ただの油揚げと侮るなかれ! 福井県の「主役級」谷口屋の「おあげ」を食べてみた

access_time create folderグルメ
f:id:naruse_e:20170531173514j:plain

以前、こんな記事を書いたのですが、福井県のポテンシャルはまだまだこんなもんじゃない! と、声を大にして申し上げたいのです。

www.hotpepper.jp

で、何を紹介したいのかというと、油揚げです!

(油揚げ……?)(え、なんかインパクト弱くない?)(油揚げって、きつねしか思い浮かばない……)

ちょっと! そこのメシ通読者さん、心の声がダダ漏れてますよ!!

私もかつてはそうでした。油揚げって、お味噌汁に入っていたり、いなり寿司になっていたり、はたまた厚揚げならおでんに入っていたり……といろんな料理に使われているけど、決して「メイン」ではないな、と。

何ならちょっと節約したい時に厚揚げをステーキにして、もさもさと食べてみることはあっても、そんなに心を満たされるような食べ物ではありませんでしたよ。

でもね、

谷口屋の「おあげ」に出合って、私は自分の油揚げ観を改めたのです!

もともと福井は油揚げをよく食べる地域で、総務省の家計調査でも福井市は「一番油揚げをよく食べる都市」としてぶっちぎり1位なんですよ。その理由には諸説あるのですが、お寺の精進料理として食べられてきたものが、家庭にも伝わった……とも言われています。

で、そのダントツでよく油揚げを食べている福井県民全員がそのおいしさを認めている、と言っても過言ではないのが、谷口屋の「おあげ」なんです。

f:id:naruse_e:20170531173426j:plain

お店は人里離れた山あいにあります。

ここに、「おあげ」を求めてめちゃくちゃたくさんお客さんが集まるそうです。多い時で1日約1300名も!

前もって言っておきますけど、周りには東尋坊も恐竜博物館もありませんからね!

当然、私も福井に住んでいるときに足を運んで、1時間待って竹田の油あげ御膳(定食)を食べたんですけど……。

あぁーー。

あんなにジューシーでふかふかふんわりの油揚げ、生涯で食べたことない。何もつけなくてもいいとさえ思いましたもん。大豆の甘みとうま味だけで十分。で、思い出したらやっぱりまた食べたくなるじゃないですか! と思ったら、お取り寄せできるんですって!

というわけで、届くのを待ちながら、常務取締役の谷口弘晃さんに電話でお話をうかがいました!

f:id:naruse_e:20170531173448j:plain

——谷口屋さんは創業何年ですか? いつから「おあげ」を作っているんですか?

谷口:大正14(1925)年ですね。僕のひいおじいちゃんが創業したので。創業当初から「おあげ」はあったんですけど、大きさはだいぶ小さくて、今の1/2くらいかな。

それを今から20年くらい前に、社長が……僕の父なんですけど、今の大きさに変えたんです。大きいほうが見栄えもいいし、お客さまに喜んでもらえたらいいね、って。でも、これだけ大きいと、揚げるのも難しいんですよ

f:id:naruse_e:20170531173514j:plain

谷口:泡が出るか出ないかくらいの低い温度から揚げはじめて、火を入れたり消したり調節して、様子を見ながら揚げるんです。

温度計を見ながら、トングで触った感触や見た目、色味……一人ひとり違う顔なんですよ。それをじっくり育てていくような感覚で、たまにどうも機嫌の悪いやつとか、ぷーっと膨れるじゃじゃ馬もいるんですけど、満遍なく火が入るようにひっくり返したり油をかけたりして。

最低限のマニュアルはあるけれど、日にちや気候、大豆の種類によっても様子は変わってくるから、少しも気が抜けないんです。でも、楽しいですよ。

——あのおいしさには手間がかかってると思ってましたが、やはり……。それと、揚げる前の豆腐もおいしいのかな、と思っているのですが。

谷口:そうなんです! 僕、もともと豆腐が苦手だったんですよ。でもうちの豆腐はおいしく食べられます!

うちには大豆の浸水を超短縮できる、日本で数えるほどしか導入されていない機械があるんです。本来、夏場だと14時間くらい豆を水に浸けないといけないんですが、浸ければ浸けるほど豆の甘みが水に溶けて逃げていくんですよね。それに皮の部分にもエグミが残る。

しかし、うちの機械を使うと一気に豆を粉砕して水に浸けるので、ほんの数分で浸水できるんです。大豆の甘みとうま味がそのまま残った、おいしい豆腐になるんですよ。

——そんなのおいしいに決まってるじゃないですか! それを丸ごと油揚げに……!

