読書のきっかけは、好きな人が手渡してくれた一冊の本——アノヒトの読書遍歴:真舘晴子さん(前編)
スリーピースガールズバンド「The Wisely Brothers」でギター&ヴォーカルを務める真舘晴子さん。高校時代の2010年バンドを結成し、2012年に初ライブを開催。2014年には初の全国流通盤となる『ファミリー・ミニアルバム』を発表し、今年3月には『HEMMING EP』をリリース。音楽活動を続ける中で、真舘さんが日常の中で影響を受けているのが「読書」といいます。というわけで今回は、真舘さんに日頃の読書の生活についてお話を伺いました。
——読書をよくされているそうですが、本を読むようになったのはいつ頃からでしょうか?
「高校2年生のときですね。それまではあまり本を読んでいなかったんですけど、好きだった男の子からある日、吉本ばななさんの『キッチン』を貸してもらうことになって。読んでみたら『本当に自分にとって大切なことがあった!』と感じて、本ってすごいなって思ったんです。それからはいろいろな本に手を付けるようになって。村上春樹さんの『羊をめぐる冒険』にはすごく夢中になって歩きながら読んだりもしました(笑)。あとはエッセイも読んだりしますが、村上春樹さんと安西水丸さんの『日の出る国の工場』はすごく可愛らしくて、しかも楽しくて。この本で安西さんも好きになりました」
——本を読み始めるきっかけとなった『キッチン』ですが、どんなところが印象強かったですか?
「私はそもそもすごく食べ物が好きなんですけど(笑)、この本の主人公は食べ物に関する仕事をしていて、その中である感情に気付くんです。例えば、食べ物を見たときや食べたときに『この気持ちを誰と共感したいのか』ってことだったり、『美味しさや嬉しさを誰に伝えたいか』っていう気持ちが大切なんだということだったり。さらに、そういう風に自分が大切に思うものをきっかけとして『行動しなきゃいけない』ってことに気付くんです。それに気付いた主人公が突然タクシーに乗って人に会いに行くんですけど、その彼女が持つ潔さや、”心のスピード感”がギュッと速くなって本当に大切なことに向かっていく、その姿に強く共感して『私もこうでありたい』って思えました」
——こういった「読書」というのが真舘さんの音楽活動に影響を与えることはありますか?
「はい、特に影響を受けるのは歌詞ですかね。私の中で本というのは、かばんの中に入れて持ち歩いたりできる身近に置いておける言葉の作品、みたいなイメージです。私は映画も観るんですけど、本を読んだときと映画を観たときとでは、違う種類の感動をしているような気がしてるんです。文章と出合ったときに、『この白い紙に黒いインクが乗ってるだけ、活字だけなのになんでこんなに感動するんだろう』って、言葉の力の大きさやすごさにびっくりしますね。ただ、最近は日常的に本を読んでいるので、だからこそ『今読んでいる本のような感じにしたいのにうまく曲にならない』っていうもどかしさを感じるときもあります。ほかにも、作者が自分の表現力を強く出しているような本を読むと、私も自分が持った気持ちをもっともっと出して良いんだなって思わせてくれたりします」
——本を持ち歩いたりするということですが、本屋さんにはよく行かれるんですか?
「古本屋さんに行くことが多いですね。古本屋さんではずっと探していた本を見つけに行くこともあるんですけど、ジャンルを問わず偶然に出合う本というのが多くて。例えばタイトルが気になったり名前や表紙が気になったとかで、ちょっと読んでみようと思った本を選んだりもします。これまでに読んでいる本の数はそこまで多くないんですけど、気に入った一冊一冊がそれぞれ違ったジャンルの本だったと思います。そうして出合った作品が自分にものすごく大きな影響を与えることも多いので、最近はそういう出合いを楽しんでいます」
——ありがとうございます。後編では、真舘さんが音楽活動のヒントを得たという本について紹介します。
<プロフィール>
真舘晴子 まだちはるこ/スリーピースガールズバンド「The Wisely Brothers」のメンバー。ギター&ヴォーカルを務める。高校生時代に和久利泉(ベース)、渡辺朱音(ドラムス)とともにバンドを結成。オルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調としたスタイルの彼女たちは、高校卒業後より下北沢を中心に活動。2014年にファーストミニアルバム『ファミリー・ミニアルバム』を、2016年にはセカンドミニアルバム『シーサイド81』をリリース。今年に入ると、1月に7inchアナログ『メイプルカナダ』を、3月に『HEMMING EP』を続けざまに発表。4月からは『HEMMING UP! TOUR』を開催するなど精力的に活動を行い、今後の活躍が期待されるバンドとして多くの注目を集めている。
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