老舗うなぎ店の若女将に「うなぎの通な味わい方」を聞いた【美人ママさんハシゴ酒】

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第12回:うなぎ通ならわさびで食すのも粋! 大塚うなぎ「宮川」八馬玲奈若女将

担当のM氏が「うなぎのうんちくを教えてくれる美人女将はいませんかねぇ」と聞いてきた。ほう、うなぎか。そりゃ、いいや。うなぎで一杯やりたいね。そこで、うなぎジャーナリストの山室賢司さんに東京23区内で、美人女将がいるうなぎ屋さんを聞いてみた。で、教えてくれたのは、大塚にある「宮川」さんだ。

というわけで、大塚駅。

JR山手線の大塚駅もあるけれど、こちらは都電荒川線の大塚駅前。

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実は、M氏が取材依頼をしたのは、土用の丑の日の少し前。さすがにこの時期はかなりお忙しいとのことで、取材は8月になってからとなった。というわけで、8月の炎天下を歩いて、お店へ。

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駅前の大きなパチンコ屋さんの裏手にそのお店はあるよ。

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はい、ここの看板が出ているところを曲がるとお店がありますよ。

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女将さんがこの猛暑のなか、立って出迎えてくれた。

おお、とっても美人な女将さんじゃないですか!

「予約をいただいていた3名様ですね」と女将。若女将の案内で和室に通される。

なぜ都内には“宮川”という店名のうなぎ屋さんが多いのか?

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まずはこの企画、いつも女将さんと最初に乾杯させていただいているんですが、たとえばお客さんが「女将にお酒をおごりたい」というのはアリなんですか? と聞いてみた。

「もちろん大丈夫ですよ」と若女将。

それでは、女将さんと乾杯したいのですが、なにがよろしいでしょうか。

「それじゃ、ビールですかね」

じゃ、瓶ビールをお願いします!

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なんだかうれしいな。ビールを注ぐ若女将の所作もなかなか美しい。

それでは、カンパーイ!

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さすが若女将、飲みっぷりがいいですね。そして、「たくさん撮るんですね」とカメラマンのシャッター音に驚いている。

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ところで、さっそくうかがいたいのですが、やはりうなぎの通といわれる方って、土用の丑の日には必ずいらっしゃるんですか。

「いえ、むしろ逆ですね。土用の丑の日にいらっしゃる方は年にこの日しかうなぎを食べないという方が多くて、お好きでよく召し上がられる方は、この日は避けられますね」

へえ、そうだったんだ。知らなかった。その理由は、あとからわかるよ。

若女将と大女将が運んできてくれたのは「月懐石」(5,250円)というコース料理。

これは最初に出される前菜盛り合わせだ。ちなみに前菜を運んできてくれた大女将もかなりの美人であった。

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前菜の盛り合わせの内容について若女将に聞いてみた。

「左上のオレンジ色のものが『パプリカのムース』。その隣の五角形の器に入っているのが、『養老豆腐』といって、山芋を細かく刻んで、豆腐の形にしたものです。シャリシャリした独特の食感があります。

どれも手が込んでいて、繊細な味わいですね!

「モミジの横にあるのが、鴨のハムで、その隣が穴子寿司、そこにたてかけられているのが茗荷の酢漬け。その下にあるのが、姫サザエの醤油煮となります。その隣はお麩を茄子の形に模したもので、ほのかに柚子で味がつけてあります。その隣がタタミイワシとチーズの炙りになります」

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いろいろな味と種類を楽しめて、最高に美味い。

あー、こういうのいただいていると日本酒が欲しくなりますね」と編集担当M氏の方を見る。M氏、僕と目を合わせないようにして前菜を食べている。

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「さきほどのうんちくではありませんが、うなぎがお好きな方というのは、ビールよりも日本酒を召し上がられる方が多いですね。もともと大塚という土地柄、日本酒を出すお店も多いですしね」

あー、大塚って、昔は花街でしたものね。

「今でも数は少ないのですが、芸者さんがおりまして、ウチでもお呼びすることができるんですよ」

なるほど、単にうなぎを食べるというだけではなく、エンターテインメントとしても楽しめるってことなんだね。

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「手元のメニューを見ると、『夏季限定 冷酒特別メニュー』っていうのがありますね」と少し大きめの声で言ってみる。

M氏は聞こえないふりをして黙々と前菜盛り合わせを片付けている。

ところで、若女将、都内には「宮川」を名乗るうなぎ屋さんが多いですよね?

