人を動かしたいなら、「アイメッセージ」を使いこなせ

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第15回目は「人に動いてもらうための伝え方」についてです。f:id:k_kushida:20170428121611j:plain

「なんでこんなところに、この大事な書類を出しっぱなしにしてるんだ!お前は何を考えているんだ!この前も言ったばかりだろう!三歩歩いたら忘れてしまうニワトリと一緒だな!ほんとにお前は!」

このように、怒りをぶちまける人がいます。

皮肉を交えながら相手を侮辱して怒ると、効果的だと思うのか、こういった言い方をする人は多いです。上司や先輩、親など、人を育てようと思って熱心になるあまり、このような言い方になってしまうこともあるかもしれません。

でも、残念ながら、キツイ言い方をすればするほど、反感を買うだけで、効果がありません。

なぜあの人は、こんな怒り方をしてしまうのか、その理由を考えてみましょう。

たぶん多くの理由はこれです。怒鳴りまくっている上司も、自分の上司から怒鳴りまくられてきたからです。または、親から怒鳴られて育てられてきたのでしょう。いずれにしても、かわいそうな環境だった思われます。

「怒鳴らないと人が動いてくれない」

そう思い込んでいる人には、とても非効率なことをしている事に気づいていません。なぜなら人は、恐怖で動かされることを嫌うからです。

恐怖でコントロールしようとしても反感を買うだけですし、恐怖は与え続けると、どんどん慣れてしまって、さらに強い恐怖が必要になります。恐怖を与えずに、楽々相手に動いてもらえたら、それに越したことはありませんよね。

今回はその方法をお伝えしましょう。

要望を伝える2つの方法

自分の要求や要望を伝える方法は、2つあります。ユー(You)メッセージと、アイ(I)メッセージです。

「書類を出しっぱなしにしないで、しっかり保管しておいてくれ」

この指示は、ユーメッセージになっています。

主語が抜けているのでわかりにくいかもしれませんが、主語と述語で明確に言うと次のような命令形になっています。

「あなた(ユー)は、書類をしっかり保管しなさい」

ユーメッセージは、ダイレクトに命令をしているように伝わってしまいます。人はコントロールされることが嫌いです。命令されると、反論したくなります。

「今、大事な仕事を抱えていて、それどころじゃないんですよ!」とキレてしまう人もいるかもしれません。

これを読んでいる人で、特に体育会系の会社や、中年管理職以上だと、

「上司と部下や、先輩後輩の関係なら、命令するのは当然だろ!」

と思う人も多いかもしれません。

でも、人たらしと言われる人たちは、人に気持ちよく動いてもらうのがうまいです。

そこで、人に要望や要求を伝えるときは、基本的にアイメッセージを使うことをおすすめします。

「書類を出しっぱなしにしないで、しっかり保管しておいてくれると、私は安心できるんだよな」

主語を補完すると、次のような文章になります。

「私は安心できるんだよ。あなたが書類をしっかり保管してくれると」

「私(アイ)」を主語にして、メッセージを伝えるから、アイメッセージです。

さきほどの命令形と比べて、どう感じられましたか?

この言い方だと、あくまで自分の気持ちや感情を述べているに過ぎません。相手を責めることもありません。

相手にしてみれば、命令されているわけではないので、選択権が残されています。そのまま、書類を放っといてもいいし、片付けてもいいし、相手次第です。

でも多くの人は、命令されたわけではないのに、片付けようという気が起きます。

ぶっきらぼうな人がやりがちな、ユーメッセージ

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私のセミナー会社に、ユーメッセージで問い合わせをしてくる人がたまにいます。

「このセミナーには特典がつくと書かれていますが、これとアレを組み合わせたらどうなりますか?詳しく連絡してください」

こういったメールを読むと、「なんだか気が強くて、イケイケな感じの人なんだろうな」と思ってしまうのですが、実際にセミナーを受講されたときに話をしてみると、とても親しみやすい人だったりします。ただ単に、ストレートに要望を伝えているだけなのですが、ぶっきらぼうな印象がしてしまうのです。

「このセミナーには特典がつくと書かれていますが、これとアレを組み合わせたらどうなりますか?詳しく連絡してください」

このユーメッセージを、アイメッセージに変えると、次のようになります。

「このセミナーには特典がつくと書かれていますが、これとアレを組み合わせたらどうなりますでしょうか?詳しく教えていただけるとうれしいです」

家庭でも同じです。

「ねえ、ちょっとゴミを捨ててきて」

このユーメッセージをアイメッセージに変換してみると、

「ねえ、ちょっとゴミを捨ててきてくれると、すごく助かるんだけど?」

このように、「あなたは◯◯をしなさい」というユーメッセージを言いたくなったら、ちょっと踏ん張って、

「私はうれしい」

「私は助かる」

「私は安心できる」

という自分の感情を言い表すアイメッセージに変換しましょう。

自分の感情を言い表しているだけなのに、相手はなぜか自ら、あなたの要望を叶えてあげたくなってしまうのです。命令されて動くよりも、自分の意志で動いてもらうほうがいいのは当然ですね。アイメッセージを使いこなせると、あなたの世界は大きく変わります。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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