長時間労働の是正に向けて注目される「勤務間インターバル制度」
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度というものをご存知でしょうか。
最近、長時間労働の是正や適正なワークライフバランス確保のために注目されているルールです。
従業員が終業してから(残業も含む)次に出社して仕事を開始するまでに、決められた一定時間、インターバルを挟まなければならないというものです。
例えば、残業で深夜0時まで働いたとして、インターバルが10時間と決められている場合、翌日の出社は午前10時で構いません。
会社の始業が9時と定められていても、10時出社でオッケーですし、遅早欠勤控除もされません。
残業代アップより効果的
これまで、長時間労働の抑止策として検討されてきたのが、残業や休日労働に対する賃金の割増率をアップさせることでした。
もちろん残業代を多く支払わなければならいことは、企業にとって負担となるので一定の効果はあります。
しかし、逆に考えれば、割増賃金さえきちんと支払っていれば、法で定められた限度までは従業員の労働時間を増やすことも許されてしまうということになってしまいます。
勤務間インターバル制度は、終業から次の始業まで確実に労働から解放される時間を設定するため、結果的に勤務時間の上限が定まることになります。
今の勤務制度のように、どれだけ遅くまで残業しても、翌朝何事もなかったように労働時間がリセットされ、仕事が始まってしまうようなことはありません。
そのため、この制度は長時間労働を改善するための具体的な手段として期待されているのです。
日本での状況
勤務間インターバル制度は、すでにEU加盟国では義務化されています。
近年、日本でもこの制度に注目が集まり、一部の大手企業などでは制度導入するところが見られるようになってきました。
特に、その仕事の性質上、労働時間が長くなりがちなIT・情報関連事業で、このインターバル制度を導入する企業が増えているようです。
この制度が日本で定着するためには、一人の従業員が長時間労働で支えてきた仕事をどう他へ配分するか、当たり前のように享受してきた便利なサービスが本当に必要なものなのかなど、仕事やサービスのあり方自体への再検討が必要です。
また、現状に則した労働関連法の整備、企業内の就業規則をはじめとする社内環境の見直し、社員教育による意識改革など課題もたくさんあります。
しかし、少子高齢化により働く人が減少する中にあって、よりよい就業環境を作ることは、人材確保・定着のために必須の取り組みでしょう。
まだまだ日本では知名度が低いですし導入事例も少ない制度ですが、今後ますます取り入れられていく働き方ではないかと考えます。
今後の動きに注目していきたい制度です。
(大竹 光明/社会保険労務士)
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