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なぜ若手社員は「指示待ち」を“選ぶ”のか?――リクルートワークス研究所主幹研究員×リクナビNEXT編集長対談<後編>

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近年の若いビジネスパーソンが陥りがちな「指示待ち」を“選ぶ”姿勢について語る、豊田義博・リクルートワークス研究所主幹研究員と、藤井薫・リクナビNEXT編集長の対談。挑戦をためらう心理の背後にあるものを語った前編に続き、今回の後編は、そうした心理を抱える人たちが、これから訪れる「100年人生」に適応していくためのヒントをご紹介します。

「個性」を崩すのは、怖いですか?

―今後も平均寿命はますます延伸し、いま会社で若手に属する世代は100歳まで生きるのが当たり前になるとも言われています。人生の時間が増えるほど、周囲で大きな変化が起きる確率は高くなりますね。

豊田 世の中も変わるでしょうが、キャリアを重ねる中で「何者かになろう」と思うのであれば、何者でもなかった自分自身がまず変わる必要がありますよね。ところが、2004年以降に新卒入社した世代は、自分の個性というものを、ある意味で「あらかじめ決められている固定的なもの」としてとらえている。「私はこういうキャラだから」と決めつけてしまう意識が強い気がします。

「ありのままで」ということでしょうか。でもこの言葉にしても「そのままでいい」とは決して言っていませんよね。

藤井 会社との安定した雇用関係や、腹を割って話せる同僚など、信じたり頼ったりできる強いつながりがあった昔と違って、今はとても不安定な時代。周囲が安定しないぶん、自分のほうを安定というか固定させようとするのだと思います。

自分が認識している特徴を崩さず、それをオンリーワンの個性として褒められたいという意識を若い人から感じます。自身を変化にさらさず安定させるという意味では「言われたことしかしない」という指示待ちや、専門を限定するスペシャリスト志向とも通じる心理といえるでしょう。f:id:k_kushida:20170726115306j:plain

豊田 義博(とよだ・よしひろ)<写真左>

リクルートワークス研究所主幹研究員。1983年にリクルート入社後、就職ジャーナル、リクルートブック、Works編集長などを経て、現在は20代の就業実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就活、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わる。『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』(以上ちくま新書)、『「上司」不要論。』(東洋経済新報社)など著書多数。

藤井 薫(ふじい・かおる)<写真右>

「リクナビNEXT」編集長。1988年にリクルート入社後、人材事業の企画とメディアプロデュースに従事し、TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長などを歴任する。2007年からリクルート経営コンピタンス研究所に携わり、14年からリクルートワークス研究所Works兼務。16年4月より現職。

今の自分を変えずに、そのまま100年乗り切るのは難しそうです。

藤井 そもそも「これが自分だ」と意識している自分(自我)は、無意識を含めたその人の全体(自己)からみると、ごく一部にすぎません。しかも、世の中で評価される個性や才能は、周囲とのやりとり(インタラクション)の中で少しずつ発露・開花していくもの。全てが固定的に決まっているわけではありません。人間の体内でインタラクションがうまくいかなくなった細胞は、組織全体とは調和しない方向に増殖暴走します。同様に、他者との交流なしに自分でこうだと決めつけた「狭い自分」は、やはり社会全体の中では機能しない。

豊田 「自分がどうありたいか」という問題と「それが社会に受け入れられるか」という問題はセットで考えなくてはならないのですが、いまの日本は前者に熱心なわりに、後者の機会があまりない。自分のやりたいことを学校で盛んに考えさせる一方、そうした希望を外からの目で評価する仕組みが足りていません。本来は社会的な問題ですが、若いビジネスパーソンには、埋もれている個性まで引き出してくれるような「良き先輩」を身近に、たくさん持ってほしいと思うのです。

幼児のような好奇心を取り戻す

―著書の中で豊田さんは、これまで以上に長い期間、変化の激しい環境で働き続けていくであろう若い世代は「適職」や「天職」を探してはならないと説かれていますね。

豊田 ええ。「今ある職業の中から自分に合ったものを選び出し、その道の専門知識を磨いていく」というキャリア観は、もはや時代遅れです。

今後、歳を重ねても健康に活動できるようになれば、従来よりも長い期間にわたって、何らかの形で働き続けるようになるはず。その間には技術の進化にともなって仕事が消えたり、新たに生まれたりすることも増えていくでしょう。あらかじめ決めてしまうスタイルが時代に合わないというのは、そのためです。

もともと、山頂を目指すように計画的なキャリアを実現している人は多くありません。そのほかの可能性を捨ててしまうというリスクがある上、何といっても面白くないからです。それよりも視野を広げて、偶発的なチャンスを生かしながらキャリアを拓いていくことが重要です。

藤井 多くの起業家に接した経験から思うのは、チャンスは案外身近にあるということ。より身近な日常や無意識の中に立ち上がる「好奇心」に、「狭い自我」を脱するヒントがある気がします。

好奇心が生まれるポイントは人それぞれ。損得感情と違い、なぜ気になるのかさえうまく説明できないものだと思います。10年以上前のことですが、「オタキング」こと岡田斗司夫さんに伺った話です。トリノ五輪の金メダリスト・荒川静香さんのフィギュアスケートを見ている間、なぜかずっと「ユニークな場所」に注目していた人がいると。多くの人は、彼女が「イナバウアー」の技を披露するときの特徴である、大きく反らせた背中に注目している中、あえて「くるぶし」に注目している人がいたのだそうです。つまり、「自分だけの好奇心は?」と自問してもわからないけど、自分の視線を客観視すれば、「自分だけの好奇心」「人とは違う好奇心」は明確にわかると。

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