モバイル用Flash Player開発中止でゴノレゴさんがアドビにブチギレ? 作者のポエ山がアドビ本社の担当者を直撃

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モバイル用Flash Player開発中止でゴノレゴさんがアドビにブチギレ? 作者のポエ山がアドビ本社の担当者を直撃

昨年5月、『ゴノレゴさんがア○プルに問い詰めたいことがあるようです』という動画が『ニコニコ動画』に公開され、話題になりました。アップルがiPhone/iPadでFlashを再生できなくしていること、Flashから書き出した『AIR』アプリも規約で禁止したことに対して、ゴノレゴさんがアップルにブチギレするという内容。その後アップルの規約変更により『AIR』アプリが動作することになったのですが、今度はゴノレゴさんがアドビに問い詰めたいことがあるようです。ガジェット通信は、作者であるクリエーターのポエ山氏と米Adobe Systems社のFlashプラットフォーム主席プロダクトマネージャーであるMike Chambers氏の対話の場をセッティング。ゴノレゴさんの怒りとユーザーとしての疑問をぶつけてもらいました。

左がMike Chambers氏、右がポエ山氏

ゴノレゴさんの怒りの矛先は?

モバイル用『Flash Player』開発中止で…… ブチギレ

12月3日と4日に開催された、Flashの最新技術や事例が発表されるユーザーイベント『FITC TOKYO 2011』で、ポエ山氏が『それでもFLASHアニメが好きなので、』というタイトルで講演。『ゴノレゴ』シリーズ新作が上映され、ゴノレゴさんがアドビにブチギレしました。怒りの矛先は、先日アドビがモバイル版『Flash Player』の開発中止を発表したこと。

昨年ゴノレゴさんは「Flash通の最新流行はAndroid」と、『Flash Player』に対応したAndroidをプッシュしたにもかかわらず、アドビがAndroidで動作するモバイル版『Flash Player』を開発中止することに、「スティーブ・ジョブズ(作品ではモザイク)に嫌われたからって、諦めてるんじゃねえよ」「お前は本当に、HTML5にシフトできると思っているのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい」と、痛烈に批判しました。

アドビに感想を聞いてみた

この講演後、別セッションで講演したMike Chambers氏にゴノレゴさんとポエ山氏の疑問をぶつけてもらいました。

ガジェ通:Mikeさんはポエ山さんの『ゴノレゴ』のアニメーションはご覧になったことはありますか?

Mike:見せてもらったことはあるんですが、キャラクターが何を言っているかは通訳してもらってないので分からないんです。

ガジェ通:ではポエ山さんからどんな内容だったか説明を……。

ポエ山:昨年作ったアニメなんですが、『iPad』が『Flash Player』に対応していないことについて、ゴノレゴさんというアニメのキャラクターが怒っているという内容です。

昨年の作品の中では「iOS端末はFlashコンテンツが使えないから、『Flash』を使ってる人たちはAndroid端末をみんなで使おう」というメッセージが込められていたんですけど、モバイル用『Flash Player』の開発中止という発表を受けて今日上映した作品は、「Android端末をプッシュしたのに、開発中止になってしまうのはどういうことだ」という内容のアニメだったんです。

Mike:怒っていらっしゃるのはそのキャラクターだけじゃありませんね。

ガジェ通:Mikeさんはゴノレゴさんの怒りに対してどう思いますか?

Mike:そのキャラクターが言うことはよく理解できますね。その声というのは開発者コミュニティのいろんな方の声を反映したものだと思います。

ただ、我々はプラグインの開発を継続していくのが妥当ではないと考えたわけです。それにはいろいろ理由があります。

※ここでMike氏が開発中止の理由について説明。詳細は先日アドビがプレス向けに開催した説明会の記事をご覧ください。

参考記事:
アドビ製品をサブスクリプション形式で提供する『Adobe Creative Cloud』とは何か
https://getnews.jp/archives/154821[リンク]

HTML5は本当に使えるのか?