「ああ、それはよく言われますね。うちは、創業が明治40年(1907年)なんですよ。場所は大塚なんですが、ここではないんですけどね。東京にある宮川の総本山ともいえるのが、築地にある宮川本廛(みやがわほんてん)さんで、こちらの創業が明治26年(1893年)で、うちの初代は築地の宮川で修行した暖簾分け一号店だったんです」

えっ、じゃあ、数ある宮川の中でもこちらは、老舗中の老舗なんだ。これもうんちくのひとつになるね。しかし、なんでこんなに宮川が都内には多いんですかね。

「宮川本廛から暖簾分けしたお店が10店舗ほどありまして、そこからさらに暖簾分けしたお店がありますんで、それで増えたというのが理由のひとつですね。あと、これは聞いた話なんですが、バブルの時期に『宮川』という名前をつければ、お客さんが来るということで、暖簾分けではないお店もたくさん出来たらしんですね」

あー、なるほど、たしかに、バブルの頃、やたらと「宮川」ってうなぎ屋さんがあったね。

「通っぽく振る舞える注文の仕方」を教えましょう

M氏が「ところで、うなぎ屋さんでの注文の仕方で通っぽく振る舞える方法ってありますか」聞く。

おっ、いい質問だ。

「今の時期ですと(取材時は8月)、うなぎだけ注文するお客さんが多いのですが、注文を受けてからうなぎを蒸しますので、30分前後、お時間がかかるんですね。ですから、お酒などをいただきながら、なにかおつまみを食べていただくと、ちょうどいい頃にうなぎがお出し出来ますね」

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僕は「うざく」が好きですね。

「いいですよね、大人っぽいイメージです。もともと『うざく』は三重県の郷土料理なんですね。名前の通りざくざくというきゅうりの食感と柔らかい鰻を酢の物にした料理なんです。私はメニューに”大人の郷土料理”って書き添えているんですよ」

あー、なるほど、これもうんちくのひとつですね。

「あと、肝焼きなども人気なんですが、一本の肝焼きに対して八本の鰻の肝を使っているんですね。ですから、数に限りがありますのでご予約をおすすめします」

なるほど、肝焼きは予約しておくのが通ですね。

「私の主人は四代目なんですが、うなぎだけではなく、割烹の修行もしてまして、いろいろなお料理をご用意しております。お刺身や天ぷらなどもお出しできるのですが、その時期の旬のものを召し上がられる方は通だなって思いますね」

なるほど、旬のものね。和食は奥が深いね。

ちなみに若女将は東京都内の出身だそうだ。ご主人が大塚宮川の三代目の長男ということで、結婚して女将の道を選んだのだという。

「ところで、うちのうな重はご飯が多めなんですよ。お茶碗の1.5杯分あるんですけど、どうしましょう」と女将。

「多ければそのほうがいいですね!」とM氏。さらにカメラマンの沼田氏は「通常の量で」と注文。僕は「少なめで」とお願いした。これはありがたい、最近はうな重を食べて、ご飯を残すこともあるからだ。やはり残したくはないからね。

うな重をワンランクおいしくさせる裏ワザ

ってことで、やってきましたぜ、うな重。やっぱり、このふたを開ける瞬間がわくわくするね。

というわけで、オープン・ザ・うな重!

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ほら、こんなんでました。さっそくいただきます。

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ところで、山椒は最初からかけちゃってもいいんですか?

「そうですね、お好みですね。お客さんによっては、いったん山椒をかけられて、再びふたを閉めて、蒸らす方もいらっしゃいますね」

それって通っぽいですね。さっそくやってみよう。

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まず、まんべんなく山椒をかける!

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そして、再びふたをする。

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しばらく待ってみたら、フタに手をあててみましょう。そこでふたが温まっていたらOK

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あー、よくなじむんだね。これはうまいね。

「さらにもうひとつ美味しい食べ方があるんですよ。それは、本わさびをうなぎにのせることなんです」

えっ、白焼きにわさびっていうのが一般的だけど、うな重にも?

「やってみます?」

もちろん!」(一同声を揃えて)

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ジャーン! 本わさびと鮫皮おろし~!

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うわぁー、香りがいいですね。

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このおろしたてのわさびを、オン・ザ・うなぎ!

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うぁー、初めて食べたけれど、おいしいですねぇ。

「この食べ方が一番だとおっしゃっている方がけっこういらっしゃいますよ」

へえ、こちらではお願いすればわさびをおろしてもらえるんですか?

「うちのうな重は1,900円から4,400円です。そのほかに今回の月懐石にはない特別なうなぎで、『共水(きょうすい)うなぎ重』というのがありまして、そちらが5,500円なんですけど、こちらですといっしょにわさびはお出ししています。ですから、注文していただければ、いつでもご用意できますよ」

ちなみに「共水」というのは会社の名前で、日本で初めて養殖うなぎでブランド化に成功したうなぎだそう。自然豊かな環境で、通常の2倍以上の月日をかけて育てているんだって。なんだかおいしそうだね。

「この本わさびは注文して残ってしまったら、お持ち帰りもできますので」

うなぎ通が「土用の丑を避ける理由」とは?

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そして、肝吸いもオープン!

