新しい住み方のスタイル 中古住宅×リノベーションとは?
中古住宅×リノベーションという住み方が増えている
「中古住宅×リノベーション」という住まいの買い方が普及しています。
分譲住宅では味わえない自分好みの間取りや設備、デザイン性のよさが取り上げられることも多いものですが、実はもっと大切なことがあります。
中古住宅の素晴らしさ、それは「資産価値」です。
「動くに動けない…」バラ色の老後が一転、郊外住宅の悲鳴
1980年代、バブル景気で不動産価格が上昇したこともあり、郊外に「夢の新築」を求めるブームが巻き起こりました。
あれから30年以上が経過、住宅ローンを支払い終えこれから快適な老後が待ち受けているはずでした。
住宅そのものは老朽化するものの、適切にメンテナンスすれば問題ありません。
変わったのは周辺環境です。大型スーパーや病院が撤退し、学校も統廃合、バス路線も廃止するなど、とても不便な生活環境へと変わってしまったのです。
子どもも実家から巣立ち、夫婦二人には手広くなった自宅。ならば今の住宅を売却し、利便性の高い都心のマンションに移ろうと考えても、郊外住宅の価格が下がり、逆に都心は価格が高騰。
これまでの住宅ローン返済でおカネが消え、自宅を売っても二束三文。動くに動けないという状況が実際に起こり始めています。
住み継ぐライフスタイルには、「どんな家を買うか」より「どこに買うか」
国も都市機能を集約し街を活性化しようとするコンパクトシティを推進しています。
平均寿命が2050年に90歳になるとも予想されている中、ライフステージに伴って利便性の高い住宅へ住み継ぐ時代、「一生に一度」から「一生に何度」も住宅を買う住み継ぐライフスタイルが主流となる兆しがあります。
それならば、将来の売却に備えて資産価値を意識する住宅購入が大切です。
そこで登場するのが中古住宅です。
中古の大きな利点は、新築と異なり中古市場で合理的な値決めがされるため、安く買えることです。売却価格が購入価格と同じであれば、住宅ローン返済がそのまま貯金箱にもなるのです。
そしてなにより、資産価値の大部分を決めるといわれる「立地」の選択肢が極めて多いことが特徴です。
新築は余っている土地を探して建てなければなりませんが、中古は好立地の土地にも多く建てられており、資産価値の高い住宅を選ぶことができます。
もちろんどんな中古住宅でもよいわけではありません。
例えば、洪水ハザードマップや地盤マップをうまく活用し、液状化リスクや地盤の強さなどをしっかり確認することが資産価値に直結します。
空き家対策に国も躍起。「中古住宅は不安…」に応える制度ぞくぞく
スーパーが撤退するのもバス路線が廃止されるのも、突き詰めればそこに人がいなくなるためです。
人口も世帯数も右肩下がりになるという、これまで誰も体験したことのない時代に突入している日本。
それはつまり、空き家が増え続ける時代のど真ん中でマイホームを購入することを意味し、「どこで買うか」がこれまで以上に重要となります。
空き家対策の一つは中古住宅の積極活用です。
でもやっぱり中古住宅は不安…。過去のメンテナンス状況や現在の健康状態、将来なにが起こるかわからないという、住宅の過去・現在・未来に対する不安が根強く残ります。
国もこの状況は十分わかっており、不安を解消する制度を整備しつつ、中古住宅が循環利用されるストック型の社会への転換を模索、2020年までに中古住宅・リフォーム市場の規模を倍増(20兆円)させると意気込んでいます。
例えば、「いえかるて」などの住宅履歴情報の蓄積サービスや、建物の現況を知るインスペクション(住宅診断)、検査と保証がセットになった既存住宅売買かし保険などを推進しています。
さらに、長期優良住宅化リフォーム推進事業として、中古住宅を長寿命化させる取り組みに対して費用の一部を補助するなど、あの手この手で中古住宅の質を向上する施策を打ち出しています。
国土交通省は、法定耐用年数に縛られ年数が経つと最終的に建物の価値がゼロとみなされる慣習が中古市場の拡大を阻害している一因と考え、「築年数のみによらず住宅の使用価値を適切に反映した評価手法への改善を図る」とも提言しています。
これらが浸透するにつれ、質の高い中古住宅が維持される社会が実現し、「住むことにコストがかかる」という意識から、「住宅価値を自分で維持・向上していく」というマインドへの変化も起こってくるでしょう。
見えない箇所を見抜く「事前インスペクション」が不動産取引の常識へ
中古住宅にメンテナンスは必須です。リノベーションを前提としたマイホーム購入の場合、内覧の際は現況に目を奪われ過ぎないようにしましょう。
どの壁を取り壊せるか、水廻りをどこまで移動できるかなど、建物の構造や配管の状況といった見えない部分を見抜くことが大切です。
そのためにも、中古住宅を購入する際には必ず事前インスペクションを実施し、家の健康状態を確認しましょう。
2016年5月には、インスペクション活用を促すよう宅建業法が改正されており、今後、不動産取引の常識となるでしょう。
また、リノベーション内容を検討する際には、特殊工法や外観が個性的すぎるものは資産価値が下がる可能性があることにご注意ください。
将来的に一般の大工職人が補修できなかったり、奇抜なデザインでは買い手がつかず売却が困難になる恐れがあるためです。
資金面でいえば、返済期間が短く高金利のリフォームローンを、低金利の住宅ローンに一本化することで返済総額をぐっと抑えられます。同時に、住宅ローン減税を適用する場合には、一定水準の住宅の質が求められることもあり、それに見合う改修内容としなければなりません。
そして、忘れてならないのがリノベーション後に履歴をしっかり残すこと。
住宅履歴情報がない場合、将来、値下げされる大きな原因となり得るためです。履歴情報そのものが資産価値となる時代なのです。
家に縛られないