「新しい働き方」を実現するために、解決したい4つのこと
暑い季節は涼しいところへ、寒い季節は暖かいところへ。快適な環境を求めて移動しながら、どこでも同じように働けることをめざす「渡り鳥プロジェクト」。
前回は計15泊した沖縄ライフをレポートしましたが、あまりに充実した日々だったため、都内に戻った今でも心は沖縄に滞在しています。2歳の息子も完全に沖縄に染まってしまい、ご飯を食べては「美味しーサー」と笑うのですが、僕も調子に乗って「また沖縄に行こうね」ではなく「早く沖縄に帰ろうね」と語りかける始末。沖縄に詳しい友人が「一度行ったら八重山病(やえやまやまい = 沖縄を想う”恋の病”のようなもの)になりますよ」と忠告してくれていましたが、本当にそうなってしまいました。
とはいえ、このたびの「沖縄渡り鳥」から少し時間が経過して、見えてきた課題がいくつかあります。今後も今いる会社や自宅を後にして、沖縄に限らずどこか別の拠点に滞在しながら働くことになったとき、改善したい課題が見えてきました。今回はそんなお話をさせてください。
最近、ニュースでも「働き方改革」という言葉が盛んに叫ばれ、色んな会社が、色んな働き方を模索している昨今、快適な環境を求めて移動する「渡り鳥」という働き方もまたひとつのヒントになれば幸いです。
1. 幼い子供はどうするんだ問題
初めての試みだった今回の「沖縄渡り鳥」では、幼い子供も同行させました。夫婦ふたりで会社を経営し、二人三脚で事業に取り組んでいるという事情から、どちらかが自宅に残って休むという選択はなく、むしろ子供をそばに置きながらみんなで合宿みたいに働くことができればと楽観していました。
これが、甘かった。
普段、都内の事務所で働いているときは保育園に子供を預かってもらっています。だから日中は仕事に没頭できる環境をつくれているのですが、やはり子供がそばにいると目が離せず、仕事になりませんでした。わが子はひとり遊びが上手で、オモチャで遊んだりiPadを自分で操作してYouTubeを見たりもできるのですが、とはいえ子供。飽きるのも早いですからね。
▲ 結局ビーチに連れていってあげたりして滞在先の保育施設を利用することも考えました。が、今回は子供を預けない選択をしました。探せば託児所もあったのですが、どうしても「せっかく沖縄に連れてきたんだから」と考えてしまうんですね。ただでさえ親の都合で不慣れな土地に連れてきたのに、さらに親元から引き離してしまっては、なんだかかわいそうな気がして。
そこで子供を預けない代わりに、夫婦交代制で子守りをするはずだったのですが、僕の方が少々まとまった仕事を沖縄に持ち込んでしまったため、ほとんど妻に任せきりになってしまう羽目に。結果、彼女の方は腰を据えてじっくり仕事に取り組むことができませんでした。
子供と過ごす時間をとるか、家族のためにも仕事をとるか、家庭や状況次第で優先順位は変わりますから、この問題に正解はありません。ただ、託児所に預けないまでも、もう少し夫婦で子守りを分担できればよかったなあと反省しています。持ち込む仕事の量を事前に減らしておくことはできたかもしれません。
2.保育園はいつまで休めるのか問題
今回、2週間程度の滞在では「旅の延長」という感覚が拭えず、家族と過ごす時間を優先してしまいました。本来の趣旨である「どこでも同じように働く」ことが達成できたとは言えません。しかし、もっと滞在期間を延ばすことができれば非日常も日常になり、現地の託児所もためらいなく利用できるはず。それこそ渡り鳥のように「まるまるワンシーズン」滞在できれば、仕事と暮らしをバランスよく両立できるんだろうなと思いました。
ただ、現実問題として「まるまるワンシーズン」は難しいことも分かっています。
ありがたいことに今、わが子の預け先として都内の認可保育園に通わせてもらっているのですが、保育園という施設は大前提として「保育の必要性がある家庭」に対して門戸が開かれます。逆に言えば、長期的に休むなどしてその必要がないと見なされたら退園になってしまうんですよね(たとえば第二子出産のために育休を取ると第一子は退園となる自治体もあるようです)。その期間は自治体によってまちまちですが、おおよそ2か月がデッドライン。
個人的にも待機児童のあふれるこのご時世にせっかく入れた保育園を退園したくはないですから、幼い子供を連れてまるまるワンシーズン移動するのは、退園になってもいいという覚悟がなければ難しそうです。
人間社会はいろいろ難しいですねえ
3.膝の上でパソコンは使いにくいぞ問題
子育ての問題に比べればいささか地味な問題ですが、滞在中に気になったのが「膝の上のパソコンはぐらつく」ということ。地味ですが、小さくない問題です。
前回のレポートで「仕事はどこでもできる」「ビーチでだってパソコンひとつでできるんだ」と豪語したのですが、ちょっと言い過ぎたかな……と思っています。もちろんできないことはないですし、実際やっていたのですが、「どこでも」は語弊があるだろうと。たとえばビーチにはデスクがありませんから、必然的にパソコンを膝の上に乗せて作業していたわけですが、膝の上で操作すると結構ぐらつくんですよね。
