座りたい!ああ座りたい、座りたい!!首都圏で増加する有料座席電車の最新トレンド
毎朝、家を出るたびに憂鬱になる「通勤電車」。
「また今日も、あの“満員地獄”に身を浸りながら体力を消耗するのか…」
ビジネスパーソンのハードルの一つでもある、通勤電車。その快適性改善に向けて、ここ最近、JRや首都圏の大手私鉄各社が注力しています。その一つが「有料座席電車」の運行。その最新トレンドをご紹介します。
どんな路線で「有料座席電車」が走っている?【JR編】
今回注目するのは「朝または晩の通勤時間帯に所定の追加料金を支払うことで、“座席に確実に乗車できる”電車」という定義の元で運行されている電車。
JRの場合「座席指定」という点をのぞけば、旧国鉄時代の東海道線で1950年に誕生した「湘南電車」こと80系電車の運行開始時から、そのルーツが始まります。
その後、高度経済成長期には「普通電車に連結されたグリーン車に乗って通勤する」スタイルが、湘南エリアに住む富裕層を中心に普及。今では「2階建てグリーン車」として横須賀総武快速線や湘南新宿ライン・上野東京ラインなどにも拡大してきました。
しかし先ほど触れたように、これらはすべて「座席指定ではない」ため、例えグリーン券を購入しても満席の場合、デッキなどに立たなければならないので、今回のテーマである「座席に確実に乗車できる」定義からは漏れてしまいます。
なお肝心の「価格」ですが、現在、乗車距離50キロまでが570円(休日・乗車前購入)・770円(平日・乗車前購入)、51キロ以上が780円(休日・乗車前購入)・980円(平日・乗車前購入)となり、車内で購入する場合は260円割高になります。
今回の定義に照らし合わせて合致するのは、「湘南ライナー(東海道線)」「スワローあかぎ(高崎線・東北線)」「中央ライナー・青梅ライナー(中央線・青梅線)」「ホームライナー千葉(総武線)」といった電車(※ちなみにライナー券の料金は距離に関わらず510円)。
ただし後述する私鉄に比べ、ここで紹介した電車は基本「特急型車両」として日中は特急として運行、通勤時間帯に限り「有料座席電車」として運行しているものばかりであることが、JRの特徴かもしれません(※湘南ライナーの「215系」等一部例外あり)。
そして今後予定されているのが、「中央線」での2階建てグリーン車増結に伴う運行。
10両編成で運行されている現在の電車に「プラス2両」の2階建てグリーン車を増結するため現在、駅ホームの延長工事などをすすめていますが、運行開始が当初目標の2020年から遅れるとのこと。
ちなみにこちらも「座席指定」ではない車両での運行となる予定です。
どんな路線で「有料座席電車」が走っている?【私鉄編】
私鉄においても近年、続々と「有料座席電車」がデビューしています。
首都圏の大手私鉄の中で、西武や小田急・東武が運行している特急電車をのぞいて、最も歴史があるのは京急の「京急ウィング号」(※料金は乗車券+「Wing Ticket 300円」)。
1992年運行開始で、三浦半島の先端に近い「三崎口駅」や「京急久里浜駅」から「横須賀中央駅」「金沢八景駅」「金沢文庫駅」「上大岡駅」を経て、「横浜駅」「京急川崎駅」「京急蒲田駅」といった主要駅をすべて通過し、一気に「品川駅」を結んでいます。車両は、日中座席指定ではない電車として運行される「2100形」で、2扉&全席クロスシートの抜群の快適性を誇っているのが、大きな特徴です。
続いて東武が2008年から運行をスタートした「TJライナー」(※料金は乗車券+「着席整理料金上り410円/下り310円」)。東武東上線の「小川町駅」または「森林公園駅」と「池袋駅」を結ぶ電車ですが、この電車の特徴は「有料座席時はクロスシート&日中はロングシート」に座席を変更できること。
この流れは、その後2017年にデビューした西武の「S-TRAIN」や2018年運行開始予定の京王の座席指定電車(5000系)にも及びます。
今年3月デビューしたばかりの西武「S-TRAIN」(※料金は乗車券+「指定券510円(平日)・300~1060円(休日)」)は、車両自体は「40000系」という西武のものですが、運行は西武・東急・東京メトロ・横浜高速鉄道の4社共同で行うという、これまでにない方式。
さらに「平日:所沢駅~豊洲駅」に加え「土休日」にも観光需要を見据えて「西武秩父駅~元町・中華街駅」を結ぶのも、大きな特徴です。
また今年4月、東武スカイツリーライン系統にも「リバティ」(料金は乗車券+「特急券310円~2110円」)という電車が運行スタートしましたが、こちら厳密にはJRの「湘南ライナー」や小田急ロマンスカー同様、基本は「特急型車両による、優良座席電車」という位置づけになります。
来年運行スタート予定の京王も含め、今後も有料座席車両の動向からは目を離せません。
WRITING:山田モーキン イラスト:海月あいる
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