2017年1月から「育児・介護休業法」はどう変わるのか?

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会社の育児や介護の休業制度は、それぞれの会社によって異なるものの、大前提として「育児・介護休業法」という日本の法律にのっとっています。その法律が2017年1月から変わって、休みを取るしくみが変わります。人によっては休みが取りやすくなる場合も出てくるでしょう。

今回は、「育児・介護休業法」の改正ポイントについて、詳しく解説していきたいと思います。

<INDEX>
【育児休業編①】「子の看護休暇」が柔軟に取りやすくなる
【育児休業編②】有期契約労働者が育児休業を取得する条件が緩和される
【育児休業編③】育児休業等の対象となる子の範囲が拡大する
【育児休業編④】マタハラ・パタハラ防止措置が会社に義務付けられる
【介護休業編】分割取得が最大3回まで可能になる
私たちは子育てや介護と働きながらどう向き合うべきか?

【育児休業編①】「子の看護休暇」が柔軟に取りやすくなる

f:id:arkcomm:20161206140250j:plain子育てのために会社を休む制度には、「育児休業」の他に、「子の看護休暇」というものがあります。おおまかにいうと、「育児休業」は、原則として子が1歳になるまで会社を休むことができる制度。「子の看護休暇」は、未就学児童の看護が理由であれば年5日(子が2人以上いる場合は10日)まで会社を休むことができる制度です。例えば、子が3歳で受ける予防接種の付き添いで会社を休む時は、「子の看護休暇」を使うことができます。

現行の法律では「子の看護休暇」が、1日単位・最大年5日(子が2人以上いる場合は10日)しか取得できません。これが法改正後は、半日単位・最大年10日(子が2人以上いる場合は20日)※まで取れるようになります。「短時間で済む予防接種のために、半休をもらいたい」といった場合に便利といえるでしょう。

※「半日単位・最大年10日」とは、半日単位の休暇を最大年10日取得することが可能、つまり、半日単位の休暇を最大年10回取得することが可能という意味です。「最大年10日分取得できる」という意味ではございませんので、ご注意ください。

【育児休業編②】有期契約労働者が育児休業を取得する条件が緩和される

法律上、育児休業は雇用形態を問わず取得することができます。しかしながら有期雇用契約の場合、育児休業を取るには、一定の条件を満たすことが必要で、これが高いハードルとして、育児休業の取得を難しくしています。この条件が、法改正によってわずかながら緩和されます。

有期契約労働者の育児休業の取得条件

【現行】以下3要件を全て満たさなければならない。

A.同じ事業主に1年以上雇用されている。

B.子が1歳以降も雇用継続の見込みがある。

C.子が2歳までの間に契約更新されないことが明らかでない。

【改正後】以下の2要件に緩和される。

A. 同じ事業主に1年以上雇用されている。

B.子が1歳6か月になるまでの間に契約更新されないことが明らかでない。

従来は子が2歳になるまで雇用契約の見込みがないと、育児休業は取れませんでしたが、法改正によって、雇用の見込みが必要な期間が、子が1歳6か月になるまでに短縮されることになります。

【育児休業編③】育児休業等の対象となる子の範囲が拡大する

現行の法律では、実子または養子を育てる場合にのみ、育児休業が認められています。これが改正後になると、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等についても、育児休業等の対象となります。法律の枠組みからこぼれ落ちていた子どもたちを、守るための措置です。

【育児休業編④】マタハラ・パタハラ防止措置が会社に義務付けられる

●マタハラ・・・マタニティー・ハラスメントという和製英語の略語。働く女性への、妊娠や育児を理由にしたいやがらせ。

●パタハラ・・・パタニティー・ハラスメントという和製英語の略語。Paternityは「父であることの」「父系」の意。男性が育児に関わろうとすることへのいやがらせ。

これまでも、妊娠・出産・育児休業・介護休業等の不利益な取り扱いは禁止されてきましたが、法改正によって、会社によるマタハラ、パタハラの防止措置が義務付けられるようになります。具体的には相談窓口の整備や、従業員への周知・啓発を会社が行うことになるでしょう。マタハラとパタハラを懲戒解雇事由にする会社も出てくるかもしれません。

育児休業の制度変更をハードの整備とするなら、こちらは従業員の心理に訴えるソフト面の取り組み。2つが合わさることで、子育て環境がより良くなると期待したいところです。

【介護休業編】分割取得が最大3回まで可能になる

f:id:arkcomm:20161206143805j:plain介護制度に関する法整備は、育児制度と比較して後手に回ってきました。それが2017年1月からの改正で、ようやく介護にも手が入り、より便利な制度に変わります。いくつかある変更のうち、インパクトが大きく、これから便利になるだろうという印象があるのは、「介護休業の分割取得」です。

介護が必要になった対象家族1人につき、最大93日の介護休業が取得できるという日数の部分は、これからも変わりありません。変わるのは取得の方法です。従来は、休みを一括で取るしかありませんでしたが、改正後は最高で3分割できるようになります。

例えば介護施設に入居する場合を考えてみましょう。入居には「施設のリサーチ」「施設への引っ越し」「落ち着くまでの様子見」といった段階があります。現行法では93日の間にこれら全てを終わらせる、あるいは、親戚の力を借りながら、自分は「施設のリサーチ」だけを担当するといった方法を取らざるを得ませんでした。それが今後は、リサーチに31日、引っ越しとその施設での定着に31日、その後の様子見に31日と、重要なタイミングに合わせて介護休業を分割して取れるようになります

なおこの他にも、介護休暇の取得単位が1日から半日になる、労働時間の短縮や制限などの変更があります。

私たちは子育てや介護と働きながらどう向き合うべきか?

ここまで育児休業と介護休業が、2017年からどのように変わるのかを見てきました。法改正の背景にあるのは、働きながらの子育てや介護が当たり前になりつつあるという社会の変化です。変化のなかで私たちは、子育て、介護、仕事を、どのように考えれば良いのでしょうか? そのヒントについて、本稿を監修する社会保険労務士・中村俊之先生にうかがいます。

中村俊之先生プロフィール・・・特定社会保険労務士。中村社会保険労務パートナーズ代表。中央大学法学部を卒業後、日本コロムビアを経て独立。30年にわたり人事・労務一筋に携わり、人事制度の構築、人事労務相談・研修講師に従事。著書に『最新版 やさしくわかる労働基準法』(ナツメ社)などがある。

中村先生:今回は、育児に話の焦点を絞ってお話をしたいと思います。

働きながらの子育てが当たり前になった現代において、WLB(ワークライフバランス)という考え方にもつながりますが、「子育て」と「仕事」は同じ次元の問題です。2つを切り離して考えることは、もはやできません。子育てはパートナーに任せて、自分は仕事だけに専念しようと考えることができる時代は終わりつつあります。

若い人たちはそれを敏感に感じ取っていますから、就職活動や転職活動の会社選びで、育休の取りやすさといったポイントをチェックする人が増えているのは当然といえるかもしれません。

子育てのしやすさという観点で会社を見ると、まず目に付くのが、育児休業をしっかり取得できる社内風土や、取得できる育児休業の期間。従業員が長い休みを取っている実績のある会社が魅力的に見えてくるでしょう。

ですが世の中には「仕事で成功したい」「能力を開発したい」とするキャリア志向型の働き方を選ぶ道もあることを忘れないでください。キャリア志向型の働き方と、子育ては、相性が良くないように考えられがちですが、けっしてそんなことはありません。規模が大きい会社のなかには、社内に保育施設といった子育てインフラを用意するところも現れており、それを活用すれば、早く仕事に復帰し、キャリア形成をしながら子育てを両立することも可能になります。

若い人たちは、自分のやりたい仕事、開発したい能力、キャリアステップ、働き方をしっかりと考え、そのためにはどのような育休制度や子育てインフラが必要なのかを知り、理想に近い会社を見つけて欲しいと思います。

監修:中村俊之 (中村社会保険労務パートナーズ http://nakamura-partners.com// )

文:本山光

編集:大山勇一(アーク・コミュニケーションズ)

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