日本の金融ウーマンが、40代でNYの人気料理家へ転身。再婚・出産を経て、新たな人生を切り開いた生き方とは?

外資系証券会社で働く金融ウーマンから、40代でまったくの異業種である料理家の世界へ華やかに転身された、ひでこコルトンさん。今や「ニューヨーク流おもてなし」をテーマに予約がとれないほど人気の料理教室を主宰し、米国フジテレビでは3年間レギュラー出演。去年には念願のレシピ本を出版されており、ニューヨーク在住の日本人女性の間で圧倒的な知名度を誇ります。

そのコルトンさんが、今年7月に開かれた、NY在住の20~30代女性向けコミュニティ「ニューヨーク女子部♡」が主催するトークショーに出演。この記事では、そのトークショーの内容をまとめ、コルトンさんが夢を実現してきた道のりや、多忙なスケジュールの中どのように仕事・結婚・子育てを両立してきたのかなどを記しました。

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自分を幸せにできるのは、自分しかいない

ニューヨークに来たのは1990年。その前はモルガン・スタンレー証券の日本支社で働いていて、そこで出会ったアメリカ人と結婚しました。彼はニューヨーク本社から派遣されて一時的に日本で働いていたので、任期が終わるとともにふたりでニューヨークに移り住みました。それがニューヨーク生活の始まりでした。

でも、最初はニューヨークに行きたくなかったんですよね(笑)。ここ10年で治安がよくなりましたが、当時のニューヨークはアッパーイースト(ニューヨークの高級住宅街があるエリア)以外は危ないと言われていて、最近トレンドのミート・パッキング・エリアなんてもっての他!今思えば、あの時にマンションを買っておけば、今頃ごろ高く売れたのにって思うんですけどね(笑)。

ニューヨークに来てからは金融の仕事を辞めて、アメリカ料理を学びはじめました。アメリカ料理とは一体どんなものなのか興味があったからで、まずはカナリー・インスティテュート・アメリカという料理学校で基本を学びました。けれど、そろそろ子供も欲しいなと思っていた5年目というタイミングで、結婚生活が破たんしてしまったのです。

前の主人とは色々な価値観が合わなかったですし、その頃私も若かったのでしょうね。男性が女性を幸せにするものだという古い考え方をしていました。でもアメリカ人と結婚するということは、精神的にも経済的にも自立するのが当たり前。離婚という辛い経験を通して「自分を幸せにできるのは、自分しかいない」ということを学びました。

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離婚後は料理の道に進まず、生活のためにウォール街で再就職

その後、日本に帰ることも考えたのですが「こんな辛い思い出を抱えて日本に戻りたくない。いい思い出を沢山作ってからでもいつでも戻れる。」と思ったので、とりあえずこのニューヨークという世界の大都市でやれるだけ挑戦してみようと思いました。

結婚してからはずっと料理の道へ進むプランを立てていましたが、ニューヨークで一人で生きていかなければならなくなったので、再び金融の世界に戻ることにしました。そうして、スイスに本社があるUBS証券会社に再就職しました。

UBSではアメリカ株のセールスをしていました。これがまた面白くて!アメリカのことを色々な業界から学べるのです。ホールフーズ・マーケット(ニューヨークをはじめ、アメリカ全土で人気のオーガニックスーパー)のCEOにもこの時にお会いしました。

ちょうどホールフーズがオープンするタイミングだったので、様々なストラテジーを学びました。例えば、今アメリカでは野菜や果物を山積みにして、フレッシュに見えるように水を吹きかけて販売しているスーパーが多いですが、あれは当時ホールフーズが最初に始めた戦略なんですよ。

ニューヨークでの婚活は難しい。これってホント!

仕事はとにかく楽しかったけれど、私は小さい時に母を病気で亡くしていることもあり、その頃は再婚して早く子供が欲しいと念願していました。母親になることが私の人生で最も重要だと言っても過言でなかったからです。でもエリートで素敵な独身男性が多数いるのでは?と期待していたUBSにいたのは、既婚者ばかりでした(笑)。それにNYで独身女性が独身男性と出会うって、とっても難しいことだったんです。

当時TVドラマ「Sex And The City」が大流行中で、ちょうど私も主人公キャリーのようなタウンハウスに住んでいたのですが、彼女と同様に「本当にどこに素敵な独身男性がいるのー?!」といつも共感の連続でしたから(笑)!

