小島慶子さんに聞いた オーストラリアと日本の二拠点生活[前編]
小島慶子さんと言えば、TBS在籍中は“女子アナ”の枠を軽々と飛び越えてラジオパーソナリティとしても大活躍。フリーになってからも、数々の番組でコメンテーターを務める一方で、雑誌『VERY』の本音エッセイや、赤裸々な自伝的告白本を執筆するなど、多方面でマルチな才能を発揮する才女。夫の退職を機に一家でオーストラリアのパースに引越し、小島さん一人が東京と3週間ごとに行き来するという生活を始めてから3年。3年たった今だからこそ語れる”二拠点生活“を、3回にわたって語ってもらった。
移民の国オーストラリアのおかげで英語を話すことに完全に抵抗がなくなった
――生活のベースをオーストラリアに移してから3年。何が一番変わりましたか?
3年たったことで、“地元感”が出てきました。私の場合は日本と行き来しているので、正味1年半しか滞在していないわけですが、夫と子どもはまる3年ですからね。息子たちはもう英語には問題ないし、夫も上手になっているので、そのうち私が一家で一番英語ができない人になると思います(笑)。
――小島さんの英語は上達しましたか?
できるできないにかかわらず、使わなければならないので、文法がぐちゃぐちゃだったり単語が正しい選択じゃなかったとしても、とにかくしゃべるようになりました。オーストラリアはもともと移民の国なので、国民の英語の習熟度にも差があります。オーストラリアに引越したと聞いて、多くの方が「お子さん、オージー訛りになっちゃうね」と心配してくださるのですが、そもそも私たちの英語はすでに“日本語訛り”。世界中の人が、そのお国訛りの英語をしゃべっています。中国訛り、ベトナム訛り、タイ訛り、ポーランド訛り、南アフリカ共和国訛り、イラン訛り、インド訛り……。こうなると、何が“普通の英語”か分かりません。要は、意思疎通ができて、ビジネスや学問をする上で不自由のないようにしゃべれれば、訛っていようが何だろうが構わない。そう開き直ることで、まったく抵抗がなくなりました。
――パースの人々は親日的ですか?
1980年代から90年代は、日豪の交流がとても盛んで、学校の選択授業で日本語を選択した人もとても多かったんです。私と同世代の現地の人は、まず最初は私を見てアジア系だと分かると、中国の方ですかって聞くんですけど、「日本人です」って答えるとみんな、「こんにちは」「ありがとう」など、なけなしの日本語をしゃべりはじめる(笑)。昔、学校で習ったそうです。今は中国語を学ぶ人も多いですが、日本語を外国語の選択科目に入れている学校もたくさんあります。巻き寿司なんかすでに国民食のひとつですしね。オーストラリアは、親日国でもあるんですよ。【画像1】小島慶子/1972年生まれ。1995年、TBSにアナウンサーとして入社。その後、フリーとなり、2014年から家族と暮らすオーストラリアと、仕事のある東京とを3週間ごとに往復する生活を送る。主な著書に、『解縛(げばく)』(新潮社)、『大黒柱マザー』(双葉社)、『わたしの神様』(幻冬舎)などがある(写真撮影/八木虎造)
おすそ分けをきっかけにご近所と仲良しに
――パースでもご近所付き合いはありますか?
日本の町内会のようなものはなく、ごく近所の人とやりとりするだけですけど、いい人が多くって、楽しいですよ。ウチを挟んで裏がアデルさん。隣がリンさん。反対側が親子喧嘩の激しい家(笑)。向かいの家は、この間、新しいファミリーが引越してきたんです。自分たちがご近所に親切にしてもらったから、私も親切にしようと思って、「どうも~。向かいに住んでるケイコです~」ってあいさつに行きましたよ。無愛想な人が住んでると思われてもいけないし。
――まさに「向こう三軒両隣」的な規模ですね。あいさつ程度のやりとりですか?
我が家には前庭と後ろ庭があるんですが、後ろ庭は塀で囲まれていて、周囲の家の敷地と塀で接しているんです。裏の家ともそうで、裏の家のアデルさんていう人。中国系の方なんですが、彼女はすごく親切な人で、しょっちゅう塀の向こうから自宅でつくった野菜とかをくれるんですよ。「ハーブができました」とか言って。だから私も、日本から持ってきたお土産の緑茶をお返ししたりしてます。アデルさんは、ワフワフした犬を飼ってて、子どもたちが塀から犬見たさに隣をのぞいて「Hi!」とか言うと、犬を見せながらおしゃべりしてくれたり。私が日本から戻ってくると「戻ってきたの?」と声をかけてくれるし。
――ご近所さんと親しくお付き合いされているんですね
我が家のあたりは、パースの中でもサバーブ(郊外)ですが、とくに近所付き合いが濃厚っていう感じではないみたいですね。パースの中心街の周りにドーナツ状に広がっている郊外部なので、人の出入りも多いし、住人もそれぞれ忙しくしてたりもするので、そこまで濃密ではない点が、我が家にはちょうどいいです。例えば、強固なコミュニティができあがっているところだと、ガッチリと固まったところにこちらからなじまなくてはいけなくなるので、うまくいく場合もあるでしょうが、そうでない場合もあると思うので……。
――2人のお子さんもなじんでますか?
