【ここは法廷だゼ!】女性被告人の公務執行妨害裁判 その時市役所で何が……?

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市役所

ある日の某地裁、某支部。

法廷の前に貼られた開廷表に書いてあったのは「罪名 公務執行妨害」そして、被告人名は女性。ゆるふわ系女子っぽい、かわいい名前だ。そんな女子が公務執行妨害……? どういう状況!? 気になり、思わず中へ。

被告人席に腰かけていたのは、上体を反らし、足を広げて腕を組んで座る、中年女性。目つきは鋭く、法廷に入ってくる傍聴人をなめ回すように見つめる。開廷表を見間違えたのかと思った。どう見ても、ゆるふわ系ではない。

公務執行妨害裁判では、警察の職務質問でのトラブルなんかの事例をよく見かけるが、これは、市役所職員が被害者だった。被害男性の証人尋問によれば、いきさつはこんな感じである。

保険証を被告人宅へ送付したが、なんらかの事情で戻ってきた。そのため、直接市役所へ取りにきてもらうよう電話で要請。被告人は渋々、市役所へ。

「取りにきてやったぞ!」

こう大声で呼ぶ被告人に対して、被害男性とその部下が対応したが、開口一番、「市役所の人間は、昔、Kとかにも言ってやった」と過去に同じ市役所で別の職員と何らかのトラブルがあったことを匂わせた。そして受け取り書類になつ印するため、被害男性が被告人の印鑑を手に取って渡そうとした際は「お前、なんで人のモノ取る! お前も取られたら嫌だろう!」と、泥棒と勘違いされるハメに。

なんとか受け渡しが終わり、被告人が立ち去ろうとしたそのとき。

「わざわざ取りにきてやったんだから、ご苦労様と言え!」

被害男性はまた怒鳴りつけられ、慌てて「ありがとうございました」とお辞儀。頭を上げたその時、保険証入りの封筒を被告人から目の付近に叩き付けられた。下から上へ、縦に振り上げられたという。

被害男性は部下に110番通報を要請し、追いかける。「今のはちょっとマズいです。待って下さい」と言うも、被告人は完全に無視してスタスタと外へ。たまたま通りかかったパトカーに状況を告げ、現行犯逮捕となった。

弁護人は「被告人は腰が痛いので取りに行くのが辛かった」ということと「封筒は当たっただけ。腰が痛いのでふらついた」という筋立てで被害男性に尋問したが「市役所から出て歩く時も足腰はちゃんとしていた」「私の顔の位置は被告人から見て、かなり高い位置にあり、ふらついて当たるのは有り得ない」と反論。どう見ても被告人が劣勢だ。

苦し紛れか、被害男性が印鑑を手渡したことについて、

「被告人の許可を得てないのに勝手に手に取ったんですよね! 他人のモノ、無断で取ったんですよね! そういうこと、何て言うか知ってます? 小学校の頃から言われてると思うんだけど、分かんない? ……窃盗ですよねっ!」

と、若い弁護人がニヤつきながら、明らかに年上の被害男性をタメ口まじりに泥棒呼ばわりする一幕も。いい大人が無理筋を通そうとする場面には哀愁がある。弁護人というのも大変だ。

ちなみに公務執行妨害は刑法に「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められている。果たして過失と認められるか、故意だと認定されるのか。

画像引用元:flickr from YAHOO
http://www.flickr.com/photos/kynbit/440642221/

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高橋 ユキ

傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。

ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/

TwitterID: tk84yuki

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