30歳男性が”本気”でヒーローになるとどうなる?
「シンゴジラ」「君の名は。」といったメガヒットの他、「この世界の片隅に」が口コミを通じてジワジワと火が点くなど、昨年は「邦画当たり年」と盛んに言われた。今年に入ってからも、「沈黙‐サイレンス‐」「ラ・ラ・ランド」など海の向こうの注目作が続々と公開されるなど、この機会に映画の魅力を再発見したという人も多いのではないだろうか? 今回ご紹介したい『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』(新潮社)は、映画の持つさらなる魅力をユニークな形で示してくれる一冊だ。
『月刊コミック@バンチ』(新潮社)の人気連載を書籍化した本書は、読者からのありとあらゆる悩みに対し、シネマハスラー・宇多丸が悩みの処方箋となる映画を縦横無尽に紹介していく。
たとえば、「自電車通勤のモチベーションを保つには?」という現実的な相談に対しては、「自転車が出てくれば、とりあえず映画は輝き出す!」(本書より)と持論を展開。「もののけ姫」などの作画監督としても知られる高坂希太郎監督の「茄子 アンダルシアの夏」をあげ、「自転車に乗る感覚が恋しくなってくる」作品としてこう紹介する。
「わずか47分の中に、プロの自転車競技というものの、チーム・スポーツとしての妙味、ビジネスとしての構造、そしてその肉体的な過酷さと背中合わせの快楽までが、マニアックなディティール、さらには主人公が密かに抱えた個人的葛藤とともに、ぎっしり詰め込まれている!」 (本書より)
一方で、「30歳ですが、ヒーローになりたいんです!」という半ばクレイジーな相談には、まず「ホントにヒーローがいたとしたら実質アタマのおかしい犯罪者だよ」「それ以前に素人がヒーローを気取ると相当コワい目に遭うと思われる件」(本書より)と、極めて現実に即した助言で相談者を諭す。その上で、それでもなぜ人はヒーローを求めてやまないのか?という問いに応えてくれる作品として、ジェームズ・ガン監督の「スーパー!」を挙げて、以下のように説明する。
「コメディ・タッチにデフォルメされてはいるものの、『実際にヒーロー活動を始めると何が起こるか』について、限りなく誠実に思考を巡らせた作品だと思います」 (本書より)
この他にも、「いい歳してアイドルにハマってしまいました!」という相談には、まさかの3部構成でアイドル映画の歴史を並々ならぬ熱量で紐解いてみたり、「怒りを鎮める方法ってありませんか?」という相談には、いろんな映画を観て「視点の引き出し」を増やすことこそ、怒りの感情を落ち着かせるためには必要ではないか?と、映画の持つ根源的な魅力に触れてみたりもする。この春、本書を通じて思いもよらぬ映画との出会いをしてみてはいかがだろうか?
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