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肝がぷりぷりでおいしいですねぇ。

ホント、おいしい肝吸いです。

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「見た目ではわかりづらいのですが、うちはうなぎをさばいたその肝を使っているんですが、お店によっては肝だけは別に発注していて、冷凍ものを使っている場合があるんですよ」

たしかに、ちょっと水っぽい肝に出会うこともあるよね。あれは冷凍なんだろうか。

いやいや、それにしてもふっくらして、香ばしいうなぎですね。

あっという間に平らげてしまいました。

「うなぎって1匹につきだいたい100本くらいの小骨があるんですね。うちは小さいお子さんにも食べていただけるようにと、小骨を全部抜いているんですよ」

うわわ、すごい手間ひまをかけているんですね。そりゃ美味しいわけだ。丑の日なんかは、ものすごく混むんでしょう? 「お客さんの中には女将と話しに来る方、ゆっくりと空間を楽しみたい方、うなぎやお酒を楽しみたい方などさまざまです。ただ常連の皆さんは、ゆっくりと過ごしたいという思いがあるためか、丑の日は敢えて避けていらっしゃいますね」

あ、なるほど、通の人が土用の丑の日は避けるというのはそういうことなんですね。

「そうですね、スタッフもバタバタしておりますしね」

ここで、僕もうんちくを披露。

それに、うなぎの旬は冬ですものね?

「そうですね。天然はそうですけど」

あー、そうか。養殖の場合は関係ないのか。恥ずかしい!

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うな重を完食。自分にはご飯少なめがちょうどいいくらいだった。ご飯多めでお願いしていたM氏も「僕もちょうどいい量でした」とのこと。

関西と関東の違いを押さえておきましょう

たぶん、うなぎうんちくの中でもよく聞く、関西と関東の違いっていうのを詳しく教えていただけますか?

関西は割き方が腹開きで、割いてからすぐに地焼きします。そのため、余計な油は焼いてる内に落ちてカリッとした仕上がりになるのが特徴ですね。由来としては、商人の町である大阪で『腹を割って話そう』というところからきてるそうです」

おお、腹を割って話そうから、腹開きですかぁ。

関東は背開きで、割いた後は一度蒸し器に入れてから焼き上げます。ちなみに当店では一度蒸して骨抜きしたあとで、さらに蒸し器に入れて焼き上げます。関東は食感としてはカリッよりはフワッとした仕上がりが特徴です。ちなみに関東では腹開きは切腹を意味するようで良くないとし、背開きになったそうです」

なるほど、関東は武士の町だからってことなんでしょうか。

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そして、食後に再びおしぼりを渡される。ああ、うれしいサービスだね。最初は冷たいおしぼりで、食後はあったかいおしぼり。気が利いているなぁ。

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そして、食後のデザートはオレンジ!

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さっぱりしておいしい。なんだかしまる感じがするね。

「うなぎってミネラルなどいろいろな栄養があって、ほぼすべての栄養素が入っているんですが、ビタミンCだけが入ってないそうなんですよ。だからうなぎ屋さんのデザートには果物が多いそうです」

おお、最後まで使えるうんちくありがとうございます。しかし、それを聞くと、よりいっそうオレンジが美味しく感じられるから不思議!

ところで、若女将はうなぎがお好きなんですか?

「いえ、それが大嫌いだったんですよ」

一同「えーっ」

「ウチの主人とデートのときは、いつもうなぎ屋さんに連れて行かれて、内心ではどうしましょうって感じったんですけど、おいしいお店が多くて、だんだん大丈夫になったんですよ」

へえ。でもまだ、大丈夫ってレベルなんですね。

「それが、もう一度食べたいってうなぎに出会ったんです。それが、さきほどの共水うなぎだったんですね。それで私、SNSなんかにも『うなぎ嫌いが夢中になるうなぎ』って説明しているんですよ」

そりゃわかりやすいね。

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それじゃ、若女将、またきますね。今度は共水うなぎを食べにきますよ。

美人ママFile #012

大塚 うなぎ宮川 八馬玲奈さん

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お店のモットーを教えてください。

「より安全安心で、よりお客さんに喜んで頂ける空間と料理を提供することで、うなぎ業界の発展と繁栄に貢献します。お子さん連れでも歓迎致します!」

ママさんの好きな男性のタイプは?

「職人タイプ……ですかね(笑)」

自分の性格をひとことで言うと?

「負けず嫌いです!」

いちばんの得意料理はなんですか?

「カレーライスとか、肉じゃがでしょうか」

どんな言葉で口説かれたらドキッとしますか?

「『頑張ってるね』って言われたらドキッとしますね」

『メシ通』の読者にひとことお願いします!

「最高の共水うなぎをぜひ味わいに、ぜひいらしてください!」

お店情報

大塚うなぎ 宮川

住所: 東京都豊島区南大塚1-53-5

電話:03 3945 1313

営業時間:(昼)11:30~14:00 、(夜) 17:00~21:00

定休日:日曜日、祝・祭日

ウェブサイト:http://www.otsuka-miyagawa.com/

※金額はすべて消費税込です。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

写真:沼田学

書いた人:下関マグロ

下関マグロ

1958年生まれ。山口県出身。出版社、編集プロダクションを経てフリーライターへ。『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『歩考力』(ナショナル出版)『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)など著書多数。 Twitter:@maguro_shimo

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