△特集:In Case Of Sharar Lazima

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NeoL Magazine JP | Edit: Ryoko Kuwahara | Photo Edit : Ryoko Kuwahara  |Photography: Shuya Nakano | Hair&Make-up: mahiro | Model: Sharar Lazima |

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10歳から日本で育ったバングラディシュ人のShararは、自分をアイディンティティがないマーブルな存在だと言う。ゆえに、彼女の中に二項対立は存在しない。常に第三者としての目線をもつ彼女の内面を、△を用いたヴィジュアルで表現した。

私はハーフではなく、純粋なバングラディシュ人です。父が大学の教授で、広島に勉強に来ていた時に生まれました。1歳にもならないうちにバングラディシュに移りましたが、父が2歳のときに亡くなり、状況も不安定だったので、7歳のときにITの企業で働いている母が日本へ飛び、準備が整った3年後くらいに私も日本へ呼ばれました。

そこでいきなり公立の学校に入ったんです。母が日本語学校の存在を知らなくて、まったく日本語を話せないのにいきなり飛び込むことに(笑)。でもある日の給食の時に困ったことがあって、これは話せないといけないと意識したら、その後から急速に話せるようになりました。

日本に初めて来たときから、自分が異質であるというのが当たり前でした。思春期は人と違うことがコンプレックスで、『なんで私はあれができないんだろう』というもどかしさがあると思うんですが、私はそれが一切なかった。元から自分が違うものだと思っていると比べようともしないんです。人と比較する意識が極端に低いので、野心もあまりない。

周りも私があまりに異質な存在だったので、どこから触れていいかわからない。宇宙人がいじめられないのと同じで、いじめられることもなく過ごしました。
日本語を話せるようになって友だちもできましたが、中学まではまったく恋愛がなかった。いいヤツだとしても異質な人間を恋愛対象として見れない気持ちもわかるからショックでもなく、自分も特別に好きな人もいなかったので恋愛なしで楽しく過ごしていました。高校時代は学校の外でも遊んでいて、同世代の枠から離れることでそれなりに恋愛をすることができました。でも「付き合う」いう意味がよくわからなかったんです。みんなスケジュールをこなすように同じようなことをするんですよ。制服ディズニーして、一緒に帰って、大好き、別れた、それで3日後には次の人と付き合ってーー。
その頃、音楽が好きでクラブにも行って、付き合ってる人もいて、いわゆる「楽しい」と言われることをしていたのに、突然、自分が本当に楽しいのかわからなくなったんです。
自分が本当に好きなことをやろうと探し出したけど、それさえも分からない。情報社会だから楽しそうなことをすぐに見つけられるけど、次から次に消化しないままにやっているのが問題なんじゃないかと思い始めて。
じゃあ、非消費的に生きたいようと。それが心の純度を守ることになる。
私は小さい頃から妄想癖がすごくて、その映像の具現化をするため漠然となにかを作る人になりたいと思っていました。そのクリエイティヴィティのためには心の純度を守らなくてはいけない。純度は「水の塊」のようなイメージで、干涸びたら終わりだと8歳の頃から思って生きてきました。みんなが非消費的になる必要はないけど、自分は楽しいというのがなにかすらわからないくらい感受性が狂ってしまったわけだから消費がフィットしない人間。情報過多の社会で生きていても、ひとつひとつを咀嚼して自分のものにする。量より質をとる。そうしていたら好きなものも見えてきて、好きな人にも出会え、漠然と食べることをやめて欲するものだけにしたら痩せてダイエットにもなりました(笑)。これは自分の人生の中でも大きな転機だったと思います。

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本当に日本は国の中に全てのものがありますよね。だから比較できる。例えばバングラディシュでは一般家庭にヒーターなんてないから、それが当然だと受け入れているし、それで幸せに暮らしているんです。小学校に行けないのが当然という国もたくさんあります。日本のように、貧富もあれば、物質もあり、ネットで情報に辿り着くことができるインテリジェンスや環境があるというのはすごいことなんです。

比較対象があると二項対立になりがちだけど、私はそもそも二項対立になるにしてもどちらに土台を置けばいいかもわからないようなマーブルな存在。アイデンティティがない。血はバングラディシュだけど、教育や味覚は日本と混じっていて精神的にも近いからどっちという話ではない。

完全に外人である私が生まれたのは、第三国であるドイツに行ったときです。二つの根元があるから、その国を二項対立じゃない目線で見れるという利点に気付きました。そして自分がよくわからないものであるという証明もされました。日本にいてよく見られるのは当たり前のことだったんですが、ドイツでも電車ですごく見られて。『顔はインド系なのに、しゃべり方もファッションも雰囲気も違っていて何者かわからなくてビックリした』と話しかけられたんです。一緒にいた従兄弟が、ドイツの人が話しかけてくるなんてなかなかないことだから、よほどインパクトがあったんだろうと驚いていました。たくさんの人種がいるロンドンでも、ルックスで振り返られることはないけれど、似たような経験があります。

マーブルであるというのは自分の特徴。完全な外国人でありながら、日本で育ったと言う人はたくさんいると思うんですけど、その違和感を表現した人を私は知らない。だから、なにか形態はわからないけどこれを表現したくて。
いまの26歳くらいからハーフがまわりにいるという環境が普通になってきて、私の世代の21歳くらいの子たちの中では完全な外国人が少ないですが、今後私みたいな子は増えてきていくように感じます。そして私はそのボーダーにいる。
これからそういう「違和感がある人間」が増える中で、そのヴィジョンを表現する先駆けになりたいと思っています。

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photo Shuya Nakano
hair&make-up mahiro
model Sharar Lazima
interview & edit Ryoko Kuwahara
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