畑に行ってみて分かった、パクチーの意外な真実

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パクチーってどう育てるの?

2016年今年の一皿にも選ばれた「パクチー料理」。『メシ通』でも、パクチーボーイことエダジュンさんが、いろいろとパクチー料理を紹介していますよね。

そして、近年のパクチーブームにあやかって、私もパクチーレシピ本のレシピを担当させてもらったり、イベントをさせてもらったりしています。

今回はパクチーを食べるだけでなく、パクチーってどうやって育てているの? と思い、千葉県野田市にあるパクチー畑に行ってみることに。

案内をしてくれるのは、オリジナルのコリアンダーペーストを販売している株式会社ZUCH(シュチ)の社長。千葉県産のパクチーで船橋を元気にしよう! という「パク友の会」会長でもある桑垣さん。

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では出発。まずは国道16号で野田市を目指します。

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道中は、もちろんパクチー話でひと盛り上がり。

桑垣さんがコリアンダーペーストを作ろうと思ったのは2011年。あ、念のためコリアンダー(英語)=パクチー(タイ語)=香菜(読み方はシャンツァイ、中国語)=カメムシ草(日本の俗名)です。

2011年当時はコリアンダーペースト用に毎月100kgのパクチーを作ってくれる農家さんを探すのが大変で、「そんなの作っても売れるの!?」という農家さんをようやく口説き落として作ってもらったとか。それが今では、パクチー品薄状態!

「でもさ、あのとき、商品名を“コリアンダー”ペーストにしちゃったのは読みが甘かったかな。そのころの世間の認知度的に“パクチー”ペーストじゃないな、って思ったんだよね」と悔しがる桑垣さん。

だよね、「パクチーペースト」と名付けていたら、今ごろ左うちわの生活だったかも。

パクチー、実は暑さに弱い

そうこうしているうち、野田に到着!

今回、お邪魔させていただくのは、和か葉農園。代表の山﨑さんが出迎えてくださいました。

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ご挨拶をしていると、クンクン。

どこからかパクチーの爽やかな香りが!

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作業所ではまさにパクチーの出荷作業中。

ゴムを高速回転させ、下葉や泥を取っていたのです。

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3月~4月に収穫するのは、10月ぐらいにまいた種。冬を越して春に収穫するとか。

4月に入ると、週2~3回ペースで種をまき、1カ月半で収穫。

夏場は、収穫に適した時期はわずか3日ほど。パクチー=暑い国のハーブというイメージだけど、じつは暑さに弱く、熱で葉が溶けちゃったりするんだそう(自家発熱するタイプのハーブなのだ)。

こちらの和か葉農園では1日、20kgを出荷しているとか。

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すごい! もりもりパクチー。

出荷先でパッケージされ、スーパーの店頭に並びます。

パクチーは無農薬栽培がデフォ

さてさて、山﨑さんに「こっちの畑のほうは、けっこうパクチーを収穫してハゲちゃってるけど」と言われながらも、パクチー畑に案内をしていただきました。

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あ、確かに、けっこう収穫されていますね。

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ん? あれ? ここはパクチー畑ではなく、ペンペン草畑?

いえいえ、よく見ると、ペンペン草の中にパクチーがしっかり隠れています(ちなみに、パクチーもそのまま育てるとこんなふうな白い小花を咲かせるんですよ)。

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なんか想像と違う。

ハーブって、雑草と一緒に育つものなの!?

「ここは、いつでも有機圃場に転換できるように栽培しているので、雑草もそのままにしているんです」と山﨑さん。そもそも「パクチーに使う除草剤がない」とのこと。

ホームセンターなどで家庭菜園用に売っているものは別として、農作物用の農薬は農林水産省が管理していて、農薬取締法により登録していない農薬は使えないことになっています。

通常、農薬を登録するときは「使用できる作物」や「使用できる時期」、「使用してよい量」などの「使用基準」を決めないといけなくて、その使用基準以外の方法で使ってはいけないのだとか。

パクチーは、最近の野菜なので、まだ法整備が追い付いていないのでは、とのことでした。

ちなみに、雑草をわざとはやし、夏は日陰を作ったり、冬は雑草で根の部分を温めるなど、雑草そのものの存在を活用する農法もあるとか。

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おっ。てんとう虫発見!

タイ料理の隠れ主役、パク根

山﨑さんは、茨城でベビーリーフやルッコラなどの葉物野菜を育てていて、2年前に野田に引っ越してきたそう。

出荷先から「パクチーを作ってくれ」と頼まれ、「新しい土地で新しい野菜を作ってみたい」とパクチーを追加したとか。

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最初の年は、雑草に埋もれて腐ってしまったそうですが、今年は豊作。

じゃ、せっかくなのでここでちょこっと収穫体験を。

根元をつかんで……

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わしゃわしゃわしゃ。

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抜けました!

