【寄稿連載】第二話 ホームレスのホームセキュリティ
今回は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。
第二話 ホームレスのホームセキュリティ
夜12時過ぎ。
街頭がギリギリ届く薄暗い公園の中に、ボーと浮かぶ三つのテント。少し不気味でもある。
俺たちはゆっくりとおっちゃんたちが寝ているテントへ近づく。
気付かれないように足を進めていると、足元でガサガサパキパキと音が鳴る。
俺たちが足元を見ると、そこには枯葉がびっしりと敷き詰めてある。それを踏むたびに音がするのである。
それでも少しずつテントに近づいていった。
そしてあと少しというところで突然、三方から、いきなりライトで照らされた。
俺たちはいきなりの事で一瞬体が固まったまま呆然としてしまった。
何が起こったのか理由も分からずに。
我に返ったときには悪友二人はいつの間にか逃げ出していなくなっていた。
よく見ると三人のホームレスのおっちゃんが懐中電灯片手に立っていた。
「何しているんだ」一人が言った。
声が出なかった。というか実際何も考えていなかったのだ。
ただ面白半分にテントを壊すことしか考えていなかったのであった。
俺が黙っていると懐中電灯を消して「早く帰って寝ろ」と言って三人は、テントへ戻っていった。俺はしばらく動けなかった。
何分経っただろうか。俺はゆっくりと歩きかけて足元を見た。
よく見ると枯葉の下に小さな枯れ枝がいっぱい転がっていた。これを踏むとパキパキと音が鳴るのである。
これがホームレスのおっちゃん達のホームセキュリティーなのである。
これのおかげで俺たちが近づいたことが解ったのであった。
ホームレスの人たちにとって寝ている時に襲われるのが一番恐いのである。そのためにみんな色々と工夫しているのである。例えば皆が集団で同じところで寝ているのも一人で寝ていると不安になってくるからだろう。
テント村の場合は自警団を作って代わりばんこに夜警をしているところもある。
だいたい夜の10時くらいから朝の5時ぐらいまでである。
昔は殺人にまで発展したこともあったくらいホームレスの人たちはいろいろと嫌がらせを受けてきていた。
今は昔ほどではなくなったがそれでも寝ている時に段ボールを蹴られたとか、水を掛けられたとか、荷物を持っていかれたとか、いろいろと聞いたことはある。
実際自分も荷物を持っていかれそうになったことはあった。犯人は二十歳くらいの若者であった。何が目当てだったのかは分からないが面白半分だったのかもしれない。
これは特に路上生活者にとっては常に起こることなのであろう。だから夜でも熟睡しているホームレスの人たちは少ないのではないだろうか。
話を元に戻そう。
俺は暗闇の中に立っているテントをみてホームレスのおっちゃんたちの知恵に感心しつつその場を後にしたのであった。
これがおっちゃんたちとの出来事の一歩である。
続く
★ホームレスのおっちゃんの一言
急に寒くなってきましたが皆さんお身体は大丈夫ですか。
10月1日よりこちら東横のれん街で本格的に販売させていただきます今後ともよろしくお願いします。
松田良一
2010年秋
執筆: この記事は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。
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