ベテラン保育士の活用で助成金!待機児童問題の解決に近づけるか?
ベテラン保育士の活用で助成金増額の政府方針
政府は保育士の定着率を高めるため、勤続年数等の条件を満たす保育所へ助成金の増額を打ち出しました。
保育士は年間4.9万人が就職するのに対して、3.3万人が離職という高い離職率が問題となっていますが、背景には低賃金などの待遇が大きく関係しています。
今回の施策で保育士不足が解消され、待機児童問題の解決につながる切り札となるのでしょうか。
ワーキングマザーの支援に詳しいキャリアカウンセラーが解説します。
保育士が長く働き続けられない理由
厚生労働省のデータによると、保育士資格を有する求職者のうち約半数は保育士を希望せず、その理由として賃金の低さだけでなく、体力への不安、休暇の少なさ等が挙げられています。(注)
全産業の平均月給33万に対して保育士は22万と低く、シフト制での勤務や体力勝負であることや、子供を預かる責任の重さもあり数年で退職してしまうケースは少なくありません。
私立保育所では経験7年以下の職員が全体の6割を占めています。
ベテラン保育士の指導や知見の共有がされないまま、常に若手が入れ替わりながら現場を継続している様子が分かります。
保育士の退職は、子どもたちや父兄への不安材料となって負のサイクルが続いてしまうのです。
保育士が定着するための条件とは
最近の保育士不足の影響から、子育て一段落した元保育士の再雇用にも注目が集まっています。
実際の再就職の現場では一度保育士の仕事から離れたことでやりがいを再認識し、もう一度チャレンジするという元保育士の事例も存在します。
一方で若い保育士たちからは「求人は多いから次の仕事もみつかる」と安易に退職してしまう事例も少なくありません。
彼女たちの支援からわかることは、働く女性を応援する立場でありながら、自分たちは出産や子育てとの両立が難しく復帰せずに退職してしまうことが少なくないという事情です。
また、子供を預かる責任の重さだけでなく賃金や体力面などの複合的な要素から将来のキャリアパスが描きにくいことも退職に繋がっています。
日々の業務では職員や父兄との関係構築に悩む若い保育士の生の声もよく聞きます。
ベテラン保育士の知見で若い保育士の経験不足をカバーしつつ、若い保育士のアイデアを取り入れて時代に合わせた保育の現場を作っていく、お互いが補完し合える職場風土も大切になっていくでしょう。
さらに賃金の改善、子育てと両立できる勤務体系の整備、将来のキャリアについて相談できる場の設置が重要な施策となるでしょう。
助成金からみる保育士の待遇改善の必要性
今回助成金の対象となるのは、国が定める必要な保育士数より多く保育士を雇い、職員の勤続年数が15年以上の私立保育所です。
厚生労働省によると私立保育所の10%ほどが対象となります。
今回の施策により、「保育士の勤続年数」が注目され、職場の環境改善が進むことが期待されます。保育士の賃金改善に直接結びつかなければ、定着率の向上には影響がでてこないでしょう。
そもそも、子供の成長を担う責任が重い保育士という職種に対して「若い女性の仕事だから賃金が安くて当然」と言った見方がなかったのか、社会全体で見直す必要もあります。
保育士の待遇改善は、保育所に子供を預けて働く親たちの生活に直結しており、少子化対策の最も重要課題の一つであるからです。
【参考】
注)厚生労働省データ
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000057759.pdf
(島谷 美奈子/キャリアカウンセラー)
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