人脈づくりって面倒? キャリアを拓く縁の繋ぎ方
化粧品会社の広報マネージャー等を経て、現在フリーで複数の企業の広報を担当する井関紀子さん。独立してまだ1年ですが、実に様々な業種の企業からオファーを受け、仕事の幅を広げ続けています。元CA、元化粧品会社PRというなんとも華やかなご経歴、しかも美人。ですがキラキラした形容詞は、彼女を表す一部でしかありません。広報という仕事柄、井関さんが人間関係を大切にして「人脈」を広げているのは当然、しかしそれを仕事に生かすだけでなく、さらに他人同士をも繋ぎ、多くの人の信頼を得ています。そんな井関さんに「人脈」の作り方、生かし方について聞きました。
【プロフィール:井関紀子】
新潟県出身。短期大学卒業後、全日本空輸株式会社へキャビンアテンダントとして入社。後に株式会社ドクターシーラボの広報グループ長として8年半勤務。ファッションアプリiQONを運営する株式会社VASILYの広報マネージャーを経て、2015年11月よりフリーランス。現在はスタートアップを中心に複数の企業のPRを担当。
キャビンアテンダントを通して身に付いたこと
当時の人間関係は?
1992年全日空に入社。バブル崩壊後とはいえまだ時代に余裕があり、国内線は毎便満席でした。お客様が多いと新人は対応に時間がかかります。先輩に迷惑をかけては叱られ、一挙手一投足をチェックされ、一年目は胃潰瘍に…。叱って貰える時期は貴重ですが、当時は分からなかったですね。叱る立場になって初めて、その大変さを知りました。
たまにお客様に気難しい方がいらっしゃることもあり、ある時「お茶がまずい」と言われました。すると先輩が何度も何度も作り方を変え、お茶を出し続け…。そうなるとお客様も楽しくなられたようで、最後は先輩と仲良くおしゃべりしながら、飲み比べられていました(笑)。▲キャビンアテンダント時代
周囲で働く人にとって「自分がどう立ち回れば効率的か?」と意識して、必然的に周りをよく見るようになりました。またお客様と接する際の表情や言葉遣いはもちろん、相手が求めているものを探って「どうしたら喜んでもらえるか?」を常に考えるように。それは今も、とても役に立っていいます。
この頃、「人脈」は意識していませんでした。仕事で必要なかったし、憧れていた職業につくことができたので、ある意味ゴール。後のキャリアも考えておらず、「人脈」の大切さなんて気づいていませんでした。
広報職に転身
まずどうやって「人脈」を築いたか? 結婚後にキャビンアテンダントを辞め、しばらく専業主婦となりますが、また働き始めました。営業事務のアルバイトなど数社を経て、ある企業でアンチエイジング・スパのオープニングスタッフとして入社。このとき「広報」のキャリアがスタートし、その後化粧品会社へと転職しました。
▲化粧品会社時代
広報はPRする商材をメディアに露出するため、出版社やテレビ局などを訪問して商品紹介をします。化粧品会社に入社した頃は、メディア関係の知人など人脈は何ひとつなく、ただ目の前にリストがあるのみ…という状況。
そこで、『リストに名前のある方に電話をしてアポイントを取り、会いに行く』ということを、ひたすらやることにしました。当時読んだ本に、”人は3度会うと知り合いの感覚になる”とありました。最初はぎこちなくても3度目になると相手をよく知っている気分になり、さらに時間の長短よりも会う回数が重要と書かれていました。
初回は気難しそうに見えたり、『私のこと嫌いかな?』と思うような態度をとられても、何かチャンスを見つけて(差し入れを持って突然訪問し、渡して帰ったり・笑)、3回は会うよう頑張りました。すると3回目には雰囲気が変わるのを感じるようになり、人と会うのが楽しくなりました。私、本当は人見知りだったんですよ(笑)。
今思えば、あの時あの場所に行ったから出会えたんだ、という素敵な出会いがたくさんあります。出会うということは、本当に大切なものと実感します。その出会いに感謝すること、そしてその方々に何か役に立てるようにしようと常に考え、行動することを心掛けています。さらに、この二人が知り合ったらいい仕事ができるのでは? と思うように。積極的に紹介するようになったら、人のつながりが自然に増えていきました。
フリーランス広報と会社員広報の違い
「人脈」「人間関係」はどんなふうに変わる?
