△特集:Shuya Nakano Interview

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女王蜂をはじめとするミュージシャンや俳優のポートレイトで注目される写真家・中野修也。その一方で彼は、登山をライフワークとして登頂した山の写真を発表している。作品とともに、山の魅力について語ってもらった。

元々アウトドアには興味があって。でも山登りとなると機材も必要ですし、きっかけがなかったので、せいぜい父親と地元の山に登ったことくらいしかなかったんです。それが2010年に、写真の師匠である藤代冥砂さんと一緒にいきなり南アルプスの甲斐駒ケ岳という標高約3000メートル山に登ることになって。本格的な山は空気が澄んでいて、見える光景も全然違うし、視覚が広角になって広がる感覚もおもしろかった。山登りの印象が変わりましたね。

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それがきっかけになり、スタジオマン時代の仲間などと登るようになり、その頻度があがるにつれて機材も揃い、雪山にも行くようになって。雪山は宇宙っぽいんです。場所もどこかわからなくなるし、空気感が掴めない。プリミティヴな視覚体験をできるんです。

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甲斐駒ケ岳は花崗岩だから上が真っ白で、北アルプスの燕岳はシャチみたいな岩肌でキュッと上がっててシャープだったりという、山毎の愛嬌的なものもあります。

頂点からの景色は最高です。登山はゴールが明確で、頂点をとるというクライマックスがある。料理も同じで、フィニッシュがあって、それに向かって準備しますよね。一身になにかに集中する、ゴールが明確であるというのは精神的にも良い気がします。トップをとらない登り方もあるし、悪天候では撤退する判断も必要ですけど、僕はできれば頂点を制服したい派です。

山を登ると富士山が見えるんですよ。最高峰だし、独立峰で目立つ形をしていて、ピューッと尖っているあの姿が見えるとテンションが上がります。東京タワーみたい。象徴になりやすい形ですよね。

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僕たちは食材や酒類をしっかり担いで持っていって、料理をするんですね。テントでのんびりしたりするのも楽しい。他にやることの選択肢がなくなるから、時間の使い方もシンプルになる。そういう時間は貴重だなと思います。
カロリーを非常に消費するので食べながら登るんですが、体内のエネルギーが一巡するような感覚があるのもいい。
シンプルに山登りは気持ちがいい。

でも怖い思いをしたこともあります。ひとりで岩手山に登っていて、天気が悪かったせいか誰もいなくて。大きな岩がそそり立っているような暗いところを歩いていたんですが、ふと帰れないかもしれないと思いました。岩から人じゃないものが出てくるんじゃないかと怖くなったんです。実際何かを見たわけではないけど、普段より感覚も鋭くなって、野生の勘が戻っていて、なにか身の危険を感じたんだと思います。

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昔から山は崇拝の対象であり、そういう恐れを感じさせる存在でもありますよね。剣岳という登頂が難しい山があるんですが、1900年頃に測量隊が初めて山に入って。そしたらそこに剣があって行者が修行をした跡があったんです。奈良の吉野にある大峰山には女人禁制の結界があって、登るときにも白装束を着て、修行の体で登るんです。信仰上、人類が登っては行けないとされている未踏の山もあります。祠なども多いですし、山岳信仰は昔からあるんだなあと驚きました。

ヴィジュアルに魅せられたり、精神的なフォードバックもありますが、もうひとつ山登りを本格的に始めたきっかけとしては、今後日本も震災や天変地異が予測される中でアウトドア技術がほしいと思ったこと。まだ家庭はないけど、これから持つことになったら、藤代さんから学んだどこででもお湯を沸かせる装備を持つ大事さや水を確保することなど生きる術を伝えたいです。

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interview&edit Ryoko Kuwahara

Shuya Nakano/中野修也
1982年、滋賀県長浜市生まれ。イイノメディアプロを経て、2010年藤代冥砂氏に師事。2012年独立。http://www.shuyanakano.com

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