【ここは法廷だゼ!】かつての勤務先社長に酸性の液体を振りかけた被告人
半袖Tシャツの袖を肩へまくり上げ、黒いデニムにサラサラヘア。39歳にしては若々しさのある顔立ちだが、風貌は昭和を感じさせる。足をひきずり、法廷に現れた。
被告人Jはある日の早朝、以前勤務していたバイク便の会社へ赴き、そこの社長と一緒にエレベーターに乗り込んだ上、社長に向かって酸性の液体を振りかけ、持っていた手作りの武器で20回殴った……という、傷害と銃刀法違反の罪で逮捕、起訴された。
その酸性の液体はタバスコ入りの水。塩酸や硫酸じゃなかったことが不幸中の幸いだが、犯行時Jは、秋葉原通り魔の犯人も犯行に使用したことで有名なダガーナイフを所持していた。犯行に対しては、及び腰な態度と、異様なやる気が混在しているようにも見える。
そもそもなぜ、Jは以前の勤務先の社長に危害を加えたのか。法廷でこう語る。
「仕事中の事故なのに補償をしてくれないのかと、不満を募らせていきました。事故後、会社で働くことはできなかった。バイクに乗る以外にも配車など、やれそうな仕事はあったのに、とりあえずクビ、と言われて……」
だが社長の言い分は違った。
「プライベートの事故と理解していた。いつのまにか姿をくらましていたが、当日、黒ずくめの格好で男に“お前のせいだ”と言われ、液体をかけられた。Jだと確信した」
双方の言い分が異なり過ぎているが、このJの捨て身ぶりなどから何らかの確執があったようにも思える。
しかも、Jがここまで尾を引いているのには事情がある。
「事故の後は後遺症が残りました。機能不全と、神経マヒによる痛み。足の可動領域も狭くなった。生活保護を受け取り、精神科で抗うつ薬と睡眠薬……」
いまも後遺症により仕事が得られない状態となっているのだ。
「暴力的行為をしたことについてはすまないと思ってます」
こう言いながらも、
「弁済については請求するつもりでいます。私は仕事中での事故と思っていますし、当時の伝票も持っています!」
と、民事裁判で争う意欲は満々。確かに無理もない。勤務時間中に怪我を負ったと思っていたのに会社はそう判断しておらず、その後の人生も変わってしまったとあっては、よほどの精神力の持ち主でない限り、会社を恨みまくってしまうのではないだろうか……。
Jには結局有罪判決が下されたが、民事裁判の行方が気になるところである。
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
TwitterID: tk84yuki
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