初のファンミーティングに感動的なCM。スバルのイメージが少しずつ変わっている理由とは?

▲2014年に恵比寿に移転した富士重工業(株)の本社。1階にショールーム、地下に修理工場が併設された近代的な作りは、今のスバルを象徴とさせる

▲2014年に恵比寿に移転した富士重工業(株)の本社。1階にショールーム、地下に修理工場が併設された近代的な作りは、今のスバルを象徴とさせる

2020年に向けたスバルの取り組みを牽引する「SNS推進室」

栃木県佐野市。スバリストにとっては聖地ともいえる「スバル研究実験センター(SKC)」でスバル主催としては初となるファンミーティングが開催された。「SKC」は、その名のとおりスバル車の研究開発が行われる施設。ファンにとっては聖地であり、スバルにとってはまさに聖域だ。一般開放されたのは1999年の「SKC10周年イベント」以来。今回は、全国各地からファン2500人、スバル車1000台が集まり大イベントとなった。このイベントを仕掛けたのが、スバルネクストストーリー(SNS)推進室である。

一般的に企業とカスタマーとのコミュニケーションは複数の部署がそれぞれの目的にそって役割を担うことが多い。例えば、メディアに対して新車を露出してカスタマーへ訴求したいなら広報部門が、テレビやラジオのCMや新聞や雑誌の広告などは宣伝部門が、チラシやパンフレット、イベントなどは販促部門といったところだ。

「SNS推進室は、広報部門、宣伝部門、販促部門など、それぞれの組織のリソースを使い、2020年に向けた取り組みを加速させる役割だと思っています」と教えてくれたのは、SNS推進室の小島敦室長だ。

2020年に向けた取り組み。それは、スバルの新中期経営ビジョン「際立とう2020」にある「スバルブランドを磨く6つの取り組み」のなかのひとつ「コミュニケーションへの取り組み」を指している。示されたスローガンは「スバルがあると人生がもっと愉しい」。商品というハードから、日常や余暇でのスバルのある生活に至るまで、コアバリューである「安心と愉しさ」を拡げていくために、「SNSプロジェクト」が始動したという。

▲2016年3月に栃木県佐野市にある聖地スバル研究実験センター(通称:SKC)で開催されたファンミーティングの様子。抽選で選ばれた1000台、2500人が集まり交流を深めた

▲2016年3月に栃木県佐野市にある聖地スバル研究実験センター(通称:SKC)で開催されたファンミーティングの様子。抽選で選ばれた1000台、2500人が集まり交流を深めた

技術の高さが浸透した今、しっかりと伝えるべきこと

「スバルブランドを支持していただいているお客様に評価頂いているのは、確かなモノづくり。それは、スバルの代名詞でもある高い四駆性能やボクサーエンジンの走りの愉しさであり、近年ではEyeSightに代表される安全性の高さでもあります。おかげさまで、そこはしっかりと伝わっていると思っています」と小島室長。

確かに、ラリーなどで培われたスバルの高い技術に魅せられた「スバリスト」と呼ばれるファンは有名。日本の他のメーカーには見られない現象だ。

「技術の高さがしっかりと伝わったからこそ、次はその性能によって、お客様の人生に何がもたらされるのかまで伝えていく段階に入ったと考えて、新たなコミュニケーションを始めたというわけです」と小島室長。

最も分かりやすい例がCMだろう。「あなたとクルマの物語」をテーマに、日本テレビ系の金曜ロードSHOW!内で放送している限定CM「Your story with」は、CMというよりもショートフィルム。市井の人の人生に車を絡めながら描いた感動の物語は、ネット上でも大きな反響を呼んだ。

「例えば、フォレスターならばSUVとしての走行性能の高さだけではなくて、フォレスターを購入したことで何かに挑戦する姿を描いています。お父さんがサーフィンに挑戦しているCMなどは印象的ですよね」

実は、EyeSightのヒット以来、EyeSightをきっかけに車を選ぶ客が増えたという。小島室長は「もちろん、それはとても嬉しいこと」と前置きしながらも「EyeSightや搭載車種については、深く理解を頂き愛情も感じます。しかし、果たしてスバルというブランドに愛情をもって頂いているかを考えると、そうではないかもしれないと思うんです」と語る。そして、「技術を気に入って頂くのは大事ですが、スバルそのものに愛情をもって頂ける関係をつくっていきたい」と続けた。まさにこれは、SNS推進室が存在する意義とやるべきことが凝縮された一言だ。

