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吉川友、ファンに“看取られ”バースデーライブ「言葉のミスは25歳になっても変わりません。」

吉川友、ファンに“看取られ”バースデーライブ「言葉のミスは25歳になっても変わりません。」

 吉川友が自身の誕生日となる5月1日にバースデーライブを渋谷RUIDO K2にて開催。5月24日にリリースとなるシングル『さよなら、スタンダード』のカップリング曲「アンバランス アンバランス」を初披露したほか、アイドル史上最長とも言われている17分超えの大作「花」などを全編生バンドで披露した。

吉川友 バースデーライブ写真(全14枚)

 2011年、19歳でソロデビューしたきっかも今年で25歳。当時は無茶苦茶なトークで、ファンとファン以上に関係者の大人たちをヒヤヒヤさせた彼女だが、あれから6年が経ち、すっかりと大人の落ち着きあるトーク……が、できるはずがない。我々は忘れちゃいけない。この日、ステージに立つのは他でもないきっかである。

 吉川友が発表した数々の楽曲がBGMとして流れる中、フロアは入り口の階段にも人が溢れる超満員状態。開演時刻が過ぎて、バンドメンバーがステージイン。いよいよバースデーライブの幕が上がる。観客のコールに煽られるように「吉川友、25歳になりましたー!」とステージに登場したきっかの1曲目は、“明日も今も懐かしいあの日々も無駄じゃない”と未来へ向けて歌い上げる「Stairways」。バースデーライブにふさわしい始まりで、友フレ(吉川友ファンの総称)の声援にも熱が入る。

 「やだー、どうしようー。年取っちゃったー。ほんと泣きそう25歳ー。おばさんだねー。ほんとにー。」

 と、巷のおばちゃんたちの井戸端会議のような発言からMCを始めるきっか。そしてバースデーライブだけでなく、吉川友の言葉の迷宮、トークラビリンスの扉も開かれることになる。

 「みなさんにわがまま言っていいですか? せっかく誕生日当日ということで、Twitterとか、ありとあらゆるSMSで“おめでとう”のコメントはたくさんいただいているんですけども、直談判といいますか、直接、みんなの生声で、ハッピーバースデーを歌ってほしいなって思うんです。(バンドに向けて)ちょっとなんか音楽お願いしますよ。一発、なんかハッピーバースデーの。いつもの、エブリデイの。」

 ひとつひとつ解説をするなら、まず、きっかのもとにみなさんからの「おめでとう」のコメントがたくさん届いたのは“SMS(ショート・メッセージ・サービス)”ではなく“SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)”。そして“直談判”とは、まさに今、きっかが友フレに「直接、みんなの生声で、ハッピーバースデーを歌ってほしい」というお願いをしている“その状態のこと”を言う。さらにここでの“いつも”とは“every day”ではなく“usual”であり、加えていうと、そもそも吉川友はルー大柴ではない。ただ、その発言のひとつひとつにおいて、友フレからはざわめきこそ発生したが、デビューして6年、ひとつひとつ訂正を挟むことなく意思疎通が図れてしまうのは、きっかと友フレの間に築き上げられた信頼関係の賜物である。本当に慣れとは恐ろしいものである。

 きっかからのお願いで「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を全員で大合唱したのち、「今日はこれで帰れます!」と堂々帰宅宣言をするきっかを「いやいやいや……。」と、友フレが引き止める。そんなお約束のようなやり取りを終えて、きっかは「今までの自分とはちょっと違う自分を見せたらいいな。」という今年のバースデーライブのテーマを紹介する。「次の曲は2年ぶり。私たち、大変だったねという思いがあるんですけど、その大変さが分かる曲を歌いたいと思います。」という曲振りを経て流れてきた音の重なりは、2015年の5月にリリースされた、トータル17分25秒というアイドル史上前代未聞の超長いシングル曲「花」。記者にとっては、当時のリリースイベントにて、歌が始まったというスタッフツイートを受けて恵比寿駅から山手線外回りに乗り込んで、会場となっていた新宿のタワーレコードまで行ってみたら、まだ歌が続いていたという検証を行なったことがある、本当に長い曲だ。しかも今回は、この曲を生バンドで行なうというのだから、これまたアイドル史上前代未聞である。

 もっとも、不安定要素の宝石箱のようなトークとは異なり、吉川友の歌唱力の高さはアイドルファンの間ではよく知られている事実。次々に展開とメロディーが変わる組曲「花」のような難曲でも、しっかりと安定した歌声を聴かせる。それが吉川友エンターテインメント。ライブに足を運ぶ友フレの多くは、この歌とトークのアンバランスのようなバランスで成り立つエンターテインメントに魅了されている。

 ボーカルとバンド、そして観客の熱量がぶつかりあって、激しい一体感を生み出していた「花」を経て、3曲目「こんな私でよかったら」では、友フレからの生誕サプライズが贈られる。吉川友=黄色という定番カラーの光に変わって、フロアで強い輝きを放っていたのは、開演前に友フレ有志によって配布されていた青いサイリウム。それは“こんな吉川友だけど応援し続ける。どこまでもきっと行ける。”という友フレからの決意のようなもの。友フレはバースデーライブごとに決意を新たにして、自己を奮い立たせるのである。

 サプライズと盛り上がりを目の当たりにして嬉しそうなきっかだったが、テッパンの盛り上げ曲「Time to zone」で飛び跳ねたあたりから、まさかのスタミナ切れ寸前。「歯をくいしばれっっ!」のイントロでキーボードに手を付きつつ、「疲れた……。」と漏らした本音をマイクが拾って観客は爆笑。「いやいやこれは『歯をくいしばれっっ!』に入るための、吉川友なりの演出なんじゃないか……?」と、思った新規ファンもいたかもしれない。甘い。長年見てきた友フレならわかるように、なんでもない、ただの彼女の本音だ。

 こういう状態を見越して大森靖子が書いたかのような、言葉の洪水が続く「歯をくいしばれっっ!」が、きっかの体力をジリジリと削っていく。しかしきっかは、友フレの声援を受け、グロッキー気味になりながらもしっかりと歌い上げることに成功。思わず友フレから大きな歓声が巻き起こる。

 「25歳になって、私、気づいたことがある。……体力がない。いやー、びっくりしたー!」と、冒頭からの5曲を振り返るきっか。「『花』、17分25秒を3曲ぶんだと考えたら、8曲歌ってですよ、8曲でこんなに息ハアハアって。デビュー当時にはありえなかったことだなって。」と、ジムで30代後半と言われた体年齢を痛感している様子だ。

 さらにきっかは、「25歳。“人生の曲がり角”って言うんです。」と、会場の誰もが初耳なフレーズを突然言い出してフロアを大きく動揺させる。この騒然具合にきっかも間違いに気づいたのか、「違う。“お肌の曲がり角”って言うんです。」と言い直す。確かに、お肌の曲がり角が人生の曲がり角かのように思ってしまう若い女性も世の中にはいるかもしれない。が、しかし、目の前のアイドルに勝手に人生の曲がり角を設定され、さらに気づいた時には曲がり角はゆうに通り過ぎていたという手遅れな状態に叩き落されそうになったこちら側の気持ちにもなってほしいものである。

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