早く仕事を終わらせるために… 「無駄コミュニケーション」を減らし、生産性を上げるには?

世の中では「働き方改革」が叫ばれています。長時間の残業をする人が評価されていた時代は終わりつつあり、今求められているのは生産性アップ、つまり限られた時間で質の高い仕事をすることです。

企業の事務改善や業務効率化を支援する株式会社ビジネスプラスサポート代表の藤井美保代氏によると、「仕事が効率的に進まず残業が多い、という人の時間の使い方を見ると、平均して1日3時間程度のムダがある」といいます。

ムダを生み出しているのは、「段取り」や「環境」などさまざまですが、今回はチームメンバーや取引先などとの「コミュニケーション」から生じるムダに注目してみましょう。

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「仕事に関する情報を伝達する際、お互い自分の視点や立ち位置から情報を伝えたり受け取ったりするため、『二つの異なった理解』が生まれます。これが誤解やカン違いの原因となり、やり直しが発生するなど時間のムダにつながります」と藤井氏。

そこで、コミュニケーションの取り方を改善することでムダをなくす方法を教えていただきました。

指示を受ける&出すときはフレームワークに沿って

リーダーや上司から指示を受けるとき、あるいは自分が指示を出す際には「はきもの」のフレームワークを活用するのがお勧めです。

は=「その仕事が発生した背景は?」

き=「期限は?」

も=「その仕事の目的は?」

の=「能率を上げるためにどう進めればいいか?」

この4つのポイントを押さえておきましょう。

例えば、「お客様からのクレームをまとめた資料を作って」という指示であれば、

背景=「昨年よりクレームが2倍に増えている」

期限=「明日午前中までに」

目的=「営業会議でクレームの上位3つを撲滅する施策を考える。そのための資料として使う」

能率を上げるため=「半年間のクレームから上位3つをリストアップする」

といったようにです。1つでも欠けると、余計に時間がかかったり、目的からズレた資料となり、時間のムダとなりかねません。

情報を伝える際には「目的」を明確にする

上司に報告や相談をする際、伝えたいことを相手に正しく伝えるためには、話し始める前に「相手の視点」で情報を整理することが大切です。

上司に情報を伝える主な目的は次の3パターンあります。

【1】 上司が意思決定するため

【2】 上司がさらに上の上司に報告するため

【3】 上司の「イエス」を引き出すため

【1】 であれば、上司が適切な判断を下せるようにあらゆる角度から客観的な情報を伝える、【2】の場合は、上司の上司が判断するときに大切にしているこだわりポイントを理解した上で伝える、【3】なら相手が納得する理由や根拠を伝えることで、次の展開にスムーズに進むでしょう。

上司が欲しい情報を、欲しいタイミングで提供する

自分が「このタイミングで報告すればいいや」と思うよりも早く、しかも頻繁に、上司は部下からの報告を求めているものです。

それは、部下に必要なサポートを与え、仕事の進捗状態を管理するため。部下である自分にしてみれば、適切なタイミングで適切なサポートを受けることで、作業効率を高めることができます。

報告するべきタイミングは、「お・し・と・や・か」の5つ。

お=「終わらないとき」

し=「終了したとき」

と=「トラブルがあったとき」

や=「やりづらいとき」

か=「変えざるを得ないとき」

上記が最低限報告すべきタイミング。また、2週間の期限であれば1週間が過ぎたあたりなどに、「中間報告」としてその時点の進捗状況を伝えるとよいでしょう。

「メモ」で、忙しい相手への伝達モレを防ぐ

「伝えたつもりだけど伝わっていない」というのはありがちですよね。口頭で伝えても相手が聞き漏らしていたり、メールを送っても見落とされていたり。

そこで活用したいのが「メモ」です。

例えば、「書類に記入・押印の上、返送してください」と送付状に書かれているだけでは、押印箇所を見落とし、書類不備となって再度郵送しなければならなくなります。しかし、「ここに押印してください」と書かれた付せんが貼られていれば、見落とされることはないでしょう。

また、上司に書類を確認してほしい場合も、デスクに書類を置いておいただけでは放置されてしまい、次の作業に進めず時間をロスしてしまいがちです。そこで、書類の中でも確認が必要な箇所に付せんを貼り、「〇日までに確認しておいてください」と書いておけば、上司に認識してもらいやすくなります。

なお、相手を動かすメモには、次の3つの種類があります。状況によって使い分けることで、忙しい相手にも伝達事項を確実に伝えることができます。

「指示メモ」

相手に確認などのアクションを起こしてもらうために書類に添える。

「思いやりメモ」

書類のうち、相手が確認すべき箇所のみに付せんを貼り、コメントをつけておく。また、カタログ送付などの際、顧客の希望に合いそうな商品のページに付せんを貼り、お勧めコメントを記入しておく。

「伝言メモ」

不在時にかかってきた電話の内容や伝達事項を、メモに書いて伝える。

意図が伝わりにくいメールをゼロにする

メールの書き方によっては、「返信が必要」と認識されずスルーされてしまうことがあります。相手からの返信を受けなければ、次の作業に進められない場合、時間のロスが発生します。

スルーされるメールというのは、「受け手に何をしてほしいのかがわかりにくい」という問題点があります。「お疲れさまです」「先日はありがとうございました」「**社の田中です」といった漠然としたタイトルでは、相手が瞬時に判断できません。

1日に何十、何百ものメールを受ける人は、送り主とタイトルを見てメール処理の優先順位をつけています。そのため、受け手が「自分は何をすればいいか」を判断しやすいタイトルをつけましょう。

返信を希望するなら「返信のお願い」、内容を確認してほしいなら「内容ご確認のお願い」、相談したいことがあるなら「ご相談」といった言葉を添えて、案件の内容を書きます。締め切りがある場合、「返信のお願い 3/10まで」といったように期日をタイトルに明記します。

「伝わるメール」を書くことは、相手に適切なアクションを起こしてもらうことができ、自分の時間のムダの削減につながります。また、相手もメールへの対応を迷う時間が削減されますので、相手への配慮にもなるといえるでしょう。

――メールにしても、直接話すにしても、「自分がこう伝えたら、相手はどう受け取るだろうか」と想像力を働かせてみてください。そうすれば、「添えるべき一言」が判断でき、それを伝える数秒の手間が何十分、何時間もの時間のムダの削減につながります。

藤井 美保代氏/

人財育成プロデューサー、株式会社ビジネスプラスサポート代表取締役

藤井 美保代氏/人財育成プロデューサー、株式会社ビジネスプラスサポート代表取締役

大学卒業後、ソニー関連の人材育成会社にて、組織活性化の研修業務に従事。独立ののち、平成14年、株式会社ビジネスプラスサポート設立。「輝く人財づくりを支援する」を理念に、人と組織が豊かで幸せになることを実現するための研修・コンサルティングを、これまでに約1,000社以上で展開。現在も事務改善や業務効率化コンサルティング、資産価値の高い組織実現に向けての人財開発指導を行っている。

単なるスキルや知識、ノウハウを教えるだけではなく、それらを根付かせるために必要な姿勢や志からしっかり教える研修は、各地で高い評価を得ている。ワーク・ライフ・マネジメントを実現する働き方支援・コンサルティングに注力している。

著書に『早く帰りたい!仕事術 3時間分のムダがなくなる30のコツ』『仕事が効率よくスムーズに進む!事務ミスゼロのチェックリスト50』など。

EDIT&WRITING:青木典子

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