ゴノレゴさんはHTML5を疑問視

ガジェ通:アニメを制作されているポエ山さんは、HTML5をどうご覧になっていますか? ゴノレゴさんは「全然ダメだ」と言っているようですが。

ポエ山:Googleの『Swiffy』ですとか、アドビの『Wallaby』といったツールを使って『Flash』のswfファイルをHTML5に変換してみたんですが、いろんな面で『Flash』の方が優れていることが分かりまして、アニメを作るうえでは現状、HTML5は選択肢にないなと思っています。

ガジェ通:具体的にはどんなところがダメだったんでしょう。

ポエ山:非常にサイズが大きくなってしまうんですね。swfの10倍ぐらいのサイズになってしまう。作り方によって対処のしかたがあると思うんですが、そのまま作るのは難しい。

あと、今まで『Flash』のブームとかがあったので、過去のコンテンツがたくさんあるんですが、それがいずれ見られなくなってしまうことに不安があります。

Mike:『Flash Professional』がアニメ制作においては標準だと思います。HTML5を念頭に置いて作っている『Edge』というツールがありますが、こちらはこれまで『Flash』を使っていなくて、動画制作やアニメーション制作をしているユーザーがターゲットになります。

現在『Flash Professional』を使っている開発者やアニメーション制作者に対して、それを使い続けてもらいながらHTML5向けにコンテンツを作ってもらうにはどうしたらよいのか、という点で時間を使っています。

その際には可能性があるアプローチがいくつかあって、その研究を進めています。ひとつは『Wallaby』、もうひとつは『EaselJS』です。『EaselJS』は私も協力しているのですが、Grant Skinnerが作ったライブラリで、『Flash』のDisplay List APIをJava Scriptに作り変えるものです。

そしてアドビとしてではありませんが、私とGrantがやっているプロジェクトで、『Flash』のフルのタイムラインアニメーションをエクスポートしてCanvasに載せるというものがあります。これはまだ技術的には早い段階で、HTML5自体も新しいものなので、ファイルサイズの面やオーディオの同期に関しても十分という状態にはいっていません。

『Flash Professional』からHTML5向けに制作できる方向でも作業していますが、目に見える計画を見渡すところでは、ブラウザ上の『Flash Player』がアニメーションについて最も適切と言えると思います。モバイルのブラウザをターゲットにするにはHTML5のソリューションを考えていかなければならないのは厳然とした事実だと思います。これはAndroid用『Flash Pleyer』があろうとなかろうと、iOSの状況がある中ではHTML5をソリューションにしなければならない。

ガジェ通:HTML5用のアニメーション制作ツールという役割は今後『Edge』が担っていくのでしょうか。

Mike:まだ分かりません。アニメーション制作で『Flash』を使っているのであれば、2年後もその状態は変わらないのではないかと思います。そこからHTML5にアウトプットするようになるのかどうかというところはまだ分かりません。いろいろなオプションを考えているところです。

(取材に同席したアドビ システムズの太田禎一氏):ポエ山さんに『Edge』を使い始めることをお勧めしますか。

Mike:アニメーションを含め、ということになりますが、ウェブ向けのリッチコンテンツを制作する場合にはHTMLになじみ、それを知ることは重要だと思います。HTMLでは何が限界なのか、何が可能なのか知る必要があると思います。だからといって今、HTMLを使わないと言っているわけではありません。クライアント企業や従業員からHTMLに関する問いかけが出てくると思うので、理解しておく必要はあると思いますね。『Flash Player』の新しいバージョンの開発というのも進んでいます。今手がけていらっしゃるアニメーションに関しては今後も『Flash Player』が使われていくということになると思います。

コミュニティの信頼を回復したい

ガジェ通:モバイル版『Flash Player』の開発中止について、アメリカを含む海外のFlash開発者のコミュニティからはどんなフィードバックがありましたか。

Mike:モバイル向けのFlashコンテンツをほとんどの人が作るというわけではないと思いますが、全体的に言うと、今回の意思決定に多くの人から反対があったわけではありません。

