“親密な関係”を作りたいなら、「ユー・クエスチョン」を使いこなせ

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第16回目は「親密な関係を相手と作りたいときの会話のコツ」についてです。f:id:k_kushida:20170510104431j:plain

人に要望を伝えたい時や、動いてほしいときにはコツがあります。

「あなたは◯◯してください」というユーメッセージだと、要望を伝えるのがストレートすぎて、命令を与えられているように感じさせてしまいます。

こういった場合、同じ要望でも、「私は、あなたが◯◯してくれると、とてもうれしい」という言い方を使うと有効的です。

「私はうれしい」というように、「私」から始まるフレーズをアイ(I)メッセージといいます。これについては前回紹介させていただきました。

要望を伝えるときには、アイメッセージが有効ですが、話を盛り上げたいときの質問は、「あなた(ユー、you)」を主語にするのが基本です。

よくやってしまいがちな、話ドロボウ

「昨日の休みは、海に行ってきたんだよ。いい天気で最高だったよ」

「へえ、(私は)海に行ったのはいつだったかなあ。そうそう、3年前に湘南に行ったときのことなんだけど、台風が来て、すごかったんだよ。海の家はぜんぶ閉まっちゃうし、もうずぶ濡れでさ、大変だったよ」

「去年、B’zのライブを見に行ったんだけど、球場の最後尾で、豆粒のようにしか見えなかったんですよ。でもやっぱり松本のギターは最高だね」

「そうそう、私もB’zは大好きなんで、よく聞きますよ。特に好きなのは水泳のテーマソングで、え~と、なんて曲だったかな、そうそう、ウルトラソウルだ。あれってかっこいいよね」

「ねえねえ、ちょっと聞いてくれる?休みに実家に帰ったら、私の親が、結婚しろってうるさいのよ。ほんとに嫌になっちゃうわ」

「あー、うちの親もよく言うよ。この前なんか、見合い写真を持ってきてさ、ホント迷惑な話だわ」

いずれも、何が問題かがわかりましたか?

一見、相手の話を聞いているようです。

でも、「私は」から始まる会話にすると、見事に話ドロボウになります。

話題を振られた時に、「私」を主語にすると、「自分もそんなことがあったなあ。それはいつだったけ?どんなないようだったけ」と、相手の話を聞くどころか、自分の過去の経験を思い出して、それを話すだけになりがちです。

こうして自己主張ばかりの会話になってしまうのです。

ユー(you)・クエスチョンで関心を寄せる

人から愛される人は、「私」を主語して話しません。「あなた(ユー)」を主語にして、さらに質問をしていく技を使っています。

【ユー・クエスチョンの例】

「昨日の休みは、海に行ってきたんだよ。いい天気で最高だったよ」

「へえ、(あなたは)どちらの海に行ったんですか?」

「湘南ですよ。家族みんなで海水浴に行ったんですよ」

「そりゃ、昨日は最高だったでしょう。(あなたの)子供さんはおいくつですか?」

「8歳と10歳だから小2と小4なんだけど、二人とも大喜びでさ、すごかったんだよ!というのも…」

「去年、B’zのライブを見に行ったんだけど、球場の最後尾で、豆粒のようにしか見えなかったんですよ。でもやっぱり松本のギターは最高だね」

「最高ですよね、(あなたは)特に好きなのはどの曲ですか?」

「そりゃ、最高なのは、『さまよえる蒼い弾丸』って曲ですよ。あの速弾きはほんと、しびれますよ!なんたって…」

「ねえねえ、ちょっと聞いてくれる?休みに実家に帰ったら、私の親が、結婚しろってうるさいのよ。ほんとに嫌になっちゃうわ」

「うんうん、わかるわー、それで(あなたは)親にどう返してるの?」

「今は仕事が楽しいから、結婚なんて考えられないって言うんだけどさ、とはいえ、年齢を考えると、そろそろ彼と、なんとかした方がいいとは思うんだよね。ちょっと相談乗ってくれる?というのはね…」

このように、質問をする時に「あなたは?」という言葉を使うだけで、相手に意識が向かいます。

すると相手は、どんどんしゃべってくれます。

「あなたは?」から始める会話は、相手を主役にします。

「私は」と入れた途端に、主役の座を奪い取り、話ドロボウしてしまうので、相手の話す機会を奪います。

相手はどんどん話す気力がなくなります。

「あなたは?」から始める会話と、「私は」で始める会話では、相手との関係づくりに、雲泥の差が生まれます。

営業でもユー・クエスチョン

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取引先に提案したり、営業をするときも同じです。

「今日は、貴重な時間をありがとうございます。ではさっそくですが、私どもの会社のご紹介をさせていただきます。昭和39年から53年の歴史があります。私どもの得意としているのが、顧客満足を一番に考えた◯◯サービスです。私どもの提案は…」

このように「私」、「私ども」を使うと、自分の会社の素晴らしさ、自分の商品の素晴らしさ、サービス体制が行き届いているなどなど、自分が伝えたい内容に終始してしまいます。

相手に意識が向くことがなければ、深いニーズを知ることもできないし、あくまで自社の立場でしか見えていない状態が続けば、相手に刺さる話もできません。

逆に、「あなたは」「◯◯様は」という言葉から始める質問をするとどうなるでしょう?

「鈴木様が今、一番困っていることはなんでしょう?」

「鈴木様は、その分野について、どのようにお考えでしょうか?」

このように、相手の事をよく知るための質問が、たくさん飛び出してくるでしょう。

相手に動いてもらうには、相手をよく知ることです。

ついつい自分に意識を向けがちですが、相手に意識を向けるのを習慣づけるのが、ユー・クエスチョンです。

相手に関心が向くようになると、人の気持ちを汲み取れるようになります。

人の気持ちを汲み取れると、どうしたらこの人は動いてくれるのかも、わかるようになります。

人を動かすのがうまい人たちは、相手の気持ちに寄り添うのがうまいのです。そのためにも必須なのがユー・クエスチョンです。

まずは周りの人に、ユー・クエスチョンをしてみてください。

普段から心に溜めていたことを、たくさん話し始めてくれることで、より親密な関係になりますよ。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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