英検ホームページから読み解く、2020年に向けた英語教育大変革の波
文部科学省の5つの提言/実施計画と英検の位置づけ
英検のホームページを見ると、「文部科学省後援」という項目があり、「実用英語の力を育てる7つの級を設定。
学習進度やレベルに応じた学習目標として最適です」と書いてあります。
これは、英検が、文部科学省としっかりとタイアップして活動していることを示しています。
ですから、英検の動きを見ていると、国の英語教育の方向がはっきりと読み取れるのです。
さらに、ここには「団体・学校関係者の方」という項目があり、その中に、二つの「英検助成」があります。
①「教員専用特別検定料制度」:公益財団法人 日本英語検定協会は、「英語力向上の
ための5つの提言」を受けた文部科学省の取り組みを全面的に支援し、教員全ての方を対象に(※)実用英語技能検定(英検)を教員特別検定料にて提供します。」
②「小学校教員対象 英検検定料助成」:「公益財団法人 日本英語検定協会は、文部科学省が発表した「グローバル化に対応した英語教育実施計画」に基づき、その施策に協力する形で、小学校教員を対象に、実用英語技能検定(英検)を教員特別検定料にてご提供します。」
これを読むと、文部科学省は「英語力向上のための5つの提言」、「グローバル化に対応した英語教育実施計画」を作成し、2020年を展望した壮大な計画を進めていることがわかります。
この二つは、文部科学省のホームページで閲覧可能ですが、これを読むと、学校現場で起こっている事柄はその計画が着実に実行されていることの表れだということがわかります。
英検ホームページ-優遇策が得られるメリットあり
英検ホームページは、さらに、英検に取り組むメリットをこのように協調しています。
「英語力の習得のみならず、入試における学科試験免除、入学金・授業料免除や英語科目の単位認定など、 学校によってさまざまな優遇措置を受けられるメリットがあります。
自分の夢や進学目標に一歩近づくことができるこの制度を、ぜひ活用してください!使える英語の4技能が評価され、英検取得者は多くの高校・大学の入学試験や単位認定で優遇されています。」
具体例として挙げているのは、①入試・入学前に対する優遇:試験免除、判定優遇、点数加点、出願優遇、出願条件、その他、②入学後にメリットがある優遇;授業料など、費用免除、奨学金、給付金など、単位認定、その他
今回の記事にある、小学校の教員採用に関して英検の成績を加点するなどの教育委員会による優遇策は、これの延長と言ってよく、自然な流れです。
いずれ、すべての教育委員会でこのような優遇策が採用され、さらに、質の高い教員を採用するために、優遇策の競争が起こる可能性も十分あると思います。
2020年全面導入の次期学習指導要領で小3から始まる英語教育
文部科学省は、今年1月30日に、2020年度に導入予定の次期学習指導要領に基づき、小学3年生から始まる英語教育について、小3~小6の年間指導計画素案と教材サンプルを専門家会議に示しました。
高学年では日本文化やオリンピック、地域の将来などを題材に英語で話す取り組みをします。
児童に英語の特徴を知ってもらい、自然な形で中学校の英語学習につなげることを目指す方向です。
2011年度に小学校で全面実施された現行学習指導要領のもと、現在は小5、小6で週1コマの「外国語活動」が必修となっていますが、次期指導要領では英語が5年生から必修科目になります。
全面導入は2020年度ですが、これの実現に向けて、専門家会議は次期指導要領素案などを大筋で了承し、教材の配布も始まります。
中学・高校英語教師のレベルの低さが問題に
文部科学省は、これまでに、各県別に中学・高校の英語教師の英語レベルの実態を調査し、その実態を社会に「ばらして」きました。
昨年のデータでは、英検準1級レベルであることを証明できる中学校英語教員は4人に一人、高校でも二人に一人という「恐るべき」実態でした。
私は、英検1級を中心に、スカイプを使って合格のためのマンツーマン指導をしていますが、一昨年あたりから、中学・高校の先生の受講者が増えてきました。
まず準1級合格という人が大半です。
因みに、1級レベルの中学・高校の英語教師は5%程度だと認識しています。
その環境下、グローバル化の進展で「帰国子女」が激増し、帰国してすぐに英検1級や準1級に合格していきます。
中学1、2年の生徒のほうが先生よりも英語ができるケースが増えてきているのです。
こうした流れの中で、今度は英語教育が小学校から始まることになり、文科省の求めに応じることができない現場が右往左往しているのが実態です。
ですから、対応できる先生が優遇されるのは当たり前であり、記事にある優遇策は当然の流れであり、この動きは加速化するはずです。
英検リニューアル
この大変革をしっかりとサポートしていく役割を担っているのが英検であり、2016年度から導入された試験形式の大きな変更はその流れに正しく対応したものです。
(山中 昇/英語講師(単なる英会話講師ではありません))
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