谷口:もちろん、油もめちゃくちゃいいものを使ってますからね。なので、油抜きしないで、そのまま食べてみてください! まずはシンプルに焼いて、ステーキに。塩で食べてもおいしいですよ。それと、炊き込みご飯とお味噌汁もオススメです!

お待たせしました! 「おあげ」実食!

f:id:naruse_e:20170531173538j:plain

というわけで、届きました! 谷口屋の「おあげ」が! 今回は一番ベーシックな「おあげ」(499円)にしました。各辺約14cm、厚みは約4cmというおあげ。普通のものと比べるとかなり厚みがありますよね。

焼き方はパッケージに書いてあるのを参考に、50秒ほど600Wの電子レンジでにかけた後、油をひかずにそのまま両面をフライパンで焼きます。カリッときつね色になったらOKです。

はいっ! このたっぷりと水分をたたえたタプタプの「おあげ」……!

f:id:naruse_e:20170531173555j:plain

肉汁……じゃなかった。なんと表現すればよいのやら。完全にスポンジ状になるまで揚げられているのに、かたくなったりスカスカになったりせず、パリッとした外側の中にはムッチリとした弾力を備えています。

(モグモグ)口に広がる大豆の甘みと香ばしさ……! おろし醤油とは鉄板の組み合わせです!

f:id:naruse_e:20170531173847j:plain

でもって、シンプルに塩だけでもうまいんだ! 菜種油とごま油の香りが一段と引き立って。口当たりもサラリとしていて、油特有のくどさはまったくありません。これが「いい油使ってる」ってやつか……。

f:id:naruse_e:20170531173904j:plain

そして谷口さんにすすめてもらった、おあげ入り炊き込みご飯とお味噌汁も作ってみました。

具材にはえのき茸とにんじんは入れましたが、いつもみたいに鶏肉は入れていません。なのでめちゃくちゃシンプルなはずなんですけど……なんだこれ。「おあげ」がだしのうま味をまるっと吸い込んで、豆の甘みが広がり、油のまろやかさと香ばしさがご飯の味に奥行きを出していて、「特別な具材を使った」みたいになってる!

お味噌汁もびっくりするくらいコクとまろみが出ていて……ちょっと自分が料理上手になった気がします(錯覚)。

というわけで今日は完全なるおあげ定食。肉抜き魚抜きだったのですが、すっかり満足してしまいました。取材最後に、「世界に『TOFU(トーフ)』だけでなく『AGE(アゲ)』という食文化を広めたい」と話していた谷口さん。私もその心意気、陰ながら応援しています! ごちそうさまでした!

お店情報

谷口屋

住所:福井県坂井市丸岡町上竹田37-26-1

電話番号:0776-67-2202

営業時間:9:00~17:30(レストラン10:30~15:00)(※冬期[1月・2月]直営店9:00~17:00、レストラン11:00~15:00)

定休日:火曜日、不定休

ウェブサイト:谷口屋

www.hotpepper.jp

※この記事は2017年5月の情報です。

※金額はすべて消費税込です。

書いた人:大矢幸世

大矢幸世

転勤族の父親と夫を持ったがために、愛媛、群馬、東京、京都、福岡、鹿児島、福井を渡り歩いた流浪系ライター。現在地は東京。地元はしいて言えば福岡。立命館大学卒業後、百貨店勤務、フリーペーパーの編集を経てフリーランスに。月刊誌や広報誌、WEBなど各媒体で執筆中。著書に『鹿児島カフェ散歩』(書肆侃侃房)。 Twitter:@saci_happiness

過去記事も読む

関連記事リンク(外部サイト)

ウニを使った福井県の発酵調味料「雲丹醤」がうますぎて道産子もハマった!
この食感は革命的……福井の知られざるお菓子「羽二重シュー」を取り寄せたらほっぺたが落ちた
お惣菜もイートインも……常識を覆すコンビニ「オレボ」がすごすぎる【福井】

  1. HOME
  2. グルメ
  3. ただの油揚げと侮るなかれ! 福井県の「主役級」谷口屋の「おあげ」を食べてみた
access_time create folderグルメ
local_offer

メシ通

食を楽しみたいあなたのスキマ時間を、笑顔と感動と知って得する情報で満たす「グルメ情報マガジン」です。平日は休まず更新中。

ウェブサイト: http://www.hotpepper.jp/mesitsu/

TwitterID: mesitsu

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。