津波で汚損した写真を『Photoshop』で修復するボランティアプロジェクトがその成果と作業マニュアルを発表

津波で汚損した写真を『Photoshop』で修復するボランティアプロジェクトがその成果と作業マニュアルを発表

東北福祉大学、神戸学院大学、工学院大学の3大学が共同で設立した社会貢献学会は、東日本大震災による津波で汚損した写真を『Photoshop』で修復するボランティアプロジェクトを2011年4月に立ち上げ、活動を続けています。このプロジェクト“あなたの思い出まもり隊”が活動成果と作業マニュアルを発表するプレス向け発表会を工学院大学で開催しました。

プロジェクトの成果

“あなたの思い出まもり隊”は、被災者から写真やアルバムを受け取り、泥を洗い落としてからスキャン。スキャンデータを『Photoshop』で修復後、画像データや印刷した写真を返送するという活動を展開しています。工学院大学の実績では、これまでに延べ562人のボランティアが参加、約350名の依頼者の写真を1043枚修復したとのこと。

作成されたマニュアル

同プロジェクトは当初、手探りで作業工程を確立してきましたが、写真やアルバムの受け取りから洗浄、スキャン、修復、返送までの一連の作業をマニュアル化。ほかの団体や地域で同様の活動ができるようにマニュアルを公開することを発表しました。マニュアルは社会貢献学会の事務局(電話:078-974-4569)が問い合わせを受け付け、同プロジェクトとの連携が可能な団体に配布する予定です。

修復前 修復後

発表会では、『Photoshop』による写真の修復作業の一例が紹介されました。ひとつは、写真が周辺部から濡れて損傷したもの。細かい汚れは『ダスト&スクラッチ』ツールで除き、写真の一部のパターンを『コピースタンプ』ツールでコピーして塗った後、損傷のひどい周辺部をトリミングして仕上げます。もうひとつの例は、特定の色のインクがにじんでしまったもの。こちらは『チャンネルミキサー』を利用して色を抜き、インクじみで隠れた部分を別途着色して仕上げます。もう一例は、損傷したモノクロ写真。こちらは『ダスト&スクラッチ』ツールにより汚れを除去し、背景のパターンを合成する『コンテンツに応じた塗り』や『コピースタンプ』ツールで損傷部分を塗って仕上げます。

工学院大学内にある写真修復の作業室

発表会では、工学院大学内にある写真修復の作業室を見学することができました。

被災者から送られたアルバム

被災者から送られたアルバムは水に濡れたもの、泥で汚れたものなど、津波の被害を生々しく伝えるものばかり。思い出の写真を元通りに戻したい、という依頼者の思いが伝わってきます。

写真の分類と洗浄

アルバムの写真は修復可能な度合いに応じて分類、整理され、水洗い可能なものは洗浄されます。

写真のスキャン

整理された写真はスキャナでデータ化。写真単体だけでなく、アルバムからはがせない写真はアルバムに収めたままスキャンすることもあるそうです。

『Photoshop』で修復 ペンタブレットを使う作業者も

スキャンしたデータは『Photoshop』上で修復されていきます。ソフトウェアの提供などで同プロジェクトを支援するアドビ システムズによると、同社は『Photoshop』の機能紹介はしたものの、修復に使う機能やツールはボランティアスタッフが経験によりノウハウを蓄積してきたとのこと。マニュアル化によるスキルの平準化や作業効率の向上が期待されます。

同プロジェクトは、アドビ システムズのほか、セイコーエプソン、日本ヒューレット・パッカード、ニコン、ナカバヤシ、リコー、コンプラス、アマナグループ、日本写真エージェンシー協会、ソニーが活動を支援しています。

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shnsk

宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

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