“回転寿司”誕生の背景にあったのは、ビール工場のベルトコンベヤー?
即席麺、レトルト食品、焼肉屋、国産ワイン、電卓、クレパス、プレハブ住宅、霊柩車、民放ラジオ、ビヤガーデン……。これらの共通点は、いずれも大阪が発祥の地だということ。
本書『はじまりは大阪にあり!』では、大阪発の30のビジネスに注目。その誕生秘話から、成功にいたるまでの道のりについて、関係者たちへの取材に基づきながら迫っていきます。
いまや全国に約4600軒あるといわれる”回転寿司”も大阪が発祥。1953年、近鉄布施駅近くで、小さな立ち食い寿司屋を営んでいた白石義明さんは、料飲組合でアサヒビール吹田工場を見学に。そのとき、ベルトコンベヤーのうえをビール瓶が流れ、ビールが次々と注ぎ込まれていく光景に目が釘付けになったのだといいます。
折しも、営んでいた寿司屋はお客で大繁盛。職人の人手不足にも悩んでおり、コンベヤーを使えば店の省力化が図れるのではないかと閃いたそう。そして実際に形となったのは、1957年。コンベヤー旋回食事台という名前がつけられ、翌58年4月にはこのコンベヤーが店内をぐるりと回る”廻る元禄寿司”1号店が布施駅前にオープンします。
物珍しさから、マスコミにもどんどん取り上げられてお店は大繁盛。1960年には道頓堀店をオープン、ピーク時には全国に240店を数え、売り上げは1日1億円を超えたそうです。
あるいは、”カプセルホテル”が生まれたのも大阪。現在では都市部に無数にあるカプセルホテルですが、その第1号はキタ・阪急東通り商店街に面したニュージャパン梅田店内にある”カプセル・イン大阪”。1979年に誕生した450室が今も使われているのだといいます。
万博前後から大阪にはビジネスホテルが林立するようになりましたが、観光客もビジネス客もうなぎ登りで、部屋数が足りなかったそう。そこで中野幸雄さんは、宿泊代金をビジネスホテルの半額にする代わり、客室数を倍にし、映画”2001年宇宙の旅”や21世紀のホテルを意識した未来の宿泊施設をつくろうと考え、建築家・黒川紀章さんに設計を依頼。出張費を浮かせられると遠来のビジネスマンの心を掴み、オープン直後は予約が殺到、連日満員の大盛況だったのだといいます。
いまでは当たり前の存在となるまで人びとに浸透した、大阪発祥のモノの数々。その背景には、興味深いストーリーが眠っているようです。
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