でもそれでも私は結婚がしたかったので、アメリカ人でも日本人でも、友達という友達に「誰かいい人がいたら紹介してね」と言っていたんです。

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プライベートが順調だと他もうまくいく

するとある日、女友達からオフィスに電話がかかってきました。「ひでこに紹介したい男性がいるんだけれど、会いたい?」と言われたので「もちろん」と答えた所、「今からカンファレンスコール(会議電話)で彼に繋ぐね」と言われ、そのまま仕事をしているフリをしながら彼と初めて話をしました(笑)。

彼とはその日の仕事終わりに私の勤めていた会社の受付で待ち合わせをして、一緒に日本食レストランで食事をし、それから今までずっと一緒です。

彼は前の主人とは全然違うタイプで、年下ということもあって可愛らしくて飾り気のない自然体な人でした。私が早く子供が欲しいということを彼も分かっていたので、出会って2年後の2000年の2月22日に結婚しました。なぜか「2」が続いてるから今でも覚えているんです(笑)。そしてふたりだけで南の島に行って、夕方の砂浜で裸足になって結婚式を挙げました。

前回の結婚では、お互いに沢山ゲストを呼んで盛大に式を挙げたのにポシャったので(笑)、2回目はふたりの為だけに挙げました。失敗をすると本当に何が大切かって見えてくるんですよね。だからその経験は無駄になっていなかったなと思います。そして結婚してから「2」年後に息子が生まれました。

結婚や出産などプラベートが順調になるにつれて、仕事など他のことも上手くまわり始めました。ニューヨークは、時に殺伐とした冷たい面のある街。まさに「大都会の砂漠」です。そんな街ではプライベートが幸せでないと、仕事や他の事に対してもなかなか力が出ません。だからプライベートが順調ということは、人生にとって非常に大切なポイントだと思います。

リーマンショックで、起業を決意

息子は予定日にピッタリ生まれたので、私は出産ギリギリまで会社で働いていました。当時39歳の高齢出産だったので、最初は体調が心配でしたが、無事に自然分娩で出産し、その3ヶ月後に会社に戻りました。

でもずっと欲しかった子供が出来たのに、一緒にいられないことにジレンマがあったのと、ナニーさん(フルタイムで子育てをする職業の人)を雇って子育てをするというのが日本人の私には慣れませんでした。息子もナニーさんがあまり好きではなく、私が会社に行くのを嫌がっている姿を見たり、逆に私と一緒にいると息子の精神が安定する事が分かったので、どうしようか悩んでいました。

ちょうどそのぐらいのタイミングで、リーマンショックが起こりました。職を失った人も財産を失った人も沢山いました。その時に金融業界にいた人達はみんな考えたと思います。「一生この仕事でいいのだろうか」と。私も仕事にやりがいはありましたが、「おばあちゃんになってもこの仕事をしているのかな?」と考えた時に、「多分していない」と思ったんですよね。そこで「職を変えるなら今しかない!」と思い、すぐに退職をし起業することを決意しました。

NY流おもてなし料理教室が生まれた経緯

起業するなら漠然とフード関係の仕事をしたいと思っていましたが、実績もない私が突然「お料理教室を始めます!」と言っても誰も来てくれない可能性が高い。でも私は有名シェフの知り合いもいましたし、アイディアも沢山ありました。そこで最初はあるセレブシェフとコラボレーションをして、シェフがデモンストレーションでお料理をするのを、日本人のお客さんに日本語でご説明するイベントを開催しました。それからレストランやワインセラーを巡るツアーなど色々なイベントを企画しました。

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私はこれまでアメリカ人のホームパーティや企業のイベントにたくさん参加してきました。そこで気づいたのは、ニューヨークでのおもてなしやパーティの仕方は、日本とは違いエンターテイメントに溢れているということです。その経験から、アメリカ人のパーティで学んだアイディアやエッセンスを、日本人の皆さんとシェアできるようなお料理教室を開きたいなと思うようになり、料理だけでなく、テーブルトップやフラワーアレンジメント、音楽、香りなどの空間プロデュースまで含めた料理教室をスタートしました。

料理教室では毎回テーマを決めてそれに合わせたコーディネートをしていきます。例えば、バレンタインがテーマだったら料理にマゼンタピンクのカラーを取り入れたり、バラの香りがするデザートをお出ししたり。音楽やテーブルコーディネートもとことんロマンティックに演出します。そんなお料理教室に参加した生徒さんから「ここは普通のお料理教室じゃない!五感をフルに楽しませてくれる3Dなお料理教室ですね!」などと感動していただくことも多く、私自身やりがいを感じています。

ひでこコルトンが考える、ブランディングについて

私はどうせやるなら、普通のお料理教室はやりたくないと思っていました。というのも、ウォール街で働いていた時にトップから「うちの会社は普通の人はいらない。何かに突出した人になりなさい!」と教えられてきたからです。だからまだ誰もやっていないこと、そして他の人がマネできないことをしたいと思ったのです。これってニューヨーカーが常に目指していることでもあると思うのです!

