“ステマ”が壊す日本の未来

2012年が始まって早々、今年のネット流行語大賞候補が登場した。それが“ステマ”だ。
直近では『食べログ』で金銭を受け取った業者による飲食店への意図的な高評価付けが発覚し、“ステマ”といわれ炎上騒動になったことは記憶に新しい。
ただ、これは2012年になって生まれた言葉ではなく、数年前から存在する広告用語“ステルスマーケティング”の略である。“ステルスマーケティング”とは、広告主が消費者に対し、それが宣伝だと認識されないよう自ら広告活動を行うことで、しばしば有名人や著名人のブログ、時としてテレビ番組内に露出する商品もその対象として認識される。

“ステルスマーケティング”についての賛否や問題点については既に様々な議論が尽くされ、昨今ではコンプライアンスやマーケティング倫理の名のもとにルール化されようとしているので、ここでの説明はあえて避けようと思う。
今回はこの“ステマ”という言葉が、世に氾濫することによるデメリットについて述べたい。

まず上記でも述べたように“ステルスマーケティング”とは、それが消費者に宣伝だと気付かれないように行うものであって、気付かれてしまえばそれは“ステルス”ではなくなり、なんとも間抜けなお芝居となってしまう。
この“ステマ”がインターネット上流行語となりつつあることから、多くのネットユーザーがこの“流行語”を使いたがっており、目に付いたものを何でもかんでも「ステマだ!」「ステマだ!」と発言してしまう現象が起こっているのだ。
こういった傾向が加速した場合、普通の情報発信をうがった形で認識してしまう。つまり“ひねくれた受信者”を生み出すケースさえあるのではないだろうか。

極論だが最近のニュースで上げると、
・澤選手のFIFA女子年間最優秀選手→SHIDAXのステマ
・田村淳、矢野未希子と正月ハワイ旅行→ゼクシィのステマ
・兵庫知事 大河ドラマ『清盛』を批判→兵庫県のステマ
と認識してしまう恐れがある。

もちろん、これらのニュースは一切ステマではない。しかし、このように茶化すユーザーがいることで、あたかもそれが真実であると認識してしまう人が出てくる=“ひねくれた受信者”を生み出す可能性もある。
本来は消費者にとって有益な情報でさえも誤認されたうえに、理解されない事態が発生するのだ。

インターネットは情報を能動的に仕入れるところなのだから、自己責任のもとに情報を取捨選択のうえ判断すればいいと言われればそれまでかもしれない。
たださらなる問題は、この“ステマ”という言葉がリアル社会にも波及してきた場合だ。例えば、ネット言語が急速に広まりやすい中高生がこの言葉を覚えて、自分の意図そのままに使い始めたとしよう。
「休日どこ行ったー?」「ディズニーランド! 超楽しかったよ!」という何気ない会話でも、「それディズニーのステマじゃね?」と言われてしまったら……。

この言葉が浸透すればするほど、冷やかされることを極端に嫌う若者たちは、何かを他人に伝えるときは常に“肯定でなく批判を前提に”と考えてしまうようになり、その結果、身の回りの好きなものを正直に好きと言えなくなるのではないだろうか。少しでも興味を持った“これから好きになるであろうもの”も、そういった考え方が邪魔をして好きになれなくなるのではないだろうか。
“ステマ”という言葉が悪いと言っているのではない。問題はこの言葉が、他人の意見や推薦を茶化す言葉として非常に便利なところにあるのだ。

“ステマ”。この言葉が世に広まっている時点で“ステルスマーケティングのステマ”は失敗に終わった。もうこれ以上、面白いように使われることなく、できることならその名前のようにそっと姿を消すことを切に願う。

画像:『食べログ』公式サイトより
http://tabelog.com/

※この記事はガジェ通ウェブライターの「ぶらっくまぐろ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
関西生まれ。
テレビとかCMとか馬とか食とか好きなので、そういう記事が多くなるかもしれないです。
執筆記事、超募集中。

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