あの人のお宅拝見[1] 編集者・石川次郎さんのセカンドハウス(前編)
イタリア・ミラノ取材でご一緒して以来、石川次郎さんの人間力に引きつけられた筆者。『POPEYE』『BRUTUS』など人気雑誌を創刊した編集長である大先輩、そして75歳今なおバリバリの現役で活躍する次郎さんの住まい観をお宅で聞いてみたかった。そんな依頼に返って来た返事が「自宅は妻の城なので、僕のセカンドハウスはどう?」。うれしいお誘いに、編集部と富士山に向かって車を走らせた。連載【あの人のお宅拝見】
住宅業界にかかわって25年以上のジャーナリストVivien藤井が、暮らしを楽しむ達人のお住まいを訪問。住生活にまつわるお話を伺いながら、住まいを、そして人生を豊かにするヒントを探ります。
「富士山とはいろんな縁があるんだ」次郎’sセカンドハウスin山梨
われわれ一行が車で東京を出発してからおよそ1時間、目の前にドーンと富士山が現れて皆胸が躍る。そんなプロセスから、セカンドハウスを持つ意義を考えさせられる道中。【画像1】中央高速を走る車から見えた、雲の上に富士山。今日はイイ日になりそう!(写真撮影/Vivien藤井)
現地で待ち合わせた次郎さんは「うどんを食べてから行こう」と、行きつけの吉田うどんのお店に連れて行ってくださった。食にもこだわる次郎さんは「まず冷やしを食べて。次に、温かいのと食べ比べてみて!」と。 【画像2】「今や有名店になってしまったけど、昔は古い民家で雰囲気があったんだよ」と、2杯目の温かい肉天うどんを食べる次郎さん(写真撮影/片山貴博)【画像3】七味唐辛子とごま油を混ぜた調味料を入れるとさらにおいしい。たくさん入れるのが次郎さんのおすすめ(写真撮影/片山貴博)
えっ、うどんを2杯!? と驚きながらも、ペロリと頂けるおいしさ……。次郎さんのペースに、編集部若者たちも巻き込まれている(この食欲が、バリバリ現役75歳の源か?)
なぜ、セカンドハウスを河口湖界隈で持つことになったのか?
「僕は富士山といろいろ縁があってね(笑)母が夢で見たらしいの。僕が生まれるとき、富士山の頂上で南次郎大将(大日本帝国陸軍)が日の丸の旗を振っている姿を。だから名前も次郎」、入学した都立高校やテニスクラブの名前も偶然“富士”絡みらしい。
「ここを購入したのは約20年前、リゾート開発の仕事なんかで富士方面に通っているときに、友人のアルフレックスジャパンの保科社長(当時)が手掛けた物件が売りに出て。やっぱり富士山の縁だね」
店を出て、少し車を走らせると別荘地らしい木立ちが見えてきた。 【画像4】冬が訪れる前の、静かで穏やかな日だった(写真撮影/片山貴博)【画像5】赤いゲートを抜けると、中は大きな敷地、テニスコートもある16軒の集合住宅型別荘(写真撮影/片山貴博)
「戸建別荘も結構見て検討したけどね、やっぱり管理面では集合住宅が楽でいいよ」と、中へ案内してくれた。
好きなものだけに囲まれて過ごす、心地良さ
玄関ドアを開けると、全面ガラスの内ドアがもう一枚。その正面から、木々の緑が日差しと共に迎え入れてくれるドラマチックなエントランスデザイン! 【画像6】イタリアから輸入された建具や自然素材が多く使われている。床はテラコッタ、床暖房が気持ちいい季節(写真撮影/片山貴博)【画像7】室内側から見ると、こんなに広い玄関スペース(写真撮影/Vivien藤井)
リビングルームは玄関から半階下のスキップフロアになっていて、広大な林を背にした裏庭に面している。 【画像 8】「家具はほとんどオフィスで使っていたのを持ってきた程度」。アルフレックス社のソファに落ち着いた間接照明、暖炉もあるリビングルーム(写真撮影/片山貴博) 【画像 9】ベネチアンスタッコ(イタリア漆喰)の塗り壁に照明があたると、柔らかい光になって空間のクオリティが高まる(写真撮影/片山貴博) 【画像 10】収納システムが随所にビルトインされているのは、さすがアルフレックス社によるデザイン(写真撮影/片山貴博)【画像 11】「このドリアデ社製のシェルフを見て、一発で気にいっちゃった」と、本好きの次郎さん(写真撮影/片山貴博)
「東京の自宅は建てるまでが僕の楽しみで、建ててからは妻のもの。だから、セカンドハウスでは自分の好きなものに囲まれて心地よくしようと。家具や食器も全部、自分好みのものを置いてる」
ここへ来るだけで気持ちよく過ごせる、次郎さんのヒーリング・スポットだ。
日帰りでも来れるアクセスの良さが、第二の仕事場
55歳の時に、このセカンドハウスを購入した次郎さん。
「たった1時間で来れるから、別荘って言う感じじゃない。もう一つの仕事場ってところかな」
企画を練るなど一人で集中したいときや、ゆっくり眠りたいときなどに昼からでもサッと車を走らせて来るようだ。 【画像 12】「家では何もしないけど、ここでは自分で料理も片付けもする」普段と違う行動をするので、頭がさえると言う(写真撮影/片山貴博) 【画像 13】こだわりの鉄器類も充実、「一人でもステーキを焼いて食うよ」。御影石張りの独立型キッチン(写真撮影/片山貴博) 【画像 14】700gの肉をペロリと食されるらしい……。ここにも居ました“肉食高齢者”(写真提供/石川次郎)【画像 15】薪割りも非日常の動作、ガレージには薪が積まれていた(写真撮影/片山貴博)
「息子家族が使ったり、友人たちがイッパイ集まって合宿みたいになることもあるけど、基本僕の隠れ家」
正しく男のセカンドハウス、そんな憧れのデュアル・ライフを実践してきた次郎さん。
次回レポートでは、次郎さんが若かりしころに経験した貴重な住まいのヒストリーや、さらにこの別荘にちりばめられたお気に入りの数々を紹介するのでお楽しみに!石川次郎
エディトリアル・ディレクター。編集プロダクションJI inc.(株式会社ジェイ・アイ)代表取締役。1941年、東京生まれ。早稲田大学卒業後2年間ほど海外旅行専門のトラベル・エージェントに勤務。その後、平凡出版株式会社(現マガジンハウス)に入社、『平凡パンチ』誌で編集者生活をスタート『POPEYE』創刊に携わる。『BRUTUS』『Tarzan』『GULLIVER』などを創刊、編集長を歴任。1993年同社退社、JI inc.設立。ラグジュアリー層向け雑誌『SEVEN SEAS』(アルク社)編集長などを務める。また、六本木ヒルズ内にある「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」や川崎の「LA CITTA DELLA」など商業施設のプロデュースなども手掛ける。1994年〜2002年テレビ朝日「トゥナイト2」の司会としても活動。現在もTV番組の企画制作など活動は多岐にわたる。
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