私はニューヨークに長年住み、お客様の接待で素敵なお店にもたくさん行き、お洒落なパーティや感動的なおもてなしを色々見て学んできました。そして日本人にアメリカ株を売ることを通して、日本とアメリカの架け橋となる仕事をしてきました。だから、ニューヨークのエンターテイメントが散りばめられたパーティやアメリカならではの食材や調理方法を日本人にお伝えするお料理教室にしたいと思ったのです。

また「おもてなし」とつけたのは、自分でもちょっと恥ずかしいなと思いながらも、ストレートにコンセプトが伝わるかなと思いました。そのあとオリンピックで「お・も・て・な・し」って流行りましたが、私の方が先ですからね(笑)!!!

ママがハッピーじゃないと、家族もハッピーじゃない!

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パーティ参加者からの質問(1)

―― コルトン流、仕事と家庭の両立の仕方とは?

ニューヨークはベビーシッターなど日本よりも子供を預けられるサービスが多いので、仕事と子育ての両立はしやすいと思います。私は日本でもお料理教室を開催するのですが「小さい子供がいるので参加できないんです。」とおっしゃる生徒さんも少なくなくて、最初聞いた時は「日本ではお子さんがいると、そんなに色々と制限されてしまうんだ!」と驚きました。

でもアメリカ人の考えはそうではなくて、自分でやらなくちゃいけない事はもちろんやるけれど、人を雇って出来ることはお願いする。やっぱりお母さんがハッピーじゃないと、子供も旦那さんもハッピーじゃないですし、家庭も暗くなってしまいます。だから私は色々と工夫をして、1週間に1度は大人だけの時間を作ったり、たまには夫婦ふたりでディナーに行ったり、主人に子供を見てもらって女友達と女子会をしてメリハリを作っています。大人の時間って本当に大切なんです。

人生あと1週間しかなかったら、どうします?

パーティ参加者からの質問(2)

―― 起業と会社勤めのメリット・デメリットについて教えてください。

もちろん会社勤めはお給料が定期的に入ってきますし、安定もしていますからそういう点ではいいですよね。でも人生短いんですよ。もうあっという間に時間が経ってしまいます。特に会社勤めをしていると1年2年、3年がいつの間にか過ぎてしまう。もちろん今本当にやりたい仕事をしていたらいいですが、そうじゃなかったらこれを10年やるのか?20年やるのか?そこまで考えて今の会社にいるかを考えた方がいいと思います。

もちろん転職も出来ますが、といっても同じ分野にしか行かれないと思います。なので本当にこの仕事でいいのかと考えて、それがもしNOだったら、明日にでも次にやりたいことを考えた方がいいと思います。

起業も会社勤めも、どちらも大変なことは沢山あります。だったら人生あと1週間しかないと言われたら、あなたはどうしますか?ってことです。

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そしてもし挑戦するなら、好きな事をベースにしたいですよね。私もお料理教室をするのは体力勝負で大変なことも多いですし、自分の体調不良のせいでクラスがキャンセルになることだけは絶対に避けたかったので、今お料理教室を続けて5年目ですが一度も風邪をひいたことがありません。

いつも年末のクラスで「今年もみなさん、お疲れ様でした!!」と最後のレッスンが終わった後に熱が出るというぐらい、本当に気力でやっています。だからもし次にチャレンジするなら、それぐらいの気力と情熱をもって出来るような好きなことを選ぶといいと思いますよ。

最後にみなさんへメッセージ

人生はあっという間。やりたいことがあったら その夢に近づく努力を明日からでも!

繰り返しになりますが時間はあっという間に過ぎてしまうので、やりたいことがあったらその夢に近づく努力を明日からでもされるといいと思います。そして夢への実現には人との繋がりが大切。運って人が運んでくるものだと思うんですよ。ですから人と人との繋がりを大切にしながら、夢に向かって毎日少しずつでもいいのでチャレンジしていただければと思います。

執筆・写真 鮫川佳那子(さめこ)

ひでこコルトン

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料理家、COLTONS NEWYORK代表取締役

CIA(Culinary Institute of America)で料理の基礎を学ぶ。外資系投資銀行に10年勤務した後、会社を立ち上げる。新聞や雑誌等で幅広く掲載され、2012年より米国フジテレビ・料理コーナーに出演中。クラスは日本からお忍びで参加する芸能人や旅行者、そして現地駐在員の奥様でいつも満席。メンバーは既に1,500名を超える。初めての著書「NYのおもてなしレシピ」が講談社より好評発売中。

「新鮮! こんなの初めて!」 NYのおもてなしレシピ (講談社のお料理BOOK)

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作者:ひでこコルトン

出版社:講談社

協力:honto

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読みたい本に必ず出会える。読みたい本を読みたい形で読める。

「honto」は書店と本の通販サイト電子書籍ストアがひとつになって生まれた

まったく新しい本のサービスです。

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