ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

横浜DeNA初代監督に中畑清氏に失望する4の理由

横浜DeNA初代監督に中畑清氏に失望する4の理由

新生・横浜DeNAベイスターズの初代監督に中畑清氏が就任した。中畑新監督は1977年から1989年まで読売ジャイアンツの一塁手として活躍。引退後は同一軍打撃コーチやアテネオリンピック野球日本代表のヘッドコーチ(後に監督)などを務め、2010年には第22回参議院議員選挙に『たちあがれ日本』より出馬して政界進出を目指したことでも話題になった。

横浜DeNAの監督選びは、さまざまな憶測と混乱を呼んだ。株式会社DeNAの横浜の球団買収が確実となった当初は巨人、大リーグ・パイレーツなどでプレーした野球評論家・桑田真澄氏の就任が有力視されたり、正式に横浜DeNA発足以後は元西武の大ベテラン投手・工藤公康氏が最有力となって、監督就任まで秒読みと言われた。しかし、新しくベイスターズに創設されたジェネラル・マネージャー(GM)のポストに就任した前ヤクルト監督・高田繁氏が工藤氏との「信頼関係を構築できなかった」として、一夜にして“工藤新監督”は白紙となった。

すでに監督選出までの時間が極めて限られていたのは事実だろう。その後、横浜OBからの監督人選も検討されたようだったが、急転直下で現在解説者を務める中畑氏の監督就任が決まり、9日、就任会見が開かれるに至った。今後は横浜OBで野球解説者・高木豊氏や今シーズンまで横浜の二軍監督を務めた白井一幸氏の入閣が検討されているという。

横浜ファンにとって中畑氏の監督就任は、はっきり言って“悪夢”でしかない

その失望の理由は複数ある。まず第1に、中畑氏の“監督”としての器、という根本的な問題である。確かに現場経験は皆無ではないし、むしろアテネオリンピックでは長嶋茂雄・代表監督の代わりに急きょチームを率いるほどの大役を担った。しかしながら、巨人一軍打撃コーチ時代の1993年はセ・リーグでのチーム打率が最低に終わり、翌年には一塁走塁コーチへ配置換えとなるも1年でその任も離れている。

中畑氏は現役時代から「絶好調!」が合言葉の熱血漢で、チームを盛り上げるムードメーカーとして人気を博していた。その反面、理論家としての側面は一向に見い出せない。コーチとしても解説者としても、中畑氏は情熱的なこと以外に魅力があるのだろうか。アテネオリンピックで率いた日本代表チームも、指揮が困難になった長嶋茂雄氏のチームをあくまで継承したに過ぎない。

つまり中畑氏は、現代のプロ野球で求められる理論的で緻密な戦略性、データ野球とは最も縁が遠い存在なのである。ただでさえ慢性的な戦力不足を抱え、前任監督の尾花高夫氏が長期的な再建計画が必要だと訴えていた横浜で、中畑氏のような熱血さしか売りのない人物が監督に務まるといえるのだろうか。

第2に横浜ファンの気持ちを蹂躙(じゅうりん)する点は、上述してきた中畑氏の経歴そのものにほかならない。何よりも中畑氏といえば“読売ジャイアンツの顔”である。現役時代を知っている世代ならなおのこと、知らない世代でも中畑氏といえば巨人の人間としての印象がことさら強い。現巨人監督の原辰徳氏や野球解説者の江川卓氏、不動の3番打者だったウォーレン・クロマティ氏や往年の名二塁手・篠塚和典氏ら1980年代巨人の中でも、とりわけ中心的存在として知名度を誇るのが中畑氏なのだから。

もちろん、ただ単純に無粋な“アンチ巨人”でいることが良いとは思わない。それは自明としつつも、巨人以外のセ・リーグ各球団のファンが読売ジャイアンツという存在に対して一種複雑な感情を抱いていることは明々白々である。そんななか、巨人OBから監督を選ぶとしたら、監督として「この人ならば」とファンに思わせられるような、より繊細な判断が必要とされるのは言うまでもない。新オーナー企業であるDeNAはそうした繊細さが皆無である。