少しの間メールチェックをするくらいなら気になりませんが、たとえば長文を書くとか、プログラミングをするには安定性に欠けます。デスクに相当するものを持ち歩くか、膝の上でパソコンを固定できる台がなければパフォーマンスが最大化されないということに、ビーチに行ってみて気がつきました。やってみないと分からないこともあるものです。
▲ 公園にテーブルがあると助かるのですが……一時期「ノマド」という言葉が流行りましたよね。遊牧民のごとくパソコンひとつで移動する新しい働き方として。ところが、最近めっきり聞かなくなりました。セキュリティーの観点や実力のあるフリーランスでしか継続できないなどの諸問題もあったでしょうが、個人的には「膝の上ではパソコンを扱いにくい」点も少なからずあったように思います。
デスクのないビーチや公園では仕事に集中するのが難しい。だからカフェやファミレスを利用して職場代わりにする。でも長時間滞在するのは申し訳ない。複数のカフェを行き来するのもつらい。そうしてノマドワークはそれほどラクじゃないと気づいた人も多いのではないでしょうか。
もちろん最近はコワーキングスペースが各地に増えたおかげで「カフェに滞在するのはいたたまれない」問題は改善されて、仕事をしやすい場所を求めて点々とする働き方は以前よりも実現しやすくなっています。いずれにしても結局は、パソコンを使うにはデスクが必要なんですよね。
そこで僕は今、「ビーチでもパソコンを使える台」を探しています。最近、アウトドアショップでロゴスのミニテーブルを見つけて試してみているのですが、なかなかいい感じです。サイズ的にも13インチのノートパソコンを乗せるのにちょうどいいですし、折りたたみ式かつ約410gと軽くて持ち運びしやすいところも気に入っています。何より脚を広げるように座るとテーブルの脚を左右につっぱって安定するんですね。
もともとはアウトドア用のミニテーブルですから、本来の使い方とはかけ離れていますし、たまたま僕の体のサイズにぴったりだっただけなのですが、ひとまずこれを公園などで使い続けてみようと思います。改良したい点が見つかれば自己流の「膝の上で固定できるテーブル」を開発したいです。
4.渡り鳥になるにはお金がかかるぞ問題
最後に身も蓋もないことを言いますが、渡り鳥になるにはやっぱり出費がかさみます。独身者が気ままに移動する分には友人宅を点々とするなど旅の経費を落とす工夫もできるでしょうが、家族連れでの渡り鳥はお金に余裕がないとできないことがはっきりしました。
幼子を抱える父としては妻子に対して万全のホスピタリティーを見せたいところですから、「貧乏旅行に付き合ってくれ」とは口が裂けても言えませんからね。それなりの生活を現地で送れなければ、家族を巻き込んだ「渡り鳥」にはなれません。
というわけで最近、妻と相談して「渡り鳥貯金」を始めました。いつも平日のランチは夫婦で外食したり、コンビニ弁当がほとんどだったのですが、できるだけ家で食べるようにして、これまで使っていた分のお金を貯金箱に入れていくことにしたのです。
▲ 地道にコツコツためていきますランチはひとり頭1,000円くらいでしたので、ふたりで2,000円。土日を除く5日間続けたら10,000円。1か月で40,000円、1年で480,000円たまる計算です(ほんまかいな)。先日実施した「沖縄15泊16日のプチ渡り鳥生活」の費用がおよそ330,000円でしたから、これだけあれば少なくとも夏か冬のどちらかは、そこそこの渡り鳥生活が送れるはずと期待しています。
渡り鳥資金をいくらか補助してくれる企業があったら今すぐにでもお勤めしたいところですが、ボーナスも自分で出すしかない自営業にはつらいところです。そんな企業、ご存知ないですか?
文:松岡厚志
1978年生まれ、ライター。デザイン会社「ハイモジモジ」代表。主な移動手段は電車と自転車。バイク並にタイヤが太い「FAT BIKE」で保育園の送り迎えを担当し、通りすがりの小学生に「タイヤでっか!」と後ろ指をさされる日々。
イラスト:Mazzo Kattusi
関連記事リンク(外部サイト)
人口減少はなぜ「マズイ」のか?(後編)――「人口減少問題」の本当の“問題”とは
人口減少はなぜ「マズイ」のか?(前編)――人口減少の原因とは
2/24スタート「プレミアムフライデー」とは?認知度と利用率はどのくらい?街の声を聞いた
ビジネスパーソンのための、キャリアとビジネスのニュース・コラムサイト。 キャリア構築やスキルアップに役立つコンテンツを配信中!ビジネスパーソンの成長を応援します。
ウェブサイト: http://next.rikunabi.com/journal/
TwitterID: rikunabinext
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。