『ダンケルク』ってこんな話! クリストファー・ノーラン監督が語る戦争映画の新たな描き方

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『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督が手掛ける最新作『ダンケルク』。第二次世界大戦、「ダンケルクの戦い」における通称「ダイナモ作戦」を題材にした今作は、ノーラン監督や戦争映画史において、これまでとは異なる“新鮮さ”が詰まった作品と言えそうだ。

『ダンケルク』は、相手を打ち負かす“戦い”ではなく、生き残りをかけた“撤退”に焦点を当てた物語。陸・海・空から迫りくるドイツ敵軍80万人を相手に、フランスの港町ダンケルクに追いつめられた英仏軍40万人。限られた時間で兵士たちを救い出すため、ドーバー海峡にいる民間船も含めた総勢900隻を総動員した史上最大の撤退作戦が決行される。

この「ダンケルクの戦い」に特別な思いを抱いていたのが、英国出身のノーラン監督だ。

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ノーラン監督:「(ダンケルクにおける撤退作戦は)人類史における偉大な出来事のひとつだと思う。英国人がよく知る物語で、神話やおとぎ話のようにその物語を聞いて大人になる。その神話的な物語の背景にある事実もまた人の心を動かす。敵が迫りくる中、40万の兵士が海を背に浜辺で身動きが取れない。また、降伏であろうと全滅であろうと、時間との戦いがある。どちらにしても、これは人の心を動かす物語だと思った。そこにはとても普遍的で、根本的な要素があり、大スクリーンに映し出す映画製作にとっても理想的な作品だと思ったんだ」

この「時間との戦い」が作品にサバイバルやサスペンスの要素をもたらす。そして物語は、陸・海・空、3人の英国兵の視点が並行して進んでいく。

ノーラン監督:「この映画の構成は、出来事を3つのタイムラインで、それぞれ非常に異なる視点で対比させながら見せている。実際に起こった史実を、私自身でリサーチをしてインスピレーションを得たんだ。当事者たちの個人的な記録を読んで、砂浜にいる者たちが、そこから起きていることを見て感じたこと、一方で、その上空を飛ぶ者たちが見て感じたこと、そして救助のためボートでやってくる者たちが感じたことが、それぞれ非常に違っていることに多大な衝撃を受けたよ」

観客は様々な場面を“神の視点”でのぞくことで戦争を追体験することになる。さらに、ノーラン監督は「当事者の視点」を大事にするため、「よくある戦争映画で使われるテクニック」を排除したと語った。

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ノーラン監督:「よく将官たちが室内で地図を囲んで何が起こっているか話し合いをするシーンがあるが、それでは、兵士が実体験していることは見えてこないんだ。我々が興味を感じたのは、観客に当事者たちがその現場で感じているのと同じ主観的な経験をさせることだった。だから、スピットファイア戦闘機内のパイロットのシーンでは、事実、観客はパイロットが見るもの以外何も見えないんだ。カメラは、大概の場合、コックピット内にボルトで固定されていて動かないようにしてあった。それで観客は、パイロットがみている光景そのものを目にして、彼らが把握していることだけを把握することになる」

『ダンケルク』の上映時間は約110分。2時間超えが当たり前のノーラン監督としては、比較的コンパクトにまとまっている印象だが?

ノーラン監督:「長い映画には、ある種のリズムがある。そのリズムが緊迫を加速させていく。しかし、観客がその継続的に加速する緊迫に耐えられる時間の長さというのは限界がある。とても強烈だから。私は、物語を主に視覚的に語っていきたい。対話で語ろうとすると長くなってしまう。いろんなものをそぎ落として、短く、無駄のない、強烈な経験を観客にしてほしい。なので、台本もかなり短い、私の通常の作品の半分ほどだ」

ノーラン監督にとって初の史実を基にした映画『ダンケルク』は、9月9日(土)より日本公開。

映画『ダンケルク』オフィシャルサイト:
http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

(c)2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

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よしだたつき

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PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

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