ただ、「それの伝え方はどうだったのか」「そのタイミングはどうだったのか」、またプレスでの取り上げられ方についての意見はいただきました。そこについてはもっとよいやり方があったのではないかと考えています。これまでの歴史を考えてみても、プレスには今回のことについて「アップルが勝った」「アドビが負けた」という伝え方をされるだろうなと分かっていました。

Flashのコミュニティが最もフラストレーションを感じている問題というのは、彼らはこれまで「Flashがいい」と弁護側に回ってきた、支持してくれていたということがあります。

太田:ゴノレゴさんはその代表ですよ。

Mike:そうですね。自分の評判をかけてまで支援してくれていた。「Flashがいい」「iPhoneがいい」と揺れ動く中、『Flash』を推し進めてくれていた。にもかかわらず、アドビがそこから撤退するということには、「アドビを擁護してきた自分はどうなるんだ」「裏切られた」という感情を持ったと思います。そういう気持ちを持たれることは、私自身よく理解できます。そのせいで、アドビとコミュニティの信頼関係が損なわれてしまった。その信頼を取り戻すというのは簡単にできることではないことも分かっています。最終的に正しい判断だったのか、ということは長期的に見て判断されることだと思います。

『Flash』はPCで存続していく

ガジェ通:お話を聞いてみて、ポエ山さんどうですか?

ポエ山:そうですね。アップルが今後も『Flash』に対応させる気がまったくないというのは仕方ないと理解できるんですが、今後5年10年たったときに『Flash』がどうなっているのか不安があります。アニメーションツールとしてもずっと残っていってほしいので、是非お願いしたいと思います。

Mike:私たちは今後も『Flash』を長期に存続させていく一番いいやり方はPC向けということになると思うので、継続して開発していきます。HTML5は今後も普及していくと予測できるので、私たちのツールを使ってHTML5で配信できるように開発を続けていきます。

アドビのミッションはウェブ上でクリエイティビティを発揮してもらうお手伝いをしていくことです。これまではFlashのみがその手段だったのですが、今後はFlashを介して、HTML5を介してと両方になります。

ガジェ通:ありがとうございました。

『LOL -lots of laugh-』アニメPV

Mike:ところで、ポエ山さんに質問があります。女の子(初音ミク)が歌うアニメーションはあなたが作ったんですよね? 有名なアーティストなんですか?

ポエ山:『VOCALOID』という音声合成のソフトですね。

Mike:『VOCALOID』? それは知らなかった。あのアニメーションはすごかったです。娘が見たらすごく気に入りそうです。

ポエ山:ありがとうございます。

* * * * *

最後にMike氏から、ポエ山氏が上映したアニメPV『LOL -lots of laugh-』についての質問も飛び出し、対談は和やかなムードで終了しました。ポエ山氏からは、アニメーション制作ツールとしての『Flash Professional』へのリクエストが伝えられ、Mike氏は「担当チームに伝えます」と回答。ゴノレゴさんの怒りは鎮まったでしょうか?

参考サイト:
【初音ミク】LOL -lots of laugh-【オリジナル】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8033594[リンク]

FITC TOKYO 2011
http://www.fitc.ca/events/about/?event=126[リンク]

参考記事:
ポエ山が新作Flash「ゴノレゴさんがア○プルを問い詰めたい」を久々に公開!
https://getnews.jp/archives/60795[リンク]

ゴノレゴさんのおかげ!? アップルの規約変更でFlashから書き出したiPhoneアプリ解禁へ
https://getnews.jp/archives/76168[リンク]

モバイル向け『Flash Player』は次期版の11.1で今後の開発を終了 アドビが正式発表
https://getnews.jp/archives/151107[リンク]

「HTML5 vs Flash の抗争にすればページビューが稼げるんでしょう」 アドビのFlashプラットフォーム担当者が“HTML5”と“ゲーム”を語る
https://getnews.jp/archives/140401[リンク]

12月12日追記:
『ニコニコ動画』にこの日上映された動画が公開されました。
ゴノレゴさんがAd○beにブチギレているようです(ニコニコ動画)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16388716[リンク]

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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

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