▲1つの部門では実現できない大きな仕掛けのかじ取りを担うSNS推進室の小島室長。こうした大きな動きこそ、1つ1つのコミュニケーションを大切にすることが重要だと語ってくれた

▲1つの部門では実現できない大きな仕掛けのかじ取りを担うSNS推進室の小島室長。こうした大きな動きこそ、1つ1つのコミュニケーションを大切にすることが重要だと語ってくれた

車があることで豊かになる人生を応援

スバルファンを増やすための取り組みは、ファンミーティングの実施やCM戦略だけではない。力を入れている1つが「SUBARU ACTIVE LIFE」だ。

「これは、車で広がる趣味や好奇心を応援する活動です。これまでに、『親子での海釣り体験ツアー』や『親子でのスキーレッスン』『クライミング体験イベント』『ハイキング』『ドライビングレッスン』『一眼レフカメラ教室』など様々なプログラムを実施しました」

レッスンの講師は一流のアスリートやカメラマンなどの専門家が務めているというから、かなり本格的だ。この夏には『夏の星空ツアー』や『ティーチングプロと回るゴルフラウンド』、『スポーツ自転車教室』なども開催された。また、工場見学なども企画しているという。

「ここ数年、軽自動車の生産や開発から撤退するなど、車種の選択と集中を進めてきました。自分たちの強みにエネルギーを集中することで他社と差別化することを選んだんです。結果として、ある趣向、有り体に言えば、アウトドアなどの趣味で人生を楽しまれているお客様が増えました。これらのイベントは、そういったお客様を応援するものです」

これら、カスタマーと直接触れ合うイベントに加えて力をいれているのが、SNS(ソーシャルネットワークサービス)でのつながりである。

「ソーシャルメディアを通じたつながりも、ボリュームを増やしたいと思っています。今は、スバルファンのためのコミュニティーサイト『♯スバコミ』に掲示板などのファン同士がつながる仕組みを取り入れています」と小島室長。また、今年度中には、別視点でカスタマーとのつながりを深くするアプリの導入を予定しているという。

「スマートフォンのアプリで、自分の車のメンテナンス履歴が確認できたり、販売会社の担当スタッフとコミュニケーションがとれたりするシステムを導入します。これも1つのつながりです」

「オーナー」ではなく「ファン」に向けた取り組みを続けたい

小島室長は「カーセンサーさんは中古車を取り扱う媒体ですが、中古車でスバル車を購入された方にもぜひつながってほしいですね」と語る。実は、スバルでは。「オーナーコミニティー」ではなく、「ファンコミニティー」という言葉を使っているという。

「スバル研究実験センターでのイベントも、オーナーミーティングではなく、あえて、ファンミーティングとしました。そういう意味では、新車や中古車という区分どころか、スバル車、いや車自体を持っていなくても、自分はスバルファンだと思ってもらえれば、いつでもコミュニティーに参加できる愉しい場にしていきたいと考えています」

自動車業界にいると、ついステレオタイプな表現として「スバリスト」という言葉を使ってしまう。もちろん、独創的な技術に惚れ込んだ熱狂的なファンは今でも多い。

しかし、一方で、EyeSightを入り口にスバル車オーナーとなった、新しい世代のスバリストも確実に増えてきている。新しい世代に向けたコミュニケーションは、車に求める価値観が変化しつつある今の時代にとって、メーカーにとっては欠かせないミッションだ。

技術や性能だけを誇示するだけでなく、その性能でどういった生活を実現したいのかが重視される今時の車選び。SNS推進室は、まさに時代の変化の先端で、これからの車のあり方と真摯に向き合っていると感じた取材だった。

▲趣味×SUBARUで今よりも楽しい生活を過ごしてほしい! 似た思いを持った仲間が集まるきっかけになってほしい! そんな思いを実現するためにSUBARU ACTIVE LIFEがある。今も、様々な活動が全国各地で開催されファン同士の交流が開かれている

▲趣味×SUBARUで今よりも楽しい生活を過ごしてほしい! 似た思いを持った仲間が集まるきっかけになってほしい! そんな思いを実現するためにSUBARU ACTIVE LIFEがある。今も、様々な活動が全国各地で開催されファン同士の交流が開かれている

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SUBARU ACTIVE LIFEのサイトを見るtext/笹林 司photo/富士重工業・編集部

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