2人とも地元の公立の小中学校に通っているので、近所にたくさん友達がいるんですね。だから、何の前触れもなくチャイムが鳴って、友達が「遊ぼう」ってやって来たり。学校に来てる保護者同志がFacebookでつながって、「あの辺、変質者出たらしいよ」とか、そういった情報をやりとりしたりもしています。学校行事にも、親が積極的に参加するので、学校に対してボランティアをすることを通じて、地域の人たちと保護者とがゆるやかにつながっています。【画像2】オーストラリア大陸南西に位置するパース。シドニー、メルボルン、ブリスベンに次ぐオーストラリア第4の都市でもある。「古い建物が結構残っていて、きれいな街並みです」(写真提供/小島慶子さん)
″大黒柱“の仕事部屋はどこに!?
――2年前に小島さんが書かれた『大黒柱マザー』に掲載されている写真を見ると、とても広いお家ですね
平屋なんですが、8畳くらいの主寝室にごくごくコンパクトな洗面所とトイレ、シャワーブースがついています。それと玄関を挟んで反対側に、20畳くらいの客用リビングルームがあります。その隣にえらく古いキッチンがあって、そのキッチンとつながったスペースに、洗濯機を置く部屋があって、そのキッチンの前に10畳くらいのリビングがあり、そのキッチンと地続きになっているエリアに8畳くらいのダイニングのエリアがある。これがすべてひとつながりになってて。あとは6畳の子ども部屋が2部屋。夫が書斎みたいに使ってる部屋も6畳です。
――お部屋、たくさんあるんですね!
たくさんあると思うでしょ? でもこれでも小さいほうなんですよ、こっちでは。よく「豪邸だね!」って言われるんですけど、決してそうじゃなくて、規格がもともと大きいんですよね。土地が広いから。私は最初からプールなしの物件を探していたので、この家にはプールはないのですが、我が家くらいの平均的な家でプールがついている家もあります。
――今、聞いた中に、小島さんの仕事部屋がなかったのですが、まさか、“大黒柱”の仕事部屋がない!?
ないんです! だから私は主寝室にIKEAで買った細長い机を並べて、そこで書いてます。後ろがすぐベッドだから、「ああ疲れた」とベッドに倒れ込む誘惑にもかられますし、夫が寝てるときは夫のいびきがうるさくて。だから、次、引越す機会があったら、私の書斎が欲しい。これが私の夢なんです。
風邪で寝込んでいる家の中に不動産エージェントが!
――パースのお家は賃貸ですが、大家さんとの関係は良好ですか?
大家さんは、とてもいい人ですよ。もちろん間には、管理をする不動産エージェントが入っているんですけど。大家さんは近所に住んでいるので、不具合があれば、すぐに来てくれます。旦那さんがエンジニアで、ご高齢なんですけど、基本なんでも自分でやるんです。
――不動産エージェントは日系の会社ですか?
いえいえ、現地の会社です。不動産エージェントと付き合いがあるのは、そういう不具合があったときの連絡と、ホームインスペクション。だいたい1カ月に1回あって、不動産エージェントが、家の各箇所の写真を撮って、家をどんなふうに使っているのかをチェック。その結果を大家に報告します。
――1カ月に1回ってすごい頻度ですよね!
そうなんです。彼らは合鍵を持ってるので、「何月何日に行きます」と予告した上で、その日は勝手に入って来て勝手に出て行くんですね。ところが以前、私が風邪で寝ていたときに、水曜日に来るはずのホームインスペクションが、火曜日に来たんです。「ホームインスペクションは明日だから」と安心して寝てたら、ガチャガチャって音がして、担当の女性とは違う知らないおじさんが入ってきたんです。こっちはものすごく驚いて、「それは明日ではないか?」と確認したところ、やはり向こうの勘違いだったんですけどね。
――間違いじゃ済まされませんよね!
後で謝ってましたけどね。不動産エージェントとしては、「この人たちはどうやって家を使ってるのか」ということを、水まわりとか重要なポイントを中心に定期的にチェックして、大家さんに報告する義務があるんですね。それと同時に、こちらもホームインスペクションのときに、「庭の木の根が腐って倒れて来たんですけど、うちではもうどうにも対処ができないんです」って言えば、それを大家さんに連絡して木の業者を呼んでくれたりとかはしてくれます。それから、我が家は家をキレイに使っているので問題ないようなんですが、使い方がひどい人に対しては、大家さんが不動産エージェントを通じて「そういう使い方はやめてください」と要求することもあるようです。【画像3】直近の著書である『これからの家族の話をしよう わたしの場合』(海竜社)。まさにオーストラリアに引越して3年経った小島さんが、「子育て」「夫婦」「家族」を語っている(写真撮影/八木虎造)
テレビと同様の明快かつ的確な言葉を選んで話してくださった小島さん。「お国訛り」のくだりで、いろいろな国の名前がスラスラとよどみなく出てくることに、実は心の中で驚嘆していた私だった。次回の中編では、小島さんの住まい歴や、日本とオーストラリアの住宅観の違いを中心に語っていただく。●参考
・小島慶子オフィシャルブログ
・小島慶子Twitterアカウント
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