マンション新築販売西高東低 近畿圏26年ぶりに逆転 そのワケは?
新築マンション販売戸数 近畿圏が首都圏を上回る
不動産経済研究所によると‘17年1月の近畿圏での新築マンション販売戸数が1396戸となり首都圏の販売戸数1384戸を上回りました。
近畿圏が首都圏を上回るのは’91年3月以来26年ぶりとのことです。
首都圏の販売数鈍化の要因の一つは、マンション工事費の高騰とバブル期を上回る金融機関貸出資金の不動産市場への流入によって販売価格(‘16年販売平均額5490万円)が高止まりしていることが挙げられます。
一般サラリーマンの平均年収が420万円(‘15年国税庁統計調査)で年収の約13倍となっていることからも新築マンションに手を出しづらくなっていることが窺えます。
一方、近畿圏の’16年の平均価格は3919万円と首都圏の7割の水準となっており手が届きやすいことが堅調な販売戸数を維持している要因と思われます。
新築マンションの販売数においては「西高東低」となったと言えますが首都圏の住宅市場には新築から中古へと需要が移行しているという新たな局面が展開し始めています。
首都圏の住宅市場は新築から中古へ
首都圏の‘16年の中古マンションの成約数は3万7189件(東日本不動産流通機構調べ)で新築分譲マンションの年間供給戸数3万5772戸(不動産経済研究所調べ)を上回りました。
これは不動産業界では衝撃的な数字で国策による中古流通市場活性化政策が形となって現れ始めたものと考えられます。
新築に偏重してきた住宅政策と人口減少によって空き家が増加し社会問題となっていることに歯止めをかけようと官民での動きが活発化し、それが首都圏で数字となって現れ始めたものです。
かつての中古マンションは「安かろう悪かろう」というイメージでしたが、現在の中古マンションはホームインスペクション(住宅診断)の普及、リノベーション技術とバリューの向上、都心回帰による立地の見直し、そして価格面での取得の容易さから40歳未満の購入者層にとって魅力的な物件となってきています。
これからの住宅政策は住宅流通市場を欧米のようなストック市場に移行させ、ライフスタイルの変化に応じて中古住宅を買い替えるという方向に転換していくことを目指しています。
その点からすると首都圏のマンション市場は先進的であり近畿圏の’16年の中古マンション成約数が1万2336件(近畿不動産流通機構調べ)と首都圏の3分の1程度であることから「東高西低」になっていると言えます。
経済動向の指標の一つとなっている「新設住宅着工戸数」が将来的にその指標から外され、代わりに「リフォーム・リノベーション受注総額」や「中古住宅流通総数」が指標になる日がくるかもしれません。
(森田 伸幸/不動産コンサルタント)
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