ステマは、なぜ今になって騒がれているのか その起源
起源
まず、そもそもこの用語の起源は何か?ということですが、分かりませんでした。いきなりダメですね。
ネットスラングが発祥なのか、どこかの本で使われたのが最初なのか・・・。
一応、アメリカなどで使われる用語であることは確かで、”stealth marketing”で英語のページをググると168,000件ヒットします。よって、アメリカ辺りが起源なのは確かだと思います。和製英語じゃないということです。
ただ、英語版ウィキペディアを見ると、Undercover marketingというページに別名として記載があるだけで単独のページが無いので、用語としてはややマイナーなのかもしれません。この記事の履歴を見ると、2003年末に別名としてstealth marketingが出ているので、その頃にはすでにあった用語ということになります。ただ、この年以前にも使われていたのか、誰がこの用語を作りだしたのかは不明です。
「US(筆者注、アメリカのこと)では、2003年3月にドクターペッパー/セブンアップが発売したミルク飲料「Raging Cow」のブログキャンペーンで、10代のブロガー6人に対し、記事執筆依頼の事実を隠して、それぞれのブログで商品について取り上げるように指示したが、バレて同社のキャンペーンブログに批判のコメントやトラックバックが大量に寄せられた。」とのことなので、この事件がきっかけで生まれた用語かもしれません。
日本におけるステルスマーケティング
日本では、ステルスマーケティングという言葉そのものは2006年頃からある程度使われていたようです。
2006年ごろにピットクルーという会社がネット上で炎上の火消しをする仕事をしているということが話題となった影響で、2chなどで時々使われる用語になりました。
ちなみにこの頃、2chではピットクルーという言葉が結構流行りました。
しかし、ステルスマーケティングの方は特別に流行するということはなく、マーケティング手法の批判として普通に使われる用語の一つといった扱いでした。
この後も、ステルスマーケティング的な事件が起きたり、アフィリエイト付き2chブログ(以下、アフィブログ)などでステマ疑惑のある記事が出たときなど、言及されることは多い用語なのですが、一部の場所で流行ることはあっても、ネット全体で流行ることはあまりありませんでした。そもそも、別に流行語になる必然性は無いのも確かです。
ネットスラングに近い用語でしたが、2009年頃にはそれなりに公民権を得ました(それでも、ネット以外では殆ど使われていないようです)。
2012年の大流行の原因
しかし、この用語は2012年になって突如、ネット上で大流行を始めました。なぜでしょう。
ご存知の方も多いでしょうが、今年になって急に流行った理由は、明らかにシャフトステマ問題だろうと言えます。2012年1月1日、ニュース速報(嫌儲) 板にて、シャフトの公式ページにやらおん(アフィブログの一つ。アニメ記事専門のブログ)のアフィリエイトリンクがあり、シャフト公式からグッズを買うとなぜかアフィブログに収入が発生するという事態が発覚しました。
このアフィブログでは、しばしばシャフトの作品を持ち上げる割に他の作品は批判的に取り上げることが多いとされ、シャフトと繋がってステルスマーケティングを行なっているのではないかと言われて、ニュース速報板(以下、ニュー速)などで猛烈に盛り上がりました(パートスレが数十まで伸びました)。
この問題は、ステマ説とリンクミス説とが対立しましたが、シャフト公式はリンクミスと主張し、謝罪しました(この謝罪文がjpgだったのですが、jpgにすると検索避けできるため、謝罪としてはやや問題があると言われました)。このシャフトの謝罪に関するスレもパート数十まで伸びました。
この話題の中でのリンクミス説は、AmazonにログインしたPCで自動生成されるアドレスの一部のコードまでもが一致しているのはおかしいとして批判されました。
そして、大流行
さて、このシャフトステマ問題が盛り上がるなか、ニュー速ではステマという言葉を知らなかった人を中心にか、ステマステマと連呼する人たちのレスがどんどん増えてきました。
この勢いはどんどん増していき、さすがに不自然なくらいステマレスが多くなったため、「ステマ業者が、ステマ連呼によってみんなをうんざりさせて、ステマという言葉そのものを陳腐化させようとしてるのではないか」と言われましたが、それでも勢いが止まることはなく、ニュー速は大抵のスレがステマというレスで埋め尽くされるようになりました。
この頃から2chを飛び越えてステマという言葉が流行り始めました。
ニコニコニュースでは他にもいろいろ書いていますが、他の事象はこの騒動を加速に一役買う程度の影響はあっても、本質ではないと考えられます。
社会的な影響
その後、食べログでステマが発覚したこともあり、社会的にもある程度、ステマという用語は知られるようになりました。
ただし、テレビ、新聞などでは扱いは限定的で、産経新聞が紹介しネット流行語特集でテレビが取り上げたほかは、それほど使われていません。代わりに「やらせ」などと報道されています。
ただ、これは報道機関はまだステマという言葉が社会に知られてないから使わないという面もあるので、いずれはもっと使用されていくと思います。やらせという表現より適切ですしね。
特に、消費者庁がステルスマーケティングは景品表示法の不当表示に抵触する可能性があるとして、問題視しているため、法律などが動けば社会的認知も上昇するでしょう。
検索でステマについて調べると、ここ最近の流行について、食べログが原因かのような記述をしているブログなどが散見されます。いずれステルスマーケティングについての本なども出版されるでしょうが、この2012年の流行の起源がシャフトステマ騒動だとちゃんと記述してくれるのか、非常に気になります。
サクラとステマの違い
最後に、結局ステマってサクラと同じじゃないか、という意見に関して、私見を。
確かに広い意味ではサクラと似た言葉なのですが、サクラは新商品の行列などで使いますよね。「サクラの動員」などと言ったりしますが、「ステマの動員」とは言いがたいので、サクラは主に人に対して使い、ステマはネット上の書き込みに対して使う、ということになります。
ただし、ステマはマーケティングの手法ということで、サクラもステマの概念の一部といえます。
用語としてはネット上だとステマ、オフラインの出来事はサクラ、などと使い分けることになるのではないでしょうか。
思ったより長くなったので、こんなに読めるかという方は、興味ある場所だけでも読んでいただけると幸いです。
※この記事はGAGAZINEさんよりご寄稿いただいたものです
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