“赤い糸”の存在を信じる? アニメ『恋と嘘』逢坂良太&花澤香菜インタビュー
超・少子化対策基本法(ゆかり法)によって満16歳以上の少年少女は自由恋愛が禁止となり、国が決めた相手と結婚しなければならない社会で、初恋の相手・高崎美咲と許嫁の真田莉々奈と間で心が揺れ動くごく普通の少年・根島由佳吏の恋愛を描いたムサヲさん原作の『恋と嘘』。2017年7月からはTOKYO MXなどでアニメの放送もスタートしています。
どこか切なく、緊張感のある恋愛模様が展開される『恋と嘘』ですが、今回由佳吏役の逢坂良太さんと、美咲役の花澤香菜さんのWインタビューを敢行。物語の見どころやそれぞれのキャラクターの魅力について語って頂きました。
--『恋と嘘』は“ゆかり法”という法律によって政府が結婚相手を決めるという世界の物語ですが、まず原作や脚本をお読みになったときのファーストインプレッションからお聞かせいただければと思います。
花澤香菜さん(以下、花澤):この法律は設定として「新しいな」というか、「こういうものを開発したんだ!?」と思って、そこにも惹かれるし、その上で恋愛をするって、これからすごく切ない展開になっていくんだろうなというのは予感しています。あとは高校生ならではというか、初々しさもあるんですけど、思い切りのよさもあって。美咲ちゃんの行動とか台詞とか、いろいろドキドキするんですよね。
逢坂良太さん(以下、逢坂):すごく独特なんだけれども、現実にあってもおかしくないような設定ですね。高校生に既に結婚相手がいて、その中で三角関係になりつつ、どういうふうに立ち回っていくのかというストーリーになっています。女の子が2人いますけど、どっちもいい子なので(笑)。だから先が読めないというか、「本当にどっちを選んでいくんだろう?」というのが、読めば読むほどわからなくなっていく。だから毎晩毎晩、どんどん引き込まれていって、読むのが止まらなくなる作品だなと思いました。
--一話を拝見して、美咲がすごく大胆だと感じました。
花澤:大胆だし、自分の高校時代のまわりの子と照らし合わせても、けっこう大人っぽい。漫画を読んでいても、「ああ、美咲ちゃん、いいね」って思いました。「やるねぇ!」みたいな(笑)。あと、やっぱり自分の気持ちよりも相手のことを思って行動できるっていうのが、「すごいな」って。ずっと「根島君への思いはしまっておこう」って思っていたわけですからね。その決意もなかなかだなと思いますし、とても強い子なんだろうなと思います。
--ネジと美咲だけでなく、ネジの婚約相手の莉々奈やクラスメイトの仁坂もストーリーに絡んでくるあたりもドキドキします。
花澤:その恋愛模様も面白いですし、誰がどんな秘密を隠しているのかなっていうのが、ところどころに見えるけど、答えは見えなくて。だから、どんどん読み進めちゃいました。
--ネジは「どこにでもいそうな、ごく普通の男子高校生」というキャラクターですが、役作りでポイントになったところを逢坂さんに教えていただければと思います。
逢坂:よくあるアニメっぽい芝居は一切できないというか、それをやった途端にNGが出るという感じになっています。だから最初から基本的に個性を殺すというか、オーラを消すというか、「そういう作業から入ってください」「あらゆる意味の普通で演じてください」と言われて。そうしたら大きな表現もできないですし、かといって小さすぎると今度は何を伝えたいのかわからなくなるし。そのあいだを取る作業がすごく大変でした。そこは監督さんと照らし合わせながら、いろいろやらせていただいたんですけれども、いまだにやりすぎてしまうことが多くて。
--普通に「ええーっ!?」という台詞を演じるのは、すごく難しくないですか?
