LEDってなんでこんなに普及してる? 白熱灯と比べてどんなところがいいの?

LEDってなんでこんなに普及してる? 白熱灯と比べてどんなところがいいの?

ろうそく、白熱電球、蛍光灯に続く“第4の明かり”として登場し、2010年代に入って急激に普及したLED。わが家でも、長持ちすることからかなりの割合でLED電球に替わっている。なぜこんなに急に普及したのか。節電や長寿命以外の”長所“も含めて、LED照明において国内シェアNo.1のパナソニックエコソリューションズ社ライティング事業部の崎山昌治さんと森やよいさんに聞いた。

国が推し進めたLED普及にメーカーが追随した

「LED(light emitting diode)」は日本語で「発光ダイオード」。1993年、日亜化学工業の研究員だった中村修二氏によって開発された高輝度青色LEDの量産技術をきっかけに開発が加速化。2000年代終わりごろからLED電球やLEDを使った照明器具が製品化、量産され始めると、家庭や商業施設などで使われるように。

パナソニックエコソリューションズ社でも、2009年からLED電球の販売を開始。以後、照明製品におけるLEDの割合はみるみる増加し、ついに2015年からは、カタログに載っているすべての照明製品がLEDとなったという。住宅の照明に限定すると、現在、生産している製品のほぼ100%がLEDとなり、蛍光灯はごくわずかだそうだ。

「消費電力が少なく、寿命が長いというLEDの利点に、国(経済産業省)が目をつけ、強力に普及を促しました。その動きにメーカーが驚くほど迅速に対応して生産量が増えたことが、急速に普及した背景といえます」(崎山さん)

2010年に閣議決定された「新成長戦略」では、LED照明のほか、有機EL照明(熱をほとんど出さずに、電気を光に変える現象を利用した照明)などの高効率次世代照明を、2020年までにフロー(出荷台数)で100%、2030年までにストック(市場規模での在庫)で100%普及させる目標が掲げられ、LEDの普及は国を挙げての急務になっている。2013年にはLED器具の出荷台数が蛍光灯器具のそれを上回ったことからも、国の意気込みと普及の勢いが伝わってくる。【画像1】写真左:ライティング事業部住宅商品部東部インテリアライティングセンター課長で照明士でもある崎山昌治さん(右)と、同主務の森やよいさん(左)写真右:同社、住宅照明の最新カタログ。LED電球のみのカタログもある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】写真左:ライティング事業部住宅商品部東部インテリアライティングセンター課長で照明士でもある崎山昌治さん(右)と、同主務の森やよいさん(左)写真右:同社、住宅照明の最新カタログ。LED電球のみのカタログもある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

LEDの利点は「節電」と「長寿命」

国が“目を付けた”のは、LEDの2つの利点、「節電」と「長寿命」だ。

まず、「節電」という点では、年間2000時間点灯したという設定で白熱灯とLEDの消費電力と電気代を試算して比べた場合、白熱灯の年間の電気代が約2480円なのに対し、LEDは約310円。つまり、約8分の1に抑えられることになる(パナソニックエコソリューションズ社カタログ「あかりフォーム」より)。

次に「長寿命」。白熱灯が約2000時間もつのに対して、LEDは約4万時間の使用ができ、約20倍長持ちするといえる(同上)。つまり、面倒なランプの取り換え回数を20分の1に減らすことができるのだ。

LED電球の価格は白熱灯の電球と比べて約20倍と高価だが、電気代と交換の頻度も組み入れてコストを試算すると、使用開始から5カ月(820時間)程度で白熱灯のコストがLEDを超え、約3年(6000時間。1日約5時間半使用した場合)程度で電球形蛍光ランプがLEDを超えるという試算がある(経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課「LED照明産業を取り巻く現状(2012年11月29日)」資料より)。

約5カ月で元が取れるなら、ちょっと高くても今度はLED電球を買おうと考える人は多いのではないだろうか。その上、取り換えの手間が省けるなら、なおさらLEDが魅力的に思えてくる。それだけでも十分なのだが、どうやらさらなる“利点”があるらしい。

「色が変えられる」「熱くならない」など、意外な利点も

まずは、「光の色や明るさを変えられる」という点。暖かみのある「電球色」、爽やかな「昼白色」、その中間の「温白色」など、光にはさまざまな色があり、「電球色」はリラックスタイム向き、「昼光色」という昼白色よりもさらに青白い明かりは勉強や読書向き、「昼白色」は、朝、スッキリ目覚めたいときに向いているという特徴がある。今までは好みの色にするためにその都度電球を取り換えなくてはいけなかったが、LEDの登場によって、ひとつの照明で、暮らしのシーンに合わせて光の色を変えられることになったわけだ。

