北海道に移住したアウトドア素人が勢いとノリで北海道に山を買った話
東京から北海道に移住して5年がたち、住まいのある岩見沢市街地から車で20分ほどのところの山を買った。山や森、アウトドアにとくに精通しているわけでもなく、林業になじみがあるわけでもなく、ほぼ勢いとノリで買った山。いま1年半が過ぎ、山には思いがけない楽しみがあることをたくさん知った。素人体験談をご紹介!
山はどこで売っているの? 手探りで始まった土地探し
東京で約20年、アートやデザイン関係の書籍や雑誌の編集に携わっていた私が、夫の実家のある北海道岩見沢市へ移住を決めたのは、東日本大震災がきっかけだった。長男はこのときまだ1歳にもなっておらず、田舎でのびのびと子育てをしたいという思いもあって、2011年夏に住まいを移した。
右も左も分からない土地で心細い思いを抱きながら始まった暮らし。月日がたつにつれ、「自分はここで何ができるのか?」と自問自答するようになった。そして、あるとき北海道へ移住を希望する友人たちと、ともに暮らせる場所をつくってみたいというアイデアが浮かんだ。こちらに引越してから、東京の友人が何人も訪ねてきてくれ、「北海道ってサイコー」とリフレッシュして帰る姿をたびたび見た。できれば東京を離れたいと思っている友人も多く、ならばこの地で、長期でも短期でも滞在でき、互いに助け合って自給自足的な暮らしを営む「エコビレッジ」をつくってはどうかと思うようになったのだった。
こうしてエコビレッジをつくろうと思い土地探しを始めたわけだが、不動産物件を見ると、地価は安いとはいえ、広い土地は1,000万円以上となかなか高くて手が出せない。悩んでいたあるとき、「山を買う」という選択肢もあることを友人が教えてくれた。「えっ、私でも買えるの?」と半信半疑でネット検索してみたところ、地域の森林組合で、森林売買のあっせんもしていることが分かった。善は急げということで、調べたその日に思い切って電話を。それがすべての始まりだった。【画像1】山が買えると教えてくれたのは農家の友人・林宏さん。一緒に山が買えたらいいねと意気込み山ポーズ!(写真撮影/來嶋路子)
山って千差万別。素人では現地に踏み込めない!
森林組合に電話をかけると、とてもやさしそうな女性が応対してくれた。そして「一度いらしてみてはいかがですか?」とあっさりアポイントが取れ、一週間後に出向くことに。「エコビレッジのような場所をつくりたい」という私の夢物語を親身に聞きいれてくれ、何枚もの地図を見せてくれた。
いくつかの地図をもらい、組合の人がアクセスしやすいと教えてくれたいくつかの場所に赴いてみたが、驚いたことにほとんど現地にたどり着けなかった。確かに公道に近く、現地の周辺まではたどり着けるが、山はたいてい沢を区切りとして所有者がわかれているので、深い沢があって先に行けなかったり、そそり立つような急斜面で登れなかったり。また、わりと平たんな土地でも、私の背丈を優に超す草が生えていて、容易に前へ進めないなど、さまざまな困難があることを知った。
「これは……、一筋縄ではいかないぞ」。そんなふうに感じていたときに、またもや友人からのアドバイスがあった。山に詳しい達人を、私に紹介してくれたのだった。 【画像2】向かいが売っているという森林だが、手前に深い沢があって入ることができない(写真撮影/來嶋路子)【画像3】グーグルアースで見たところ、アクセスしやすい良さそうな土地と思ったが、行ってみたらかなりの急斜面……(写真撮影/來嶋路子)
友人のツテを頼って山を購入。支払ったのは中古車一台分
友人が紹介してくれたのは、岩見沢に二つの山を持ち、毎日のように山へ通い整備を続けている日端義美さんだ。山の所有者との独自のネットワークももっていて、私に「いい場所あるよ」と、早速、山の地主を紹介してくれた。
この地主が持っていた山は広さが8ha(東京ドームが4.7ha)。木を伐採した後で、笹薮が広がり荒れ地のようだったが、素人にとっては逆にありがたい面も。木を伐採し運び出すためにつくったブルードーザーの道があり、山のスミからスミまで歩けるようになっていた。しかも、一部が公道に面しているため、車ですぐそばまで行けるのだ。山の土地は、細い林道を通らなければならなかったり、ほかの所有者の土地を越えないと行けない場所があったりするので、道路に面しているのは本当にありがたかった。加えて相場よりかなり安い値段で売ってくれるというのだ。
結局私が支払ったのは、中古車一台分くらい。しかも友人と共同購入したために、負担したのは、それほど大きな金額ではなかった。【画像4】農家の林宏さんと共同購入した土地。木がほとんど伐採されていて、ブルードーザーが通った道がある(写真撮影/來嶋路子)
週末は“山活!”。荒れ地じゃなかった
こうして2016年春に山を購入して以来、週末時間があるときは、山を訪ねるようになった。山で遊ぶことを“山活!”と名づけ、友人たちもちょくちょく顔を出してくれている。
木がほとんどなく荒れ地だと思っていたが、よくよく地面を見ると、ナラやシラカバなど、さまざまな幼木が芽を出していることが分かった。また、春にはタラの芽やワラビが、夏には野いちごが採れ、山の恵みが豊富にあった。このほか友人たちと、山にあった木や笹を利用して東屋をつくったり、粘土質の土をこねて陶芸を楽しんだりもした。
エコビレッジをつくれないかと山の土地を探して購入したわけだが、インフラの整備や北海道でも有数の豪雪地帯であるここで冬を過ごせるのかなど、さまざまな課題をクリアしなくてはいけないため、すぐに夢が実現できるわけではない。しかし、ただ山に行くだけでも、四季折々でさまざまな楽しみがあり、何より6歳と3歳になるわが子が山に行くことをとても喜んでくれたのが、うれしかった。 【画像5】山で見つけた野いちご。ジャムにしたら絶品!(撮影/來嶋路子)【画像6】週末山で遊ぶ“山活!”仲間たち(撮影/來嶋路子)
山を買ったことで本業にもよい影響が!
北海道に移住してからも、私は編集者としての仕事を続けている。東京の出版社からの依頼も多いため、月に1回ほど上京して打ち合わせや取材などを行っているのだが、そんなときに山を買ったという話題は、多くの人が興味をもつことに気づいた。とくに、著名な人々へのインタビューは、なかなか名前を覚えてもらえないが、最近は「山を買った人」ということで、記憶にとどめてくれるケースもあり、北海道という遠方で仕事をしていることを好意的にとらえてくれることも増えてきた。
また、自分でも山を買った体験を、多くの人に知ってほしいと思うようになり、この4月には小さな本『山を買う』をつくった。山購入の体験談を絵と文章とで綴ったものだ。Facebookなどで細々と宣伝を続けるうちに、地元の書店さんやカフェが置いてくれたり、全国からも購入希望の連絡が入ったりと、少しずつ広がっている実感がもてるようになった。
現在、山を購入して2年目。今年は山に植林を行う計画があり、これからは「山を買う」から「山を育てる」ことに注目して行きたいと考えている。エコビレッジをこの場所につくれるのかは、まだまだ分からないが、まずは山にできるだけ通って、この土地と向き合うことで、次の展開が開けるのではないかと思っている。【画像7】自分でつくったA6サイズの小さな本『山を買う』。ミチクル編集工房のFacebookで販売中(写真撮影/來嶋路子)
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