妻(夫)への不満の原因は「◯◯すべき」にあった?――山口拓朗の「夫婦円満法」
今年で結婚20年目。2度の離婚危機を乗り越えて、今ではお互いが相手を認めて応援し合い、それぞれのビジネスを発展させている山口拓朗さん、朋子さんご夫婦。拓朗さんは文章の専門家として、これまでに著書を10冊以上出版。奥様の朋子さんは主婦の起業を支援するオンラインスクール「彩塾」の塾長として、これまでに600名以上の門下生を輩出。2016年から夫婦そろって中国での講演をスタートさせるほか、「夫婦コミュニケーション」をテーマにした講演活動にも力を入れています。
そんな山口拓朗さんが自身の経験から編み出した「夫婦円満法」を公開するこのコーナー。第2回は「妻(夫)への不満の原因は『◯◯すべき』にあった?」です。夫婦はお互いに不満だらけ?
ママ友が集う昼間のカフェやレストランでは、ランチをしながら妻たちが夫に対する不満をぶちまけ合う。サラリーマンが集う夜の居酒屋では、酒を酌み交わしながら夫たちが妻に対する不満を打ち明け合う。——“あるある”な光景ではないでしょうか。
【夫に対する妻の不満(一例)】
「(夫が)家事や子育てをあまり手伝ってくれない」
「(夫が)休みの日にゴロゴロして動かない」
「(夫が)お金にだらしない」
【妻に対する夫の不満(一例)】
「(妻が)家の掃除をしない」
「(夫が)休みの日に限って、(妻が)友達と出かける」
「(妻が夫に対して)見下した言い方をする」
パートナーに複数の不満を持っている人も少なくありません。そう考えると、「パートナーにまったく不満がない」という夫婦は、ごく少数なのかもしれません。
不満の裏に隠された「◯◯すべき」
筆者も以前は、妻に対してさまざまな不満を持っていました。その不満がとくに大きかったのは、子どもが生まれた直後でした。妻は子育てに疲れていて、「疲れた」「助けてほしい」というサインをたくさん出していたのですが、私にはそのサインが、妻の“怠慢”に感じられたのです。
「母親なんだから、子どものためにもっと頑張ってほしい」
私は、妻に対して、そんな気持ちを抱いていました。
「母親なんだから、子どものためにもっと頑張ってほしい」という気持ちの裏返しは、「お母さんは、子育てを頑張るべきだ」という観念、つまりは、思い込みです。
「思い込み」と書きましたが、残念ながら、当時は、それが思い込みだとは気づきません。それどころか、自分の考えが正しい(正義)と信じて疑いませんでした。
こうした「◯◯すべき」は、多くの場合、生まれ育った環境の影響で作られていきます。生きていれば、誰もが多かれ少なかれ「◯◯すべき」を持ちながら生きているのです。
冒頭で紹介した妻と夫たちの不満も、すべて、その裏に「思い込み」が存在します。以下、その思い込みを「◯◯すべき」で表現してみましょう。
【夫に対する妻の不満】
「(夫が)家事や子育てをあまり手伝ってくれない」
→夫は、家事や子育てをもっと手伝うべきだ
「(夫が)休みの日にゴロゴロして動かない」
→夫は、休みの日はゴロゴロすべきではない(家族のために動くべきだ)
「(夫が)お金にだらしない」
→夫は、まっとうな金銭感覚を持つべきだ
【妻に対する夫の不満】
「(妻が)家の掃除をしない」
→妻は、しっかり家事をするべきだ
「(夫が)休みの日に限って、(妻が)友達と出かける」
→妻は、夫が休みの日は家にいるべきだ
「(妻が夫に対して)見下した言い方をする」
→妻は、夫をもっと敬うべきだ
「◯◯すべき」を捨てることで得られるものとは?
