「仕事にやりがいは感じないが、かといって何がやりたいのかもわからない」【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩み相談を、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。

CASE13:「自分の『やりたいこと』がいまだにわからない」(27歳女性・メーカー勤務)

<相談内容>

証券会社で営業を担当した後、派遣社員としてメーカーで営業事務の仕事をしています。

前職では、激務と営業ノルマに耐え切れず、「もう営業は嫌だ!」と退職。その後、派遣会社に登録して営業事務を3年続けていますが、今の仕事にやりがいが持てません。営業数字を管理したり、プレゼン資料の作成を手伝ったり、見積書を作ったりという仕事ですが、「私じゃなくてもできる仕事だな」と日々感じています。

かといって「じゃあ何がやりたいのか?」と言われると、ピンとこないんです。

営業は1年しかやっていませんし、営業事務でも特段成果を挙げているわけではありません。やりたいことはわからないし、自分の経験やスキルが活かせる場所もわからない。でも、今のやりがいのない状態からは脱出したい…私はどうやって現状を打破すればいいのでしょうか?(メーカー・営業事務職)

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「やりたいことがわからない」は、今の時代に合っている

やりたいことがわからない…今はこういう若い人が多いですね。でもやりたいことがないのは別に悪いことではありません。

やりたいことを明確に決めるよりも、あえて決めずにオープンマインドで仕事に臨んだほうが、いいキャリアを築けるという考え方もあります。偶然に大きなチャンスが来たときに、自分のキャリア観に縛られていると「私の目指すものとは違うから」とそのチャンスを見送ってしまいますが、やりたいことを明確に決めていなければ「面白そうだから乗ってみるか」と柔軟に対応することができる。その結果、思わぬ道が開ける可能性もあります。

この考え方は「キャリアドリフト」と呼ばれ、変化の激しい現代に向いている考え方と言われています。自分のキャリアパスを明確に決めたとしても、5年後10年後、その仕事があるとは限らないからです。

そもそも、日本においては「場を見て自分のポジションを考えろ」「空気を読め」と、子どものころから暗に教えられてきています。やりたいことを決めない(決められない)のはごく普通のこと。そこまで思い悩む必要はないと思います。

ただ、一つ心配なのは、相談者の「私じゃなくてもできる仕事だ」という考え方です。

実は、「この人でないとできない仕事」なんて、この世の中にほとんどありません。誰もがその才能を認めるトップ営業マンであっても、その人が辞めた後は誰かがその穴を必死になって埋めます。たとえ超大手企業のトップがある日急にいなくなったとしても、必ず誰かが代わりを務め、企業経営は滞りなく継続されます。そもそも、組織において「この人じゃないとできない」という状態を作るのはリスクでしかありません。

つまり、「私じゃなくてもできる仕事だ」と必要以上に思い悩んだり、「私にしかできない仕事」にこだわったりする必要は全くありません。この考えにこだわり過ぎると、「この仕事も違う」と次々と新しい環境を求めることになり、ジョブホッパー化してしまう恐れがあるので注意が必要です。

自分の仕事について、自らフィードバックをもらいに行こう

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「私じゃなくてもできる仕事」という発言からは、相談者の承認欲求の強さが感じられます。ここから考えると、相談者の悩みは「やりたいことがわからない」ことではなく、単に「今の職場で承認欲求が満たされていない」ことに起因しているのではないかと、私は思います。

本来であれば、相談者の上司や、相談者の仕事の恩恵を受けている営業担当者に直接、「もっとこの方に普段からありがとうと言え、プレゼンの結果をこまめにフィードバックしろ」と言いたいところですが、それは叶わないので、「相談者が自分で、上司や営業担当者に聞きに行く」ことをお勧めします。

「この前のプレゼンはどうでしたか?」「今回は資料のこの部分を工夫してみたのですが、どうですか?」などとズバリ聞いてみるのです。こう聞かれて、何もフィードバックしてこない人はいないでしょう。「おかげでうまくいったよ、ありがとう!」と言われたらやりがいを覚えるでしょうし、「次はこの部分をこうしてほしい」などの要望がもらえたら、「もっと工夫してやろう」と奮起できるはず。

フィードバックの内容がどんなものであっても、自分の仕事に「意味」を感じることができ、間接的にクライアント、ひいては社会に影響を与えていると感じることもできるでしょう。仕事ががぜん面白くなり、「営業事務って、天職!」と思えるかもしれません。

待っているのではなく、ぜひ自ら積極的に、フィードバックをもらいに行ってください。視界を変えるきっかけになるはずですよ。

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<アドバイスまとめ>

今すぐ、自分の仕事へのフィードバックを求め、

自ら承認欲求を満たそう

(万が一邪険に扱われたら転職も一法)

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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