逢坂:そうなんですよ。抑えるっていうことが、こんなに難しいのかと。普段、日常でしゃべっているときなら、人見知りで小声でしゃべったりするので、正直たぶんこのぐらいの声をサラッと出せばいいんですけれども、別人になるということを考えると「ちょっと大げさになってきちゃうのかな」って。それが自分では気づかないんですよ。その調整が難しいキャラクターだなといまだに思っています。
--逢坂さんはこれまでにも、さまざま高校生役をしていらっしゃると思いますが、その中でネジが、これまで演じていらっしゃるキャラと特にここが違うというところはありますか?
逢坂:今までやってきた高校生は、わりと「自称普通」っていうのが多かったんです。自分では「僕はどこにでもいる高校生だ」のようなことを言っているんですけど、人と違うものを持っていたりしていることが多くて。もちろんネジにもそういうところがあるんですけれども、クラスの端っこで友だち何人かとつるんで遊んでいるんだなという感が、ものすごく出ているというか。半分自分の過去を見ているみたいな。自分もそういう立ち位置というか、中心にはいない感じだったので。仁坂っていう、女子にモテモテの子と、ちょっと仲がいいっていうだけのやつと違いはありますけれども。(これまで演じてきた)ほかの高校生はそのときの表情とか驚きとかを、わりと素直に出せるんですけど、ネジはそういうのが出せないので。感情に乏しいわけではないんですけど、やっぱりそこの強弱とか大小の違いなのかなとは思います。
--ネジが独白しているシーンや、コミカルとシリアスがちょっと入れ替わったりするシーンがあります。ストーリーを進めていく上でも、すごく重要だなと感じましたが、そのあたりはいかがでしょうか?
逢坂:コミカルなシーンでも、「ギャグですよ」っていうのを出しちゃダメなので。そういう切り換えどころも、いかに抑えつつ、ちゃんとコミカルに見せられるかっていうのは、いろいろ悩みます。ただ、急に入れ替わるからといって、「こうしなきゃ、ああしなきゃ」というのはあまりないですね。やっぱりストーリーがキレイにできている作品ですので、切り換えはやりやすい。強いて言うなら、モノローグが多い印象なんですけれど、ちょこちょこナレーションも入っていて。モノローグとナレーションの違いを出すのが、けっこう難しいですね。
--モノローグとナレーションは同じようで全く違いますよね。
逢坂:モノローグは現在のネジの気持ちなんですけれど、ナレーションは、「違う時間軸にいる」と言われて。もう解決した後の話なのかどうかまだわからないけれども、ある程度の時間が進んだあとに俯瞰して見ていて、思い出しながら言っているネジという演技でやらせていただいています。一応、自分の中で「なんとなく、このへんだろうな」というふうには思ってやっているんですけれども。
--花澤さんは、美咲を演じる上でポイントになっているのはどういったところになりますか?
花澤:逢坂君と同じで、どこにでもいそうな高校生というのがベースにあって。でも美咲ちゃんは『恋と嘘』の嘘の部分を担っていると思う女の子。なんか含みがあるんですよね。そこは押さえつつ、大人っぽくなりすぎないように、というのは思いますね。中身は本当に、ただ恋愛しているだけなので、いろんなものを背負いすぎないようにやってはいますね。そこのバランスが難しいなと思います。
--自分から「キスしよう」と言っちゃうシーンとか、見ていてドキドキしたのですけれど、大人びているところもあるんだけれども、ちゃんと「高校生している」と感じられるキャラクターですよね。
花澤:あんまり自分の気持ちを素直に出すような感じの子じゃなくて。それより周囲を見て、「皆はどう思っているかな」っていうところに気を向けているというか、あんまり自分のことを話さない。友達と一緒にいても、(クラスメイトは)「なんか美咲のこと、よくわかんないんだよね。でも一緒にいて、すごく居心地がいい」みたいな。だからすごく聞き上手な女の子なのかなと思っていて。その上で、根島君をずっと見てたのに話せなくて。でも、それがもう本当に久々にコミュニケーションが取れるようになって。その時に話している時は、本当にドキドキしてると思うんですよね。そういうのも垣間見せつつ、でもネジ君に違和感を与えてはいけないし、というところがすごく微妙だなと思いながら、気をつけてやっています。
--特に美咲は、自分で自分の話をあまりしないところがあると思うんですよね。2話でネジがお見合いがあるのに学校へ来ちゃったときに、「すごい迷惑!」と言っちゃうシーンなんかでも、本当の自分の気持ちなのかわからないような印象がありました。
花澤:わざと冷たくしているっていうのは、上手すぎてもいけないし、ネジから見てミステリアスに見えるような感じにならなければいけないなというのはありますね。それよりも仁坂君とのやり取りのほうがポイントかなとも思います。「仁坂君と何かあるんだろう」っていうのは絶対わかるじゃないですか。で、仁坂君も(何か)あるから、ああいう思わせぶりな接し方をするわけで。2人が何かを抱えているという空間は、ほかとは全然違う感じにしたいなとも思っています。
--もうひとりのヒロインの莉々奈というキャラクターは、花澤さんの目から見てどういう女の子ですか?
