介護福祉士入学者定員割れ 介護職への就職希望者を増やすには?
介護福祉士入学者定員割れ
公益社団法人「日本介護福祉士養成施設協会」(東京)の調査において、2016年度の介護福祉士養成学校(専門学校や大学)の定員に対する入学者の割合が、約46%だったことがわかったそうです。(29年1月30日 YOMIURI ON LINE yomiDr.)
その原因として同ニュースでは、①重労働に見合わない低賃金②景気が回復傾向にあり、待遇の良い他職種に人財を奪われてしまう③資格取得に時間とお金を使っても、それが給与に反映されづらいなど、介護福祉士を取り巻く厳しい環境を挙げています。
こうした処遇面での厳しさが一番の理由なのは、間違いないでしょう。
社労士として多くの介護事業所とかかわる筆者も、人手不足で夜勤が増え体力的にきつい、資格を取っても手当や待遇にほとんど反映されないなどの状況を見聞きするたびに、労働環境の改善や賃上げは喫緊の課題だと、常に感じています。
これらの改善がなされるのは必須として、もう一つ入学者が減っている理由には、「介護福祉士(介護職)に親しみがなく、仕事やその役割のイメージを持ちにくい」ということもあるのではないでしょうか。
介護職への就職希望者が少ない理由
昨年開催された「日本の福祉現場力を高める研究大会~KAIGO NO MIRAI~」というイベントにおいて、介護福祉士を目指す学生がある発表を行いました。
「保育士との比較を通じた介護人材確保に関する考察」と題し、「同じ対人援助の仕事なのに、なぜ介護職は就職希望者が少ないのか」について、現役の高校生を対象に調査を行ったのです。
そしてその結果を、
・幼少期に保育士には直接世話をされるなどの体験があるのに、介護職とは接する機会がほとんどない。
・そのため、将来自分が就く仕事として介護職をイメージすることが難しく、それが介護人材の不足に繋がっているのではないか
と分析しています。
確かに、保育士と比べて(家族の介護をしている場合を除けば)私たちが介護福祉士と接する機会は格段に少なく、その仕事内容についても「お年寄りのお世話」程度の認識にとどまっている人が多いと思います。
「専門的知識と高いスキルで質の高い介護を提供する」という本来の役割について、理解が進んでいるとはいえません。
こうした状況で「介護職は3K労働」といったステレオタイプなイメージばかりが強調されれば、入学者および入学希望者が減っていくのは当然と言えます。
前述のように、彼らの労働環境や処遇面の改善は絶対条件です。
その上で、小・中学生などの早い時期から、介護福祉士の仕事を身近に感じその役割や目的等を正しく理解できるような、きちんとしたプログラムでの教育(体験学習等)を、官民一体となって行っていく必要があるのではないでしょうか。
(五井 淳子/社会保険労務士)
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