ご、ごぼうですか!?

ところで、タイ料理=パクチーというイメージを持っている人は多いですが、タイ料理では、日本の小ネギのような感覚。味噌汁、豆腐、親子丼など、パパッと小ネギを散らすように、いろんな料理にパクチーが乗っているけれど、あくまでも薬味というか彩り。

今、日本でブームになっているようなパクチー鍋とか、パクチーサラダのような、パクチーがメインになる使い方はしないんですね。

いっぽう、日本では捨てられがちな「根」がタイ料理では大活躍。グリーンカレーやレッドカレーといったカレーペースト、スープやタレ、鶏肉などの下味にもつぶした「パクチーの根」を使います。「根」だけでなく、パクチーの種も、石臼でつぶして料理に使います。

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ボキッと折ると、冬を越して、まんなかに年輪のようなものが。さすがにここまで育つと「規格外品になる」(山﨑さん)のだとか。

よく、タイのガイドブックに「パクチーを入れないで=マイサイパクチー」なんて、タイ語会話が載っていますよね。ただ、上にかけるパクチーは抜くことができても、かなりのタイ料理にはしっかりとパクチーの「根」(根と根元部分)は入ってるんだよなぁ。

パクチー嫌いで、パクチー抜きと信じて、今までタイ料理を食べていた人、かわいそうに。そこのあなた、じつはパクチー、食べてますよ!

驚愕(きょうがく)の生産者あるあるとは

ちょっと脱線しましたが、さきほどの収穫が終わった畑から車で数分のところにあるパクチー畑に移動。

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おお! これ、これ!

イメージしていたパクチー畑です。

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その横には、2月上旬に種をまいたというパクチーが(取材時3月下旬)。

パオパオという布をかけ、霜よけに。

せっかくなので、パクチーの若葉のアップ写真を。

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かわいい。

パクチーが育ってくると、このパオパオを押し上げていくそうで、

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ご覧のとおり、すごい生命力!

でここまで育つと、蒸れてしまのでパオパオをはがすのだけど、はがさないとどうなるのか「実験中」という山﨑さん。

ちなみに、山﨑さんおすすめのパクチー料理を聞いてみました。

「じつは、まずいとは思わないけど、モワッとして、どちらかというと好きじゃないほうの人間なので」

うーん。

「生産者あるあるですねー」と桑垣さん。現在10軒近くの契約農家さんがいるそうですが、けっこうパクチーが苦手なパクチー農家さんが多いようです。

「あっ、でも、うちのパートさんは、主婦の方とか学校給食をやっていた方もいて、パクチー好きが多いですよ。パクチー入りの蒸しパンを作ってきてくれて、おいしかったです」と山﨑さん。

おー、それはよかったです。本日は、ありがとうございました。おじゃまいたしました!

簡単! スープレシピ

では、せっかくなので、私からも一品簡単なパクチーを使ったタイ料理「ゲーン・チュー(薄味スープ)」をご紹介させていただきます。

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材料は、パクチー、卵豆腐、豚ひき肉、春雨、ナンプラー。

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根っこは包丁でつぶし、あとはざく切り。

葉っぱだけをむしって、茎を捨てちゃう人がいますが、それは水菜の葉をむしって食べるようなもの。茎ごとざくざく切って、ガシガシ食べましょうね。

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鍋に水1カップ、パクチーの根、ナンプラー小さじ1を入れて沸かし、豚ひき肉をパックから適量をつまみながら、スープの中へ。角切りにした卵豆腐を入れて温めます。

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スープ皿に、熱湯で戻るタイプの春雨を入れ、熱々のスープを注ぎ、パクチーをこんもり乗せたら完成。

せっかくなので、普段よりもパクチー多めで。ぜひお試しを!

※この記事は2017年5月の情報です。

書いた人:下関崇子(しもせきたかこ)

下関崇子

元プロキックボクサー。在タイ歴6年。タイの屋台料理やジャンクフードなどを日本の食材で再現。本邦初公開レシピ満載の『バンコク思い出ごはん~食べたいタイ料理88レシピ』『暮らして恋したバンコクごはん~タイ料理レシピコレクション』はリトルプレスながら初版完売。タイ料理業界のネタ本として認知されつつある。All About毎日のタイ料理ガイド、一般社団法人日本エスニック協会アンバサダー。

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