「しかも、LEDは長寿命なので、調光・調色できるタイプの器具を選べば、夫婦2人暮らしのときはしっとりとした電球色をメインに使い、子どもが生まれてからは活動的な昼白色をメインに使うなど、ライフスタイルの変化に合わせて色を変えて、使い続けることもできます」(森さん)

加えて、「光源が小さくなったことで形がコンパクトになり、多種多様なデザインが可能になった」、「点灯速度が速いので、スイッチを入れるとすぐに点灯する」、「光に熱線や紫外線を含まないので、モノを傷めにくい」、「虫が好む波長の成分が少ないので、虫を寄せ付けにくい」といったこともLEDの特長として挙げられる。シーリングライト、ペンダントライト、ダウンライトなど、さまざまな種類の照明器具でLEDの利点を享受できるのも、形がコンパクトなおかげだ。

なお、これらは、当初から狙っていた効果ではなく、LEDの特長からもたらされた副産物とのこと。特に、光の色が変えられる点は画期的で、調色、調光できるタイプのLED器具を購入したユーザーの満足度は、とりわけ高いという。

一方、「直進性のある光なので、広がらない」、「点の光なので眩しく感じる」、「光の量が白熱灯と比べて少ない」といった”短所“もあるLED照明。ただ、それらは器具に光を拡散させるレンズを使うなどの工夫で、かなり改善されてきているという。【動画1】電球色から温白色、昼白色、昼光色へと移り変わる光の様子。明るさに応じてふさわしい色になる「シンクロ調色」機能が備わっている(映像/パナソニックリビングショウルーム東京にてSUUMOジャーナル編集部撮影)

LEDへの切り替えは器具ごと交換するのがオススメ

「高いから」と敬遠していたLEDも、すぐに元が取れると分かれば、「それならわが家にもLEDを!」と重かった腰を上げようという人も多いのではないだろうか。ただ、今使っている電球をLEDに取り換えればいいのかというと、そういうわけでもないらしい。

「電球を変える際は、照明器具との適合性を確認する必要があります。また、LEDの光は熱線を含みませんが、電源部分は放熱するので、布や紙で覆ったり、燃えやすいものを近づけたり、手で直接触ったりしてはいけません。特に、密閉器具型の照明で使用する場合は、専用のLED電球を選ぶ必要があります。したがって、LEDに切り替えるのなら、できれば、器具ごと交換することをお勧めします」(崎山さん)

実際、直管LEDランプを今まで使っていた照明器具に取り付けて使用したことで、電源基板部分が焼け、口金やカバーのプラスチックが溶けてしまったという事故もある(画像4:誤った組み合わせの場合)。もし電球のみを替えるのであれば、よく調べて、安全性を確認してからにするべきだろう。【画像2】LED電球の数々。左から、LED交換ユニット、LED内蔵タイプ、直管LEDランプ(画像提供/パナソニックエコソリューションズ) 【画像2】LED電球の数々。左から、LED交換ユニット、LED内蔵タイプ、直管LEDランプ(画像提供/パナソニックエコソリューションズ)【画像3】光が拡散する全方向タイプ、クリア電球タイプ、コンパクトな下方向タイプ、ろうそくの形をしたシャンデリア電球タイプ(画像提供/パナソニックエコソリューションズ) 【画像3】光が拡散する全方向タイプ、クリア電球タイプ、コンパクトな下方向タイプ、ろうそくの形をしたシャンデリア電球タイプ(画像提供/パナソニックエコソリューションズ)【画像4】過去に事故があった蛍光ランプと同じ口金付き直管LEDランプ。口金の樹脂と樹脂カバーが溶けており(左)、分解すると内部の回路基板も焼けてしまっている(右)(画像提供/日本照明工業会)

【画像4】過去に事故があった蛍光ランプと同じ口金付き直管LEDランプ。口金の樹脂と樹脂カバーが溶けており(左)、分解すると内部の回路基板も焼けてしまっている(右)(画像提供/日本照明工業会)

エジソンが発明した白熱灯にはじまり、「明かり」の世界では、60年ごとのスパンでイノベーションが起きているという。崎山さんも、勤続25年の年にLEDが登場したときには、「これは革命だ!」と驚いたのだとか。これからは私も、60年に1度の革命に立ち会えたことに感謝しながら、わが家の照明のLED化の総仕上げをしたいと思う。パナソニックリビングショウルームでは、暮らしのイメージに沿って住まいの照明の相談にのってくれるそう。それも無料というから、今度は取材抜きで足を運んでみたいと思う。●取材協力

パナソニックエコソリューションズ社
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