ふんどし姿の男たちが入り乱れる蘇民祭 ”密着”レポート

access_time create folder生活・趣味
暗がりのなかに男の裸と角燈が浮かび上がる

 ふんどし姿の男たちが小さな麻袋をめぐって入り乱れる祭に、記者が文字通り”密着”取材を敢行した。ニコニコニュースの記者が参加したのは、2012年1月29日の夜から岩手県奥州市の黒石寺で行われた「黒石寺蘇民祭」。1000年以上の歴史を持つ、男たちの裸祭だ。

・[ニコニコ生放送] ニコ生・奇祭取材隊 『蘇民祭​ in 岩手・黒石寺』 [録​画放送] – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv79301632?po=news&ref=news

■気温-5℃のなか、冷水を浴びる

 祭の序章は「裸参り」と呼ばれる儀式だ。火の灯った角燈を持ち、川で身を清めたのち、「ジャッソー、ジョヤサ」の掛け声とともに本堂、妙見堂を三巡する。「裸参り」の始まる午後10時ごろの気温は、手元の気温計でマイナス5℃。開始直前、ふんどし姿になった筆者は「ニコニコ動画」と描かれた角燈を持って控え室から飛び出すと、「裸参り」に向かう男たちに揉まれながら、川へと向かった。

裸と裸のぶつかり合いは朝まで続く

 いよいよ入水である。氷が張っている部分もある川の周りには、男たちが水を浴びる様子をシャッターに収めようとするカメラマンや、見物客たちが押し寄せていた。先頭の男性が川に入り、木桶で頭から荒々しく水をかぶると、矢継ぎ早にふんどし姿の男たちが川へと飛び込んでいく。「正気の沙汰とは思えない」と感じつつ、筆者も見よう見真似で白い湯気の立ちのぼる川に入ってみた。

 感想。これが意外と冷たくないのだ。いや、本当はめちゃくちゃ冷たいのだろうが、場の雰囲気のためか、そうは感じなかった。むしろ、勢い良く冷水をかぶったことで「やったった感」のほうが強かった。だが、次の人に代わろうと川から上がった瞬間、体に異変を感じた。頭がクラクラして足元がおぼつかないのだ。例えるなら、銭湯でサウナと水風呂を何度も交互に入った時の感覚に似ている。

 筆者は半分気を失いながらも坂道をよじ登り、列に戻って寺の境内を一周。水浴びからある程度時間が経つと、あまりの寒さのため、互いに身を寄せ大きな掛け声をあげ続けなければ、正気を保てない。それが2周、3周と続く。3周目には隣で入水していた男性から弱音が漏れた。その男性は当初、うなるような大きな声で「ジャッソー、ジョヤサ」と叫んでいたが、最後に川から上がった時にはすっかり声が枯れていた。本堂に至る雪道で、男性が唾を吐いたときには、雪の一部が赤く染まった。

 「裸参り」が終わると、控え室に戻る。控え室には藁が敷かれ、ところどころに用意された焚き火の前で、参加者たちがふんどしを乾かしたり、酒を飲んだりする。筆者は取材に同行したレポーターから差し入れられた温かい蕎麦を食べ、感覚を失った足を火にあてながら、「さっき自分がしていたのは何だったのだろう」と考えたが、よく思い出せなかった。一息つくと、持って帰ってきた角燈を見ると別人のものと入れ替わっていた。それだけ現場は混沌としたものだったと言えるだろう。

■小さな袋の「争奪戦」で祭は最高潮に

晴れ晴れとした表情で拳を握るニコニコニュース記者

 その後、祭では「井」型に組まれた木の上で火の粉を浴びる「柴燈木登り(ひたきのぼり)」などが行われた。そうして体力を回復させる時間のないまま、クライマックスともいえる「蘇民袋争奪戦」が始まる30日午前5時が近づいていく。

 「蘇民袋争奪戦」を前に、疲れた体を休めようとしていた午前4時過ぎ。呼ばれて本堂に行くと、本堂の奥は大きな格子で閉ざされており、そこに男たちが登って「ジャッソー、ジョヤサ」と掛け声をあげていた。「ふんどしは登れ」。この儀式がどういうものなのか分からなかったが、「5分くらいで終わるだろう」と軽い気持ちで格子によじ登った。結局、そこには40分しがみ続けることになった。その間、7歳になる男児が大人に背負われる「鬼子登り」という儀式が行われた。

 「鬼子」と呼ばれる子供たちが本堂の奥に入っていくと、小さな麻袋を奪い合う「蘇民袋争奪戦」が始まる。その時点で、筆者はまだ格子の上にいた。すでに腕の筋力は限界に達している上、出遅れてしまった感あったが、それでも壮絶な闘いに加わった。争奪戦では、最終的に袋の「首」にあたる部分を握っていた人間が勝利者となる。袋の中には木で作られた護符が数十個入っているのだが、必死に食らいついた甲斐があって、筆者もそれを一つ手に入れることができた。

 履いていた足袋がボロボロになるほど熾烈を極めた争奪戦は、午前7時ごろ、境内から1キロほどの場所にある田んぼの中で決着した。白み始めた空の色と同様、真っ白になった頭の中で、筆者は「ジャッソー、ジョヤサ」の掛け声ついて、ひとつ気が付いた。ふんどしの男たちと押し合いの中、皆で掛け声を上げ続けなければ、男たちの「喘ぎ声」だけが、周囲に響き渡るということを。

ニコ生・奇祭取材隊 『蘇民祭 in 岩手・黒石寺』 [録画放送]

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] ニコ生・奇祭取材隊 『蘇民祭​ in 岩手・黒石寺』 [録​画放送] – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv79301632?po=news&ref=news

(山下真史)

【関連記事】
「胸毛が不快・・・」男気あふれるポスターで話題になった蘇民祭にニコ生が潜入
「女性リードの性描写で青少年にホモ的傾向」 ”有害図書”審議で委員発言
「いま気にかかっているのは少年愛のこと」ゲイ雑誌『薔薇族』の初代編集長
「身体は女。性自認は男です」性的マイノリティー成人式”新成人の言葉”全文
マツコ・デラックス、石原都知事への怒りで体調回復「”こいつ”が元気なうちは闘いつづける」

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. ふんどし姿の男たちが入り乱れる蘇民祭 ”密着”レポート
access_time create folder生活・趣味
local_offer
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。