花澤:賢いんだけれど、計算をしなくて、真っ直ぐで、子どものような心を持ちながら、なんだか天才小学生みたいな感じ(笑)。端から見ると、すごく抜けてたりするんですけど、やっていることは全然間違っていなくて。邪念もなくて、本当に見守りたいというか、たぶん男の子だったら、ちょっと放っておけないような女の子なんだろうなということは思いますね。それで、一緒にいてハッとさせられることもたくさんありそうな感じがします。自分の心が曲がっているときも、ちゃんとそれをストレートに言ってくれそう。一緒に正しい道に進めそうな、ステキな女の子だなと思います。
-- この“ゆかり法”という法律が「赤い糸」という呼ばれ方をしていますが、おふたりは「運命の相手」というものを信じていらっしゃいますか?
逢坂:ないんじゃないですかね(笑)。
--ないですか(笑)。
逢坂:よっぽどのこと、それこそ“ゆかり法”みたいなものが施行されない限りは、感じることはまずないと思いますけどね。たまに公園で2人で座って、仲よくしゃべってるおじいちゃんとおばあちゃんを見ると、たぶんそういうやつだったんだろうなと思いますけど。ただ、すごく仲が悪かったけど、子どもが生まれた途端に、すごく仲よくなるみたいなこともあるじゃないですか。そういうのを考えると、運命の赤い糸とは違うのかなと思います。だから難しいですよね。お互いが一目惚れした場合のみじゃないですかね。それならば「ある」って言えるんでしょうけど。
--すごく限られますね。
逢坂:相当な確率ですよね。お互いがバッタリ会って「あっ、この人、好きだわ」っていうのは。一言も交わさずに「この人、絶対好き」ってなった場合が、たぶん赤い糸があるときなんじゃないかな。
花澤:結果、「運命だったかな」って思えればいいなと感じますけどね。最初から「これ、運命かも……」って思うことって、なかなかないし。お仕事だと「あの作品があったからこそ、ここにつながるのか」とか、ご縁がどんどんつながっているわけじゃないですか。そういうことは「ああ、それってすごい運命だな」って思うことはありますけど。かといって、その後は努力次第で、どうにでもなりそうな気がしますね。私は、あんまり信じてない派ですね(笑)。
逢坂:まあ、そうでしょうね。
--信じていない派で一致しましたね。アフレコの現場の雰囲気はいかがですか?