8年半勤めた化粧品会社から、IT企業へと転職。その頃、他のベンチャー企業からスカウトされました。
お断りしたのですが、先方の取締役と広報の仕事について話していたら「契約で手伝ってくれないか?」 と言われました。その時スタートアップの企業には広報の需要があることに気付き、それがきっかけで社員ではなくフリーランスで複数の会社の広報をしようと決意しました。
フリーランス広報は会社員広報と比べて、社員の方との人間関係を構築するのにケアが必要です。常駐していないので、会社内にどんな人がいて、どんな活動をしていて、どんな新しい事業が進んでいて…といった「PRの種」を見つけることが難しい。また取材などに関してやりとりしていても、普段接しない方とのコミュニケーションは誤解が生じやすくなります。
私はなるべく私自身の性格なども理解して貰えるように、会って話す回数を増やして補完しています。また、フリーランス広報は複数企業を担当しますので、メディアの方からは「人探し」や「企業探し」「事例探し」、企業の方からは「人の紹介」「企業の紹介」をお願いされることが多くあります。私が担当する企業で該当しない場合もあるので、他の企業の広報さんやメディアの方々との繋がりなど、会社員広報の時と比べて、幅広く人脈を持つことが必要になりました。
また、一業種で一社のみ担当するようにしているため、様々な業種の企業を担当することになり、接するメディアの方の幅も広がりました。例えば、ITを駆使して鮮魚販売を行う企業がありますが、IT業界でもあり水産業界でもあるので、IT系メディアと水産関連の専門紙とも接することができるようになりました。
「人脈」とは何か
そしてそれを活かせる人とは?
それまで仕事で直接関わることがなかった方も、長く付き合ってゆくと知人がつながり「こんな風につながるとは!」ということが良くあります。人との縁はとても不思議なもので、短いスパンで考えていると、縁は繋いて行けない気がします。
「尊敬する○○さんといつか一緒に仕事ができるよう、成長したい!」と思い続けていると、不思議なもので「そろそろ一緒に面白いことしようよ」なんてことに、例えば知り合って5年後になったりします。目先の自分へのメリットだけ考えて人と付き合うのではなく、「せっかく繋がったご縁なので、大切にしよう!」と思うことで、最終的に良い方向につながっていきます。
人脈とは「たくさんの人と知り合いになる」ということではなく、人との縁を大切にしつづけた結果どんどん繋がって、最終的に形ができてゆくもののような気がします。
今30歳前後の世代は、人脈を活用できている?
私が30歳の頃と比較すると、キャリアプランをきちんと考えていたり、勉強熱心でしっかりしている人が多く、社交性もあって『凄いなぁ〜』といつも思います。ただ、SNSなどを通じて多くの人と簡単に繋がれる時代だからこそ、単に多くの人を知っていることが人脈ではなく、人との繋がりの濃さが意味をなしてくるような気がします。他人を理解して受け入れて、自分を理解してもらって受け入れてもらって、という作業は、複数回会って話をして築くことができるもの、と私は思っています。そうすることで、本当の意味(助け合う関係)での人脈を築くことができるのですが、そこを少し端折る傾向があるように思います。
人脈を活かすには「相手の立場になって考えられる人」でいることが大切だと私は思います。常に相手のことを考えて行動したら、相手は心地いい気持ちになります。仕事がやりやすい人、と思ってもらえるでしょう。
「人脈づくりって面倒…」と感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとだけ相手のことを考えて動くことから始めてみては。メールの送り方、資料の作り方、その出し方など日常のことでかまいません。相手に合わせて変えることができたら、コミュニケーションがスムーズになります。信頼されるようになるし、「人脈」にもつながるでしょう。そうなると、仕事も必然的に面白くなっていくと思いますよ。
【執筆:永田知子】
ライター。福岡県出身。福岡大学人文学部卒。リクルート「九州じゃらん」、All About 等で編集と広告制作を担当。
2009年よりフリーのライター・編集者となり、旅行、食、インタビュー等の分野で旅行誌、webメディア、企業広報誌等で執筆。
2016年2月、17年の東京生活にピリオドを打ち福岡へUターン。ただいま福岡生活を謳歌中。
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