「◯◯すべき」が、なぜいけないの? そんなふうに思う人もいるかもしれません。「正しいことを言って何が悪い」と。もちろん、誰がどんな「◯◯すべき」を持とうと、それは自由です。「持つ・持たない」はその人自身が決めることです。そもそも、すべての「◯◯すべき」が悪者というわけでもありません(たとえば、仕事の原動力になるような「◯◯すべき」もあるでしょう)。
ここでは筆者の個人的な体験から得た気づきをシェアします。それは「◯◯すべき(=思い込み)」を捨てると、とてもラクに生きられる、ということです。なぜなら、「◯◯すべき」の正体は《過剰な期待》であり、《期待》とは、常に“裏切られること”と背中合わせだからです。
たとえば、「しっかり家事をすべき」という《過剰な期待》を持っていると、相手が家事をしなかったときに、「《期待》が裏切られた」と感じ、怒りや失望、悲しみの感情に襲われます。勢い余って、相手を責めたり、批判したり、罵倒したりする人もいるはずです。
一方で、「◯◯すべき」という「思い込み」を持っていなければ、《期待》が裏切られることはありません。なぜなら、そもそも《期待》が存在しないからです。そうすると、どんなことが起きても(起きなくても)、心がざわつくことなく、平穏でいられます。
1:「◯◯すべき」がある → 相手が《期待》を裏切る → 裏切られたことで、怒りや失望、悲しみを感じる
2:「◯◯すべき」がない → 相手が何をしても(あるいは、何もしなくても) → 心の平穏を保てる
1と2は天と地ほどの違いがあります。1はバッドエンドで、2ハッピーエンドです。「◯◯すべき」を持つか持たないかによって、その先に待ち構える未来が大きく変化するのです。
「◯◯すべき」に潜むもうひとつの落とし穴
また、「◯◯すべき」という《過剰な期待》には、「《期待》が裏切られる」以外にもうひとつ大きな落とし穴があります。それは、「あたりまえ」が増えてしまう、ということです。「あたりまえ」とは、「して当然」と言い換えてもいいでしょう。
たとえば、「(相手は)しっかり家事をすべきだ」という《期待》をしている人にとって、相手がしっかり家事をした状態は「あたりまえ=して当然」です。「あたりまえ」のことに対して人は感謝の気持ちを持ちません。
一方、「◯◯すべき」を持っていない人であれば、感謝の気持ちがわき上がります。なぜなら、相手が家事をしてくれたら、それは「あたりまえ」ではなく、「ありがたいこと」だからです。ありがたいと感じると、おのずと感謝の気持ちに包まれます。すると、無意識のうちに「ありがとう」という言葉も出てきます。
3:「◯◯すべき」がある → 相手が《期待》通りに動く → 「あたりまえ=して当然」なので、何も感じない
4:「◯◯すべき」がない → 相手が何かしてくれる → 感謝の気持ちがわき上がる
このように、「◯◯すべき」の「思い込み」を捨てると、自分のなかに感謝の量が増えていくのです。
「◯◯すべき」を捨てると自分がラクになる?
筆者は、大小さまざまな「◯◯すべき」を捨てて以来、妻に対する「あたりまえ」が消えて、すべての事柄が「ありがたい」と感じられるようになりました。食事を作ってくれても、お皿を洗ってくれても、それこそ、近くにあるティッシュペーパーを取ってくれただけでも、自然と「ありがとう」の言葉が口をつきます。実際「ありがたい」と感じるからです。
私たち夫婦は、「◯◯すべき」の呪縛の恐ろしさに気づいてから、少しずつ、それらを捨てる努力をしてきました。その当時、妻も「(夫は)稼いでくるべき」「(夫は)子どもが悪いことをしたときは、厳しく叱るべき」などの思い込みを捨てました。それによって、妻自身が、怒りや失望、悲しみといった感情から解放され、そして、《期待》の対象であった私自身もラクになりました。
「◯◯すべき」を捨てるには、自分がどんな「◯◯すべき」を持っているかに、まず気づく必要があります。気づけなければ、捨てることができません。
相手に怒りや失望を感じたときは、自分が持つ「◯◯すべき」に気づく絶好のチャンスです。この怒りや失望や悲しみを生み出している「◯◯すべき」がいったい何なのか、自分の心をじっくり観察してみてください。そして、今までどおり「◯◯すべき」を持ち続けるか、あるいは捨てるかの判断を下しましょう。「自分には必要ない」と思えば、それ以上、持ち続ける必要はありません。そっと心のゴミ箱に捨ててしまいましょう。
「◯◯すべき」を捨てると、仕事もうまくいく!
「◯◯すべき」を捨てる効果は、夫婦パートナーシップのみならず、あらゆる人間関係に有効です。親子や恋人や友達、そして、会社の上司や部下、同僚たちとの関係にも。
おもしろいもので、パートナー(夫や妻)に対する「◯◯すべき」を捨てるだけで、すべての人間関係が改善へと向かい、仕事の効率と生産性が大幅にアップします。なぜなら、夫婦は社会の最小単位だからです。最も強いパワーが働く夫婦関係で起こる現象は、必ず、(仕事を含む)それ以外の人間関係にも反映されます。加えて、「◯◯すべき」を捨てたその人自身の心にも平穏が訪れます。一石二鳥どころか、三鳥も四鳥も得られるでしょう。
「◯◯すべき」を捨てる効果がどれほどのものかは、実際にやってみた人だけが確かめることができます。論より証拠。まずは試しに、あなたがパートナーに対して持っている「◯◯すべき」を、何かひとつ捨ててみませんか? きっと驚くほどの効果を実感できるはずです。
著者:山口拓朗
『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』著者。
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)ほか著書多数。起業家の妻・山口朋子と「対等な夫婦パートナーシップで幸せな人生を作る方法」など夫婦関係の築き方をテーマにした講演も行っている。『世帯年収600万円でも諦めない! 夫婦で年収5000万円になる方法』(午堂登紀雄、秋竹朋子著)にも夫婦で取り上げられている。
山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/
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