夫婦で営む田中酒造がつくる愛の日本酒「君萬代」の物語。製造工程も全公開!

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彼氏彼女、ご主人や奥様にプレゼントするとき、何を選びますか?

アクセサリー、旅行、食事など、多くの選択肢がありますが、要は愛が込められていることが大切ですよね。私、ライターの毎川直也は、とある日本酒をオススメしたいと思います。理由はその日本酒を造っている酒蔵を見てもらえればわかるはずです。

夫婦2人で営む酒造の日本酒「君萬代」

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茨城県取手市にやってきました。ここは取手駅から徒歩7~8分、レトロなたたずまいの田中酒造。

レトロもレトロ、創業はなんと1655年。取手市は造り酒屋が多かったそうですが、そのなかで唯一残った老舗なのです。

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田中酒造で造っている銘柄は「君萬代」。すなわち「君と萬年」、「きみとずっと一緒」。名前からして愛の酒です。

ただ、実際の意味は「君(日本国)が萬年続くように。その国とともに萬年続けるように」なのだとか。名前の由来は、明治天皇がこの地域に行幸(ぎょうこう)した際、田中酒造の井戸水を献上した功によって下賜(かし)されたものなんです。

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田中酒造を切り盛りしているのは小川さんご夫妻。奥様であるせいこさんは田中酒造の15代目、経理や営業を主に担当。ご主人の貴由さんは酒造り全体を担当しています。ちなみに出会いは同じ大学の同じゼミで、同じ半導体をテーマにした卒論を執筆したことだそう。

「君萬代」を造る田中酒造、その工程を見せてもらいましょう。

手作りにこだわった酒造り、すべて公開!

f:id:Meshi2_Writer:20170521180614j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plainまずは洗ったお米を甑(こしき)に入れて蒸していきます。直接お米に蒸気をあてると米がベチャッとしてしまうので、甑の底には「疑似米」が敷き詰めてあります。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plain

次の行程に移る前にお米を冷ますため、スコップでお米を掘り返します。その作業が大変で……なんせ600kgくらい米を蒸しますから、ここだけはアルバイトさんに「明日、絶対よろしくね!!!」って念押しますね。

f:id:Meshi2_Writer:20170521180940j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plain次の行程は「もろみ」。冷ましたお米に水、麹、酵母をあわせて発酵させていきます。麹菌が生み出した酵素が、お米に含まれるデンプンを糖に変え、その糖をエサに酵母がアルコールをつくります。蒸したお米を冷ましたのは、熱いと麹菌が活動停止してしまうからですね。 f:id:Meshi2_Writer:20170522161133j:plainなんか水面がポコポコしていますね。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plainこれは酵母の働きで糖が二酸化炭素とアルコール、そして熱に分解されているからです。この熱が日本酒造りの難しいところで、温度が高いと発酵スピードは速いんですが、低温でゆっくり発酵させたほうがいいアルコールが仕上がるんですよ。現在は11度前後を維持しています。 f:id:Meshi2_Writer:20170522161416j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plain

しかもずっと一定温度がいいわけではなくて、発酵の状態に応じて微調整が必要なんですよ。温度管理は酒造りで一番難しいところです。

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俺、普段シャキッと起きられないタイプなんだけど、今朝停電があったときは飛び起きたよね(笑)。 発酵で出る熱はタンク内に冷水を循環させて冷ましていて、その水はポンプで送っているから電気が止まると動かなくて。

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機械に任せて簡単にできるものではないんですね……。

f:id:Meshi2_Writer:20170522161448j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plainさきほどのもろみで使った麹はこの部屋でつくっています。育ちやすい環境を維持するため、温度は30度前後を維持しています。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plain

納豆を食べてここに入ると、麹菌と一緒に納豆菌が育つ可能性もあります。私たち茨城県民ですから、麹菌を育てている期間は納豆が食べられなくてちょっと寂しかったり(笑)。

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見てくださいこの壁の厚さ! これなら真冬であっても外気の影響をもろに受けることはなさそう。

そして壁面に張り巡らされている紐。これは電熱線です。発熱させて部屋の温度を調整します。

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発酵が進んだもろみは酒袋という袋に詰めて、槽(ふね)という入れ物に入れます。そこに機械で圧力をかけて水分を絞り出します。いまは絞り終わりですね。

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槽に酒袋を入れるのも、重しの木を乗せるのも、腰にくるんですよ……先ほどのもろみのタンクからは200袋くらいはとれますから。

f:id:Meshi2_Writer:20170522161133j:plain酒造りは米との対話だけではなく、腰との対話も重要ですね……。 f:id:Meshi2_Writer:20170522161621j:plain槽から絞り出されたお酒がこちら。緑がかっており、底が見えません。

でも日本酒の甘いにおいがすごい!

