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博士は思いついてしまった――『ムカデ人間』のすすめ

『ムカデ人間』のすすめ

「ムカデ人間」は、三人の人間の口と肛門を繋げて一つの生命体にしてしまおうという、極力避けたい事態を描いた映画である。
肛門と口が繋がっていることで、後ろの人間は強制的に排泄物を食わされることになるため、“どうやらうんこを食う映画らしい”と、敬遠される方も多いのが現状。しかし実は本編は不潔な描写もグロテスクな描写も驚くほど少なく、上映劇場内が笑いで溢れるほどのユーモアに富んだ、とても面白いホラー映画なのです。

そして「ムカデ人間」において、そのユーモアのすべてを担っているのが、ムカデ人間創造と飼育を夢見る ”ヨーゼフ・ハイター博士” なんです!!2月3日の「ムカデ人間」DVD発売&レンタル開始を前に、ハイター博士というキャラクターについてちょっとご紹介させていただきたい。

博士は思い付いてしまった

ハイター博士はかつてシャム双生児の分離手術で名を馳せた名医。だが博士は逆に、人間を”切り離す”のではなく”繋げたい”と思ってしまった。残酷なのだけど、ちょっとお茶目な発想ではありませんか?完全に想像ではあるが、これは単に ”出来そうだからやってみたかった” という感じなのではないだろうか。トマト農家が、自分の育てているトマトに四角いケースを付けて四角いトマトを作ってみるような、そういう誰が喜ぶのか分からない無邪気な挑戦に似てはいないだろうか……。

「くっついた人間を切り離せるんだからさ、人間をくっつけちゃうことも出来るんじゃない……?」

そんな風に思ってしまったのかもしれない。なにしろ日本版のキャッチコピーが「つ・な・げ・て・み・た・い」である。
好奇心でつなげられちゃう方はたまったものじゃないよ。

少し弁護させていただくと、博士は三人の消化器官が一つのものとして機能し、三人が一つの生き物として生命を維持できるように計画している。
人間の尻と口をくっつけて縫い付ければ満足という訳ではないので、並の変態ジジイではない。残念ながらそれ以上だ……。博士は独りぼっちで暮らしている。大の人間嫌いなのだという。おそらく過去に何かあったのだろう。孤独に暮らす人間嫌いな中年医師の夢が、ムカデ人間創造と飼育。他人と心の繋がりのない博士が、人間を繋げようとしている。なんだか切ない心の暴走だ。

博士はどうしてもムカデ人間が作りたい!

映画の冒頭で、ムカデ人間のプロトタイプであるムカデ犬の写真を、ベソかきながら愛おしげに撫でるハイター博士のシーンがある。これがもう本当に愛おしそうなのである。おそらく孤独な生活の上で、唯一の心の友だったのであろう。ムカデ犬は死んでしまったらしく、立派な墓まで立てていた。おそらくペットロス状態の博士。これはもう、念願のムカデ人間を完成させるしかない! そうでもないと、心の傷が癒えない! なんかちょっと、応援したくなりませんか。博士はムカデ人間を作るために非常にがんばる。すごくがんばる。見た目、なかなかの御年であるから、そろそろ節々も痛いんじゃないだろうか。
(ちなみにハイター博士を演じているディーター・ラーザーさんは御年70歳である!)
だが動く。博士は動く。だって、ムカデ人間が作りたいから! がんばって自分よりデカい男でも捕まえてくるし、ムカデ人間に不適合だと分かれば手間を惜しまず処分する。見つからないようにするのだって大変だ。なかなかの労力だ。ジーンズ姿で快活に動き回る姿など、案外爽やかでちょっと乙女心をくすぐるものがある。

ついにその時が来た!

博士はムカデ人間の結合手術の際に、選ばれてしまった3人に丁寧に手術の説明をする。今まで誰かに話したくても話せなかったであろう。当然だ。話したら捕まる。それも、自分で書いたとおぼしきユルいイラストを、解説のために何枚も用意している。絵柄は、祖父から絵葉書で届いたらちょっと微笑んでしまうようなかわいらしい絵だ。ただし絵の内容は最低だ。イラストを生かした説明も、バカ丁寧でとても分かりやすい。かなり入念なリハーサルをしたんじゃないだろうか。この準備をしている博士を想像してみてほしい。

「こう描いたほうが分かりやすいかな?」などと試行錯誤しながら、何度も絵を描き直す博士の姿。描きながら、ちょっと説明を声に出してみたりする。「オホン。えー、Aの肛門と、Bの口を…」発声の練習もちょっとしてみたりして。ね、ちょっと萌えやしませんか。ハイター博士の一世一代のプレゼンテーション。本当はもっと大勢の前で発表したかったはずだ。そしてそれを聞いた3人の、悲鳴と怒号が飛び交うリアクション!博士、大成功!(なのか?)
ムカデ人間完成後の、喜びで胸いっぱいの博士のシーンは一番の見どころといってもいいのではないであろうか。あまりにも可笑しいので是非観ていただきたい。

ちょっとでもハイター博士のおもしろさが伝わったでしょうか

“No.1トラウマ映画”などと言われていますが、実は人間の尊厳について描かれた映画だったりもします。「ムカデ人間」のDVDは2月3日よりレンタル開始です。友達同士で、恋人同士で、または15歳以上のご家族(R-15指定)と、ワイワイ観ましょう! 尚、現在TSUTAYAの新作コーナーに並んでいる「人間ムカデ」は「ムカデ人間」のパロディAVですのでご注意を!

※この原稿はレイナスさんからの寄稿です。

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