マンガ『インベスターZ』から学ぶ「お金って一体何?」

マンガ『インベスターZ』から学ぶ「お金って一体何?」

12万部を超えるベストセラーシリーズとなった『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社、小学館文庫)。その著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。第1回の今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』をご紹介します。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「こうして社会は存在しない価値を信用する時代に突入する。人類は架空の富を築く歴史の幕を開けてしまった」

(『インベスターZ』第1巻credit.5より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

なぜお金は「お金」として成り立っているのか?

上の一コマは、主人公の財前が先輩の渡辺からお金の成り立ちを教えてもらっている場面です。人類がお金としてのコインを鋳造し、本格的に使い始めたのは紀元前600年前後、ギリシャのアテナイからだとされています。コインが流通した理由は、都市国家であるアテナイがその品質を保証したことによってでした。

当時のコインには銀が使われ、お金自体に価値がありました。しかし、見た目だけでは含有量まではわかりません。人々は、コインに本当に自分の持っているものと交換するだけの価値があるのかと疑います。

そこでアテナイは発行したコインにフクロウの刻印を押すことによって、「このコインは純銀で4グラムの重さがある」という証明をしました。これによって、市民は安心して取引することができるようになったのです。

コインの鋳造は古代ローマ帝国にも引き継がれました。しかし、やがて経済の成長がコインの発行量を上回ってしまいます。そこで彼らが考えた対策とは、コインの純度を下げることでした。こうして、お金には額面分の価値がなくなりましたが、お金の刻印が代わって価値を保証するようになります。これが今に続く「貨幣が貨幣として成り立っている原理」であり、「本日の一言」が物語っていることです。

お金の「3つの機能」を確認してみよう

おそらく、お金は「誰かが発明した」というよりは、自然発生的に生まれてきたものだと考えられます。

一般に、お金には以下の3つの機能が備わっているとされています。

(1)決済手段

(2)価値保全

(3)価値尺度

(1)は、簡単に言ってしまうと「相手が受け取ってくれるかどうか?」ということです。相手が受け取ってくれなければ、欲しいものが買えません。つまりお金とは、交換できることが大切です。

(2)について、お金には「価値をある程度保つ」という機能があります。

たとえば、誰かが苦労して魚を釣り、それを自分では食べずに、自分の労力分の価値を上乗せして販売したとします。

誰かがその魚を買ってくれれば、魚自体の価値と自分の労力の両方をお金に換えることができます。しかし、誰も買ってくれなければ魚は腐り、自分のかけた労力も消えてしまいます。「価値を取っておける」、これが「価値保全」の意味です。

実際は、お金の価値も目減りしていきます。一例を挙げるとインフレ(物価上昇)です。一般に、経済が成長していけばそれとともに物価も上がっていくのが普通です。

(3)は、お金が価値を決める際の単位になっている、ということです。要は「値段」です。私たちは、値段がなければ「それが高いか安いか?」すら分かりません。

普段、何気なく使っているお金ですが、実はこれだけ重要な機能を担っているのです。

お金とは「価値と価値を交換するもの」

『インベスターZ』でご覧いただいたように、現在のお金は実態のない「信用」の上に成り立っています。けれどその一方で、お金はこれまで人々の生活を便利にし、経済の発展を促してきたのも事実です。

世の中には、「お金が欲しい」と思う人はたくさんいます。しかし、そもそも「お金とは何なのか?」ということにまで目を向ける人はあまりいません。

実のところ、お金とは単なる「価値交換のツール」でしかありません。

ビジネスの世界でもこれは同様で、私たちが考えなくてはいけないのは、お金というモノサシが指し示している数字を通じて、「何と何とを交換しているか?」という部分です。交換する数字を大きくしていくためには、相手に渡す価値を大きくしていかなくてはなりません。

主人公・財前孝史のインベスターとしての長い道のりはまだ始まったばかり。今後、どのようにお金と向き合っていくか目が離せませんね。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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