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酒袋の網目を通過した澱(おり)で不透明に見えています。このまま一日置いて沈殿させ、上澄みを取っていきます。

濁っている状態でも荒々しい味わいがあっておいしいですよ。上澄みだけを取るとこう……精練された味わいに変わっていきます。

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上澄みだけを別のタンクに移すと、きれいな透明になりました。最初は米だったのに、跡形も無くなった……!

f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plainこの状態まで来たら、あとは瓶詰めして販売です。酒造りは秋頃から5月頃までおこなっており、この工程を15回ほど繰り返します。

取り除いた澱は魚や漬物を漬けるとおいしいです。日本酒は本当に無駄にする部分がなく、エコなんですよ。

地元へ、お酒へ、お客さんへ。酒造に込めた思い

みなさん気になっていますよね、なぜ夫婦で酒造を続けているのか。

うかがってみるとそこにも多くの愛がありました。

ーーーなぜこの酒造を続けようと決意したんですか?

f:id:Meshi2_Writer:20170522161736j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plainもともと酒造の手伝いはしていましたが、結婚してからは専業主婦をしていて、継ぐ継がないと考えることはあまりなかったです。そんななかで父が亡くなって、酒造をどうするか、家族で話すようになりました。その話のなかで、私たち夫婦が酒造を引き継いでやっていこうということになって。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plain俺はそのときエンジニアとして働いていて、イタリアの工場に異動するような気運があったんだ。会社勤めをしながら「俺がいなくても会社はまわるな」って思いはあったし、いい機会だと思って酒造の道へ入りました。よっしゃあ、絶対やってやるぞ! っていう感じではなかったかな。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plainそうね、俺についてこい! って感じではなかったかもね(笑)。

5年10年の歴史であれば1人で作れるものかもしれません。ただ田中酒造が取手という場所で積み上げてきた360年という歴史は、ここで途切れさせるわけにはいかない、そういう思いがありました。

ーーーどのように酒造りのテクニックを習得したんですか?

f:id:Meshi2_Writer:20170522161824j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plain酒類総合研究所っていう、酒造りを勉強できるところがあるんですよ。2人で1カ月半通って座学、実習をやりましたね。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plain昔からうちは杜氏(とうじ)さんにお願いして酒造りをしてもらっていました。ただ杜氏さんもどんどん人数が減っていて、自分たちだけで続けられるシステムをつくらなければと思い、いまは2人で切り盛りしています。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plain杜氏さんからも教えてもらったことはもちろんありますよ。でも100人いれば100人違うやり方で酒造りをしているよね。事業を拡大して人を雇うときに、誰でも酒造りができる必要があるので、基本に沿った、誰でもできるやり方を重視しています。

ーーー1番のこだわりは何ですか?

f:id:Meshi2_Writer:20170522161911j:plain f:id:Meshi2_Writer:20170521180700j:plain取手という場所で作り続けることですね。ここで紡いできた歴史ですから、よそに移ってまでやりたいとは思っていません。地域の造り酒屋として、この街に在り続けたいです。そのためにも酒造りをしていない時期に蔵を開放したり、屋根裏をギャラリーにしたり、地域に開かれた酒蔵であることを意識しています。 f:id:Meshi2_Writer:20170521180641j:plainあとは見てもらった通り、完全手作業っていうところはこだわってやっています。出来は味に反映されるので、苦労がある分、出来上がったお酒を「おいしい」と飲んでもらえるとうれしいよ。

話をうかがったうえで、君萬代の意味である「君(日本国)が萬年続くように。その国とともに(酒造りを)萬年続けるように」という言葉とお二人を照らし合わせると、「君萬代」の精神は小川さんご夫妻の心そのものでした。360年酒造りを続けてきた地元、取手への愛を強く持っているのです。

梅酒、甘酒もうまい! 「君萬代」は取手の味

「君萬代」が愛の酒。製造工程を見て、小川さん夫妻の話を聞いて感じていただけたと思います。

では出来上がった「君萬代」の味はどうでしょうか。飲んでみました!

f:id:Meshi2_Writer:20170522161945j:plainふっと軽い辛味、上品な甘みが共存し、とても繊細な味わいの大吟醸酒(写真左)。これは……割烹や料亭に出てくる細やかな味わいを楽しむ料理と合わせるべき日本酒!

写真右の普通酒は大吟醸より辛味が前面に出て、塩辛い味に合わせるのがいいですね。普通酒全般の特徴は、地元の米を使っているということ。つまり、最も地元の味が出る日本酒です。

田中酒造の井戸水は角のない、少し硬さのある口当たり。どちらの酒からその味わいを感じました。

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こちらは「君萬代」でつくった梅酒。とっても甘く、日本酒独特の飲みづらさがありません。ロックでチビチビいくもよし、割ってグイグイいくもよし。お酒そのものを楽しみたいときはこちらを選ぶとよいでしょう。日本酒が苦手な方、女性に贈るにも最適です。

f:id:Meshi2_Writer:20170522162020j:plainそもそもお酒がダメという方にはアルコールゼロの甘酒もあります。

せいこさんオススメの牛乳割りで飲んでみると、うおお! まるでバニラアイスを飲んでいるような甘さ! 甘酒といえば「飲む点滴」と称される栄養価の高さ。牛乳割で砂糖不使用のグラノーラにかけて食べたら、朝から最高のスタートが切れそうだ!

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「このお酒は『君萬代』って言って、夫婦で切り盛りしてる酒造でつくってるんだよ。」

そのように「君萬代」の紹介をしたうえで酒盛りを始めれば、自然と夫婦の会話になっていく! しかもお酒が入って本音が出る。それは夫婦の「いい未来をつくる」贈り物と言えませんか?

ネットでお取り寄せも可能です。大切な人の記念日に、田中酒造のエピソードとともに、「君萬代」をプレゼントしてみてはいかがでしょうか。

お店情報

田中酒造店

住所:茨城県取手市取手2-13-35

電話番号:0297-72-0011

営業時間:9:00-17:30

定休日:月曜日・祝日

ウェブサイト:http://www.kimibandai.sake-ten.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/kimibandai/

※この記事は2017年3月の情報です。

※金額はすべて税込みです。

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。 ブログ:銭湯、温泉探求録

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