへの不満とか。ごはんいるって言ったから子供の分とは別に夫の食事を用意したのに食べないんじゃないかよーバカヤロー! とか(笑)。

わかります(笑)。

渡辺:まあ、そういう不満が多いんだけど、私は――これは遅く産んだからこそだと思うんだけど――子供が寝たらホッとするっていうのがないんですよ。「えー、寝ないでもうちょっと遊ぼうよ」「もう寝ちゃうの? おーい!」みたいな感じなので(笑)。子供と過ごすことが全然苦にならない。

それも、若い頃のハードな生活で培ったスタミナでしょうか(笑)。

渡辺:なのかな。あとはもちろん、色んな人や両親に助けてもらえるなど、恵まれてる環境だからだと思います。とはいえ、頼れる身内が近くにいなかったとしても、やっぱり夫にこうしてほしい! とは思わないような気がしますね。

求め過ぎない。

渡辺:ええ。だって生放送の仕事を毎日するって大変なことだと思うんですよね。それだけでも大変なのに…。

それ以上そんな(笑)

渡辺:うんうん。

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「夫への不満はないです」と断言する渡辺さん。羨ましい!

ところで、この本に出てきた夫婦たちの中で、本に書いた後で変化したとこってありますか?

渡辺:まずね、毛蟹エピソードのモデルになった彼女。

トルコ人のご主人が同郷の男性を常時複数人、家に住まわせちゃってるご夫婦ですね。

渡辺:その彼女は、この本を書いたときまでは夫に対してすっごく不満だったんだけど、今はちょっと落ち着いてて。なんでかというと、彼女は派遣で働いてたんですが、最近、元々いた業界に戻って正社員になったんです。自分が落ち着いたから、毛蟹に対してもちょっとこう…。

余裕が出てきた。

渡辺:そう、余裕が生まれてきた。一生このままじゃ困るけど、まあ今のところは許してやるか、っていう。あとは、妻のチョコレートを半分食べちゃう旦那さん。

あれ可愛かったですよね!

渡辺:あの彼は自分が本に載って、すっごく喜んでて。

やっぱり可愛い奴なんだ~(笑)。

渡辺:ほんっとに喜んで、家でもすごく優しく色々やってくれるみたいで、もう半分齧るのもなくなったみたい。

奥さんの不満を本に書いてよかったですね(笑)。あの、渡辺さんご自身は、ご主人にこういう本を書くって…書いてる最中は御相談されたりしたんですか?

渡辺:相談はしないけど、こういうの書いてるよとは言いました。

…なんて仰ってました?

渡辺:あ、頑張ってねーって。でも本が出たら読んでましたよ、ちゃんと全部。

「俺の事どういう風に書いてる?」って途中で入って来たりしないんですね(笑)。ふだんから、脚本のほうも、渡辺さんが何をされているか…

渡辺:何をしているかはわかってます。何のドラマをやることになったとか。でも、細かい内容とかは全然話さないですね。

渡辺さんは羽鳥さんの番組、全部見るんですか?

渡辺:家にいるとけっこう見ますね。彼も、番組のお掃除特集でこういうのやったよって教えてくれたりするから、家でそれを実践してみたり。

いいなあ。やっぱり、ご自身の夫婦関係が安定しているから、他の夫婦を冷静に見たり書いたりできるんでしょうね…。この本って、装丁もピンクだし、主に女性読者が多いとは思うんですけど、男性読者、たとえば夫たちが読んでもいいのでしょうか。

渡辺:はい、男の人が読んでもおかしくないですよ。むしろ男の人に読んで頂いて妻を理解して欲しい(笑)。

「夫の話」って言うとどうしても悪口中心になるじゃないですか、エッセイとかでも。この本はそうじゃなくて、どんな‶夫″にも素敵なところがあるんだよっていう愛がありますもんね。

渡辺:ありがとうございます。確かに、本当に夫の悪口だけで盛り上がってしまう妻グループっていうのはあるんですよね。みんながみんな夫の悪口を報告するかのように言ってる。

悪口報告会…。

渡辺:誰かひとりが夫に対する文句を言うと他の人が「あ~わかる」、「やりそうだよね」とか同調してくれる。吐き出したい気持ちはわかるんですけどね(笑)。会ったことない人の夫について、悪口だけで盛り上がるような、そういう本にはしたくないなと。

確かに。エスカレートしちゃうんですかね、「私も私も」って。だからこそ、ここまではっきり「素晴らしい」って言えるってすごいです。最後に、まだ伴侶を得ていない独身の男性、女性に向むけてこの本のおすすめを教えていただけますか?

渡辺:独身時代は独身時代で素晴らしいものがあるんだけど、夫婦や家族って、自分が作り出していく新しい関係じゃないですか。そのことをいいなと思ってほしい。結婚という、独立して自分が家族を作っていくことは、とても面白いことなので。

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独身の人は結婚したくなり、妻は夫に惚れ直すような本でした。渡辺さん、ありがとうございました!(写真・中島慶子)

今週の推し本

あなたの夫は素晴らしい人だと叫びたくなる
渡辺千穂 著
ページ数:192頁
ISBN:9784838729289
定価:1,404円 (税込)
発売:2017.06.29
ジャンル:エッセイ
[http://magazineworld.jp/books/paper/2928/]

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