学生プロレスに打ち込む慶大生レスラー「リングは自分を表現できる場所」

各大学で学園祭の行われる「学園祭シーズン」が佳境に入った。サークルによる出店、お笑い芸人のステージ、有識者を招いての討論会などさまざまな催しがあるなか、ひと際異彩を放っているのが「学生プロレス」の興行だ。
かつてのようにゴールデンタイムにテレビでプロレス中継が行われることが少なくなった今、彼らはどのようにしてプロレスに目覚めたのか。異性にもてるとは思えない学生プロレスという道を、あえて選んだ理由とは――。2011年11月4日、UWF関東学生プロレス連盟の副代表で慶應大学3年生の潮吹豪(しおふきごう)選手に話を聞いた。
・学生プロレス「UWF関東学生プロレス連盟」の写真を見る
http://news.nicovideo.jp/watch/np103293
■リングネームに下ネタが多いのはなぜ

――潮吹さんを含め、今日試合に出ていた「錯乱ボーイDT」、「ちんことみつき」、「シコラスセイシ」など学生プロレスにはリングネームに下ネタを用いた選手が多いようですが、これはなぜですか?
いわば伝統ですね。プロの方は身体が大きくて、技にも迫力があるのでそれだけでお客さんを魅了できますが、学生、特に1、2年生の頃は技術的に未熟ですから、せめて名前だけでもおぼえてもらおうという意図があるんだと思います。
――学生プロレスは今、どのような状況にあるのですか。
ひと昔前のように、各大学に必ずプロレス同好会があるという時代ではないので、UWF(関東学生プロレス連盟)は10以上の大学から数名ずつ参加して、20名ほどが所属するひとつの団体のようになっています。都内にはこのほか多摩地区の大学を中心とする「SWS」、日大系の「NUWA」といった団体があり、西日本や九州にもそれぞれ団体があります。毎年そうした団体と後楽園ホールで「学生プロレスサミット」を開催します。
――学生プロレスをやっているのはどんな人たちですか。
プロレスのオタク、いわゆる「プヲタ」が多いですね(笑) プロレスを観るのが好きだという人と、中学生ぐらいのときにプロレスごっこで遊んだ経験のあるグループがあるとすれば、後者のような人たちが入ってきます。

――今の30歳代、40歳代の人は子供の頃、ゴールデンタイムにテレビでプロレス中継を観た記憶があると思うのですが、20歳代の皆さんの「プロレス原体験」は何ですか?
私は子供の頃、テレビの深夜番組で新日本プロレスとプロレスリング・ノアの試合を観てプロレスが好きになったのですが、同じように深夜にテレビで観て・・・という人は多いですね。そこからプロレス専門チャンネルだったり、レンタルDVDでプロレスを観たりと分かれていくわけです。
――皆さん、格闘技の経験はあるのでしょうか。
私自身は空手をやっていましたし、ほかにも柔道、相撲、少林寺などを経験してきた者はいますが、大半は格闘技経験のないまま入ってきます。それでも体育会系なので、練習では締めるところは締めて、きっちりやっています。
――現在、プロレスにはいくつもの団体があります。学生プロレスでも各自の「プロレス観」が異なるということはないのでしょうか。
よくあります(笑)。だからこそ、「こうあるべきだ」という信念をそれぞれが体現し、リング上でぶつけ合っているのです。
■学生プロレスってもてそうにないのですが・・・。

――観る側にとって、学生プロレスの魅力とはなんでしょうか。
最高のエンターテインメントだと思っています。特に学生プロレスであれば、選手により共感、感情移入しやすいのではないでしょうか。
――こう言ってはなんですが、学生プロレスのレスラーはもてそうにないのですが・・・。
ほぼ、彼女のいない連中です(笑)。そういった面で他の大学生のように輝けないからこそ、リングに上がりたくなるのかも知れませんね。我々にとって、学生プロレスは自分を表現できる唯一の場所なのです。
――イベントサークルなどに入って楽しい学生生活を送りたいと思ったことは?
実は一度、そうしたサークルに入っていたことがあるんです。みんなで飲んだり騒いだりするのも楽しいのですが、それはどこまでいっても「現実」の延長でしかない。ところが学生プロレスには、リングの上に「非現実」があるのです。これを一度味わうと、もう止められなくなりますね。

――学生プロレスのレスラーたちは大学を卒業後、どういった道へ進むのですか。
一般企業に就職する者もいれば、フリーターになる者もいて、そのあたりは普通の大学生と変わりません。ただ最近は、学生プロレスから本物のプロレスラーになる人も増えていますし、私自身そちらの道に進めればと考えています。
◇関連サイト
・学生プロレス「UWF関東学生プロレス連盟」の写真を見る
http://news.nicovideo.jp/watch/np103293
(土井大輔)
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