GMに就任した高田繁氏のコネクションが中畑新監督を生んだという説は強い。しかしながら、その説が決定的とはどうしても思えないのが第3のポイントである。高田氏は確かにV9時代の巨人を代表する名選手だったが、引退後は日本ハムの監督やGM、最近まではヤクルトの監督も務めるなどした“巨人”という枠にとらわれない人物である。日本ハムGM時代には無名の存在だったトレイ・ヒルマン氏を監督に招来して日本一へと導いた。

その中で注目すべきは、ヒルマン体制下の日本ハムで長らくヘッドコーチを務めた白井一幸氏の存在である。白井氏はその後も大リーグ・ロイヤルズの監督に就任したヒルマン氏と行動を共にしてアメリカへ渡り、今シーズンには尾花高夫氏のもと、横浜の2軍監督を任されていた人物である。白井氏は一時期、来シーズンの日本ハム監督候補にさえ名前が上がっていた理論派の指導者であるが、高田氏の影響力を考えるならば“白井・横浜DeNA監督”という選択肢は極めて説得力があり得たのではないだろうか。決して高田氏の影響力が強いからといって、中畑氏の起用に蓋然性はないのである。

第4は言うまでもなく、新たな横浜の親会社であるDeNAの方向性への不信である。DeNAは球団社長に35歳のDeNA執行役員・池田純氏を起用した。池田氏は「僕自身横浜生まれの横浜育ちで大洋ホエールズの大ファンだった」という。横浜の監督人選にはもちろん、生え抜きの大洋、横浜OBからという可能性があった。当初の有力候補だった桑田真澄氏よりも工藤公康氏が俄然有力視されたのは、工藤氏が横浜で選手生活を送った経験があったからに違いない。

しかしながら、同時にDeNAは新監督の人選基準に“若くて明るい、チームに人気を呼ぶような人”という方針も打ち出していた。現在の横浜の状況を見れば、まずもって横浜を人気のある魅力的なチームにしたいという意向は大いに理解できる。だが結果的に下された判断は、あまりにも後者ばかりを意識した軽薄なもの、としか言えないのではないか。

DeNAは、大洋ホエールズ、横浜ベイスターズという球団を本当に理解しているのであろうか。この中畑氏の監督就任は、そうした理解が決定的に欠如していることの証左にほかならない、と言えないだろうか。つまりはこの人選が、「横浜OBには若くて明るい、チームに人気を呼ぶような人がいない」とDeNAが認識したも同然なのである。

本当にそうだろうか。田代富雄氏、斉藤和夫氏、遠藤一彦氏、山下大輔氏、高木豊氏、駒田徳広氏、波留敏夫氏などなど。横浜ファンなら誰もが知っているこれら往年の名選手で、ファンに愛された人々を、DeNAは全く知らなかったのだろうか。「横浜の人たちが幸せハッピーになれる試合、球団にしていきたい」このように就任当初語った池田純・新球団社長は、少年時代に相鉄線に乗って横浜スタジアムへ通い続けたという。そうした人物が、中畑氏の横浜監督就任をどう考えるのか、切実に知りたい。

横浜の不動の4番打者だった村田修一選手が、FAで読売ジャイアンツへ移籍することが決まった。彼の希望はただ「優勝できるチームでプレーしたい」という想いだった。4年連続最下位の横浜を、強いチームにすること、優勝を目指せる球団にすること、それが新生・横浜DeNAベイスターズに託された夢ではなかっただろうか。そのためには“若さ”“明るさ”(結局57歳の中畑氏では前者の要件を満たしていない)だけでなく、現代のプロ野球に即した緻密な野球理論を持つ“強い”監督が必要だったのではないだろうか。

とはいえ、本当にプロ野球の球団を愛するファンならば、実際、誰が監督だろうと、どこがオーナー企業だろうと、ファンはファンのままあり続けるはず。ましてや横浜ファンに生まれた以上、ちょっとやそっとのことでは動じない耐性が身についてる。「ファンを辞める」などという愚昧な選択など、あり得ようものか。今回の横浜DeNAベイスターズ新監督就任に対する憤怒も、一夜限りで終わりにして、明日からまた普段通りにチームを応援し続けよう。そうしたファンの想いほど、真に“強い”ものはないと信じるゆえに。

※この記事はガジェ通ウェブライターが執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
スマホゲーム タラコたたき