AKB総選挙での結婚発表。法的には問題あるのか?
AKBの総選挙で衝撃的な結婚発表
もはや毎年の恒例行事となっているAKBグループの総選挙。
第9回目を迎えた今年の6月17日に衝撃的な出来事があり、話題を集めています。
それは、20位にランクインしたNMB48に所属する須藤凜々花さん(20歳)がスピーチの場面で堂々の結婚宣言をしたというのです。
よく知られているように、この選挙の投票を行うためにはCDを購入する必要があり、また、当グループの不文律である「恋愛禁止」に違反した行為であるということで、ファンの間では「詐欺じゃないの?」という批判もあるようです。
須藤さんの行動が、詐欺に当たるのか。また、何か法律上問題があるのかについて解説したいと思います。
法律上問題があるのか?
法律上、「詐欺」というのは、①騙す意思をもって(故意)、②騙す行為をすること(欺罔行為)、③騙す行為に影響されて騙された人が意思表示を行うこと(因果関係)、という3つの要件が必要です。
ちなみに、「騙す意思」とは、騙して勘違い(錯誤)させてやろうという意思と、さらにその結果意思表示させてやろうという意思が必要とされています。
「騙す行為」とは、積極的に何か行動を起こすという意味のほかに、「伝えるべきこと(告知義務があること)をあえて伝えないこと(不作為)」も含むとされています。
そうだとすれば、「CDを販売する前に結婚することを伝えるべきだ!」と思われるかもしれません。
今回のケースで、騙されたという人(ファン)が行った法的な意思表示(行動)は、「CDを購入してしまったこと」です。
「CDを購入した特典として選挙に投票した」ことは、それが購入の目的となっているという意味では重要ですが、法律的な行為とはいえません。
そして、CDを直接顧客に売っているのは販売店であり、須藤さん自身ではありません。
もちろん、CDの販売店が今回の須藤さんの結婚予定を知っており、あえて黙っているということであれば同罪かもしれませんが、それはおそらく有り得ない話でしょう。
もっとも、仮にそうであっても、もっと根本的なことですが、須藤さんはCDの販売時点で結婚することが決まっていたのかどうか、というところも不明です。
それが無ければ、そもそも須藤さんにファンの方を騙す意思は無かったといえます(①)。さらにもっと根本的なことですが、仮に須藤さんがCDの販売時において結婚の意思を固めていたとして、それを公表しなければいけない法的な義務(告知義務)があるか、という点も疑問です。
前代未聞のケースですので、先例があるわけではありませんが、いくらアイドルとはいえ、結婚するかどうかについて法的な告知義務があるとはいえないと思います(②)。
もちろん、須藤さんが今回の騒動をきっかけに番組出演が無くなったり、CM契約などを打ち切られたりした場合に、所属事務所等から損害賠償を求められるといったことはあり得ます。
しかし、ファンに対する詐欺というものが法律上成立するとはいえないというのが僕の見解です。
結婚宣言は本当に本人の意思だけで行われたのか?
推測ですが、結婚相手との熱愛写真が週刊誌に撮られたことで、それが公になる前に注目される場で先手を打って結婚宣言することで、逆にグループやそのイベントに対する世間の注目を集めるというどんでん返し的な展開を主催者側は考えたのかもしれません。
そう考えると、須藤さん一人で起こした行動とは思えませんし、周りの大人の誰かがGOサインを出した結果が今回の騒動になったとみるのが自然でしょう。
AKBの総選挙も、毎年少しずつ話題性が薄れてきた感があったので、ある意味、その戦略はハマったといえますね。
筆者も密かにりりぽん(須藤さんの通称)のことが好きでしたので、今回の結婚発表は残念極まりありません。
ファンの気持ちを考えたら、何もあの場で発表しなくても、とは思います。
でもなぜだろう。
りりぽん、とにかく幸せになってくれ!今はそういう思いしかありません。
彼女は彼女で、今回の件できっと大変な思いをするでしょうから。
(河野 晃/弁護士)
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