花澤:学校のシーンとかだと、人がすごく多くなったりするんですけど、普段は少人数の決まったメンバーでいて。わりといろんな現場でお会いしている方たちばっかりなので、すごく居心地のいい空間ではありますね。これといって「何かしゃべらなきゃ」みたいなのもないし、「緊張感を出さなきゃ」っていうのもないし、それぞれがお仕事に集中しているような感じですね。でも休憩時間とかは、仁坂役の立花(慎之介)さんが、いろんなおいしいものにすごく詳しくて、それを伝授してもらっています。
逢坂:雰囲気は本当に花澤さんが言ったとおりなので、毎週話題に事欠かないですよね。何かを探るとかじゃなくて、誰かがふと発した言葉から、どんどん派生していくというか。ライブの話からダンスの話になって、「ダンス、踊れない」という話題から、「じゃあ、何ができるんですか?」という話題になって、「スポーツは、わりとちょこちょこやるよ」って言ったら、「じゃあ、何をやるんですか?」みたいな話になって、それでボウリングの話になって。で、ボウリングはどういうふうに投げるのか、フォームから、あのボールをドンッていう、「ロフトボールを投げる人をどう思いますか?」って聞かれて、「アホだと思う」っていう感じで話していて(笑)。本当にどんどん違う話になっていく。考えて出してるのではなくて、スッと出てくるような感じがあるので、「すごく話しやすいな」って。それは、あらゆる人に対して思うので、「すごくいい現場だな」って毎回感じますね。
--和やかな現場なのですね。それでは、最後に『恋と嘘』という作品の「ここを見てほしい」というところを教えていただければと思います。
花澤:原作を読んでいて、「こんな台詞、言ったことない」とか、「ああ、このシーン、ドキドキする!」とか。いろいろな人の抱えている秘密だとか、どういうふうにお話が進んでいくかとか、そういうのも気になるんですけど、やっぱり恋愛模様ですね。切ない中での、ドキドキする恋愛模様が魅力なんじゃないかなと思います。ささやき声とかも結構入っているので、大人数で見るよりはひとりでヘッドフォンをかけて、じっくりニヤニヤしながら見てもらえたらいいなと思います。
逢坂:やり切ったあとに、変に恥ずかしくなるシーンが多くて。あんまり経験したことのないことで。絶対に人に見せたくないような、ふたりっきりの雰囲気っていうのがあるじゃないですか。よく新宿や渋谷を歩いているアベックとは違う雰囲気の(笑)。純粋で、お互いが思いやっていて。すごく穏やかな時の中で語られていくみたいな感じがあったりしますね。特に1話とか、マジで恥ずかしくて、後ろを振り返れないぐらいだったんですけど、本当にそういうドキドキ感を毎話味わえる作品だなと思っています。そういう経験をした方も、もちろんたくさんいらっしゃると思いますし、そういう方は過去の思い出とか、あるいは今現在している方は、違うことを感じるのかなっていうふうに思います。僕みたいに、そういうのを味わったことがない方は、今味わっているみたいな感じなんですけど(笑)。だから、そういうふうに、いろんな楽しみ方ができる作品だなということはすごく感じます。それこそ花澤さんもすごく楽しんでいらっしゃいますし、俺もすごく楽しんでいるので、たぶん本当に性別や年代も越えて楽しめる作品になっているんじゃないかなと思います。恥ずかしいだろうけど、家族で見てもいいんじゃないかなというふうには思います(笑)。
花澤:ええーっ、どうするの!? キスシーンとか、イヤだなぁ。
逢坂:確かにそれは恥ずかしい(笑)。昔、家族で映画を見てて、ちょっとエッチなシーンがあったときみたいに、雰囲気が「スーッ」となるかもしれない(笑)。
花澤:「ねえ、何か食べる?」みたいな(笑)。
逢坂:そうそう(笑)。ご飯の時にやられると、あれ、一番つらいんだよね。ただ、あのときの気持ちを取り戻せるんじゃないかなって思いますので、ぜひいろんな楽しみ方をしていただければと思います。
--これからもドキドキしながら見ていきたいと思います。ありがとうございました!
TVアニメ『恋と嘘』公式サイト
http://koiuso-anime.com/ [リンク]
『恋と嘘』(マンガボックス)
https://www.mangabox.me/page/campaign/koitouso_anime/ [リンク]
(c)ムサヲ・講談社/政府通知普及委員会
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
ウェブサイト: https://note.com/parsleymood
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