住宅はいま買い時? ローン金利と増税延期、プロはこう見る
住宅金融支援機構は、「平成28年度下期における住宅市場動向について」を公表した。この調査の特徴は直近の平成28年(2016年)度下期の買い時感などを、住宅取得を検討中の一般消費者、住宅事業者、ファイナンシャルプランナーに聞いていること。注目したのは、「消費税率10%への引き上げ時期を2019年10月まで2年半延期した」こと。どんな影響を受けると思うかは、立場が異なると変わるようだ。【今週の住活トピック】
「平成28年度下期における住宅市場動向について」を公表/住宅金融支援機構
平成28年度下期は、消費税増税延期+住宅ローンの低金利で買い時か?
今回の公表された結果は、一般消費者(平成28年10月から1年以内に住宅取得を検討中の25~59歳の男女、回答数1100)、住宅事業者(【フラット35】の利用があった事業者、回答数740)、ファイナンシャルプランナー(セミナー等の同機構業務協力者、回答数42)に対して、平成28年8月に調査を実施した結果をまとめたもの。
一般消費者に、「これから半年以内(平成28年10月~平成29年3月)は、住宅の買い時だと思いますか?」と質問したところ、「買い時だと思う」が58.5%で「買い時ではない」の8.6%を大きく上回った。また、「どちらとも言えない」も32.8%と多くを占めた。
「買い時だと思う」と回答した人(644人)に買い時と思う理由を聞いたところ、「消費税率引き上げが再延期されたから」が最多の68.9%だった。僅差の62.6%が「マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから」を理由に挙げ、増税前+低金利が買い時感を高める構図となっていることが分かる。
一方、ファイナンシャルプランナーには、「平成28年度下期の住宅取得環境は?」と質問し、「平成27年度下期と比べて買い時」という回答が69.0%と一般消費者同様に高く、「買い時ではない」は4.8%、「どちらとも言えない」は26.2%だった。
ただし、買い時と見る要因が一般消費者と少し違う。「マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから」が93.1%とダントツに高く、「消費税率引き上げが再延期されたから」は24.1%に過ぎない。プロのほうは、一段と下がった住宅ローンの低金利が、買い時に強く影響すると見ているわけだ。
◎「平成28年度下期は買い時か?」の「買い時」と思う要因と「買い時ではない」と思う要因 調査対象:一般消費者
■「買い時」と思う要因(n=644 複数回答・3つまで)
1位:消費税率引き上げが再延期されたから 68.9%
2位:マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから 62.6%
3位:今後住宅ローン金利が上がると思うから 20.5%
4位:景気の回復感が徐々に広がっているから 17.4%
5位:住まい給付金、贈与税非課税措置(住宅取得等資金)、住宅ローン減税等があるから 15.1%
6位:今後住宅価額が上がると思うから 9.2%
7位:その他 0.5%
■「買い時ではない」と思う要因(n=95 複数回答・3つまで)
1位:景気の先行き不透明感が広がっているから 45.3%
2位:消費税率引き上げが再延期されたので少し様子をみたいから 33.7%
3位:将来の収入に不安があるから 23.2%
4位:住宅価額等が上昇しているから 22.1%
5位:住宅ローン金利がしばらく上がりそうもないから 17.9%
6位:住まい給付金、贈与税非課税措置(住宅取得等資金)、住宅ローン減税の効果が見込めないから 9.5%
7位:その他 6.3%
(出典/「平成28年度下期における住宅市場動向について」住宅金融支援機構)
消費税増税再延期で、様子をみる消費者が増えて住宅を買わなくなる?
実は、消費税増税再延期については、一般消費者の「買い時ではない」の理由にもなっている。「消費税率引き上げが再延期されたので少し様子をみたいから」が33.7%で理由の2番手に挙がっている。
一方、住宅事業者に対して、平成28年度下期の受注・販売等の見込みは「平成27年度下期と比べて増加」が46.8%と最も多かったが、「平成27年度下期と比べて同程度」が34.6%で、「平成27年度下期と比べて減少」は18.6%となった。
注目している消費税増税再延期は、増加・減少のどちらの要因にも挙がっている。
まず、増加すると回答した事業者(340)がその要因として挙げたのは、「マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから」の67.6%が最も多く、「消費税率引き上げが再延期されたから」は24.4%にすぎない。
次に、減少すると回答した事業者(135)にその要因を聞くと「消費税率引き上げ再延期で、エンドユーザーの買い急ぎ感がなくなったから」が58.5%と過半数を占めた。つまり、住宅事業者では、消費税増税の「駆け込み需要」を期待していたのに、先に伸ばされて需要が冷え込んだと考える向きが見られるわけだ。
◎「平成28年度下期の受注・販売等の見込みは?」の増加する要因と減少する要因 調査対象:住宅事業者
■増加する要因(n=340 複数回答・3つまで)
1位:マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから 67.6%
2位:その他 28.5%
3位:消費税率引き上げが再延期されたから 24.4%
4位:住まい給付金、贈与税非課税措置(住宅取得等資金)、住宅ローン減税等があるから 15.9%
5位:住宅価額等の先高感があるから 13.2%
6位:金利先高感があるから 12.1%
7位:景気の回復感が徐々に広がっているから 8.2%
■減少する要因(n=135 複数回答・3つまで)
1位:消費税率引き上げ再延期で、エンドユーザーの買い急ぎ感がなくなったから 58.5%
2位:景気の先行きに不透明感が広がっているから 37.8%
3位:その他 28.1%
4位:住宅価額等が高騰しているから 26.7%
5位:住まい給付金、贈与税非課税措置(住宅取得等資金)、住宅ローン減税の効果が見込めないから 8.1%
(出典/「平成28年度下期における住宅市場動向について」住宅金融支援機構)
一般消費者の方に注意していただきたいのは、増税のタイミングにとらわれすぎないことだ。購入するタイミングにあり、資金計画にも無理がないなら、落ち着いて物件やローンを選べる今の時期は、消費者にとっては好環境といえるだろう。でも買い急ぐと、冷静な判断ができなくなって後悔するということもありえる。外的環境にとらわれることなく、自分たちが買いたい、買えるという環境にあるかどうかを考えてほしい。
リフォーム、リノベーションや買取再販は今後増える!?
今回の調査では、リフォーム、リノベーションや買取再販についても質問している。リフォームは「クロスの張り替え等簡易な修繕工事」、リノベーションは「省エネなどの性能や機能を向上させる工事」、買取再販は「既存住宅を買い上げ、リフォーム・リノベーションを行って再販売する事業」と定義して、住宅事業者に実施意向を聞いたところ、他社との連携を含む実施済みが63.7%、検討中の事業者を含めると80.6%がこうしたことに取り組むことが分かった。
一方、一般消費者に「『リフォーム』された中古住宅購入や購入と併せて『リフォーム』をする住宅取得」への関心度を聞くと、43.3%が「関心があり、検討している」と回答している。
住宅を建てて売るだけでなく、リフォームなどをして売ったり、リフォームなどを請け負ったりする事業者が増えつつあり、消費者の関心度も高まっているということから、今後の広がりが期待される。
さて、住宅の取得は高い買い物になるだけに、消費税率2%アップの影響は大きい。だからといって、それだけで買い急ぐことのないように、選択肢を幅広くもって、市場の相場などを前もって調べて、準備を怠らないようにしてほしい。住宅は出会いの影響が最も大きいので、きちんと準備した人に最適な出会いが訪れるものだ。
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