トップコンサルタントが教える 取引先とゆるぎない信頼関係を築く7つの行動

取引先の担当者との間に見えない壁を感じる。今一つ信頼を得られていない気がする――そんな不安やもどかしさを抱えてはいませんか。

今回は、リクルートグループの人材採用コンサルタントとして「MVP」連続受賞実績を誇り、1000人を超える経営者から信頼を寄せられる森本千賀子さんに、「取引先と信頼関係を築くためのコツ」を聞いてみました。森本さんが実行していたことで、信頼獲得につながったと思われる行動を7パターン、ご紹介します。

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森本千賀子氏/株式会社リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント

1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業後、1993年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手がける。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、常に高い業績を挙げ続けるスーパー営業ウーマン。現在は、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、転職支援に取り組む。

2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『リクルートエージェントNo.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」!』『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣』『後悔しない社会人一年目の働き方』など著書多数。

1)相手の価値観、理念、ビジョンを共有する

関係を深耕したいと思う相手に対して、目先のニーズや課題だけに注目するのではなく、もう少し視野を広げて、相手の「過去」「未来」にも向き合ってみてください。

特に、相手が経営者や役員クラスであれば、商談中のふとした雑談のような形でいいので、例えば次のような質問を投げかけてみます。

どんなきっかけで、どんな志を抱いて創業したのか? 創業当時、どんな苦労があったのか? 会社の「ターニングポイント」となった出来事とは? 一気に従業員が増えたのは、どういうタイミングだったのか? 今後、どのような方向に向かうのか?将来のビジョンは?

相手が担当者レベルであったとしても、その人がわかる範囲で話を聞いてみましょう。

相手の方も、自社に興味を持ってもらえるのはうれしいもの。特にこだわっている部分については、熱を込めて語ってくれる可能性があります。

それを聞くうちに、その会社が大切にしていることがわかり、課題の本質が見えてきます。それに沿った提案をすることにより、「この人はうちのことをわかってくれている」という信頼につながり、さらに大きな取引に発展させられるのです。

何より、相手の歴史や会社への想いを理解することで、相手への思い入れが自然と深まり、「本気」になれるでしょう。その本気が伝われば、相手もあなたに対して本気で接してくれるはずです。

2)知ったかぶりはしない。素直に教えを請う

取引先と話していて、知らない用語や概念などが出てきたとき、知っているふりをしてしまった…なんて経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。後で調べれば問題ないものもありますが、その場で理解しておかないと適切なヒアリングができず、噛み合わなくなってしまうことも。

恥ずかしがらずに、素直に「不勉強で恐縮ですが、教えてください」とお願いすることが大切。あなたが理解しないままやり過ごしてしまう方がリスクとなることもあります。変に見栄を張らず、相手を「知りたい」「学びたい」という姿勢で向き合うほうが、信頼の獲得につながりやすいのです。

3)相手の会社の「現場」に入り込む

これは、どんな商材やサービスを扱っているかにもよりますが、会議室で社長や担当者と話し合うだけでなく、「現場のスタッフの方とお話しさせてください」と頼んで、「現場」を見せてもらうのも有効です。

現場スタッフの目線で見ることで、その会社の特性だけでなく、課題の本質もつかむことができ、適切なソリューションに結び付けられることは多いものです。

それに、トップと現場に距離があり、現場の考えや課題をトップや責任者クラスが把握できていないケースもよくあるものです。そうした組織で、自分が「パイプ役」になることで感謝されることもあります。

なお、仕事を遂行する上で、その会社の「カルチャー」を理解することが大切な要素であれば、朝礼や社内イベントを覗かせてもらうのもお勧め。参加している社員の表情などをしっかり観察してみてください。普段とは違う会社の顔が見えて、発見できることがあるはずです。

4)初期の段階で、お客さまとの間に「ルール」を設ける

取引先に不信感を与えるのも、信頼感を持ってもらうのも、「スケジュール」や「ダンドリ」が大きく影響することがよくあります。相手に何か検討してもらう、アクションや作業をしてもらう、といった場面はよくありますが、相手の都合に任せていると、返事が返ってこない、作業がなかなか進まない、ということが発生しがちです。

「あの件はどうですか」と度々連絡しなければならないのは、自分にとってもストレスになりますし、相手だって催促を受けるのは心地いいものではありません。しかも、催促のタイミングが悪いと、「今、忙しいのにうるさい!」と、ネガティブな印象を残す危険性も…。

そうした事態を避けるためには、取引を始める段階で、「ルール」をきっちりと決めておきましょう。「このチェックは3日以内に」「この作業は1週間で」といったようにです。また、「〇日間でやってください」と一方的にお願いするのではなく、「なぜそうする必要があるのか」という意義を伝えましょう。初期段階から相手とルールを共有することで、お互いに気持ちよく、スムーズに仕事を進めることができます。

5)報告はこまめに。「ちゃんと動いている」ことを知らせる

取引先への連絡・報告については、「やり過ぎ」ということはないと考えてください。

こちらが相手のために何かしら動いていたとしても、相手からは見えません。時間が経過するにつれ、音沙汰がなければ「あの件は大丈夫なのかな」と不安がよぎることもあるでしょう。

そこで、こちらが何かアクションを起こしたとき、何らかの進展や変化があったときには、すぐにメールで報告することをお勧めします。「自社のためにちゃんと動いてくれているんだな」と感じられれば、相手は安心できますし、こちらに対する信頼感も高まります。

万が一、方針や内容の認識にズレがあった場合、早い段階で是正することができるというメリットもあります。

6)要望に応えられないことは、理由や経緯を丁寧に説明する

相手の要望に応えられないことが生じた場合は、「できません」で終わらせず、なぜできないのかの理由、その判断に至った経緯をなるべく細かく説明しましょう。真剣に検討した結果であると伝われば、先方の不満も和らぐものです。

ただし、一方的に「NG」を突きつけて終えるのではなく、「どうしてもご都合が悪いようでしたら、ご相談ください」といった一言を添えるといいでしょう。「あなたのご意見や反論も受け止める」という姿勢を見せるのです。また、「その要望には応えられず申し訳ありませんが、この部分では満足いただけるように力を尽くします」というメッセージも添えるといいでしょう。

7)頼まれなくても、「相手に喜ばれること」を想像して実行する

自社の規定のサービスにはなくても、「これをしてあげると相手が喜ぶかな」ということを想像し、実行してみてください。

例えば、こちらからの提案を社内稟議にかけてもらう必要がある場合は、こちらで稟議書や参考資料を作成し、担当者はそのまま上層部に提出するだけでOK、という状態までお膳立てをする。――このように、「相手の作業負担が減り、楽になる」ことを代わりにしてあげるのです。

また、「相手方の社内プロジェクトがうまく運んでいない場合、忙しい担当者に代わって関係者にヒアリングしてまわり、原因を見つける」「担当部門の売上が上がるように販促手法の提案をする」「相手が上司に提出する企画書について、参考になる資料やデータを提供する」など。

相手の業務を観察していると、自分がサポートできるポイントが見つかるはずです。

こうして「あなたのおかげで助かった」が積み重なっていくことで、信頼を獲得することができるのです。

――「相手に心を開いてもらうには、まず自分自身がオープンになる」と森本さん。体裁をとりつくろったり、かっこつけたりせず、ありのままの自分で、素直な気持ちをぶつけることが相手との距離を縮める秘訣のようです。

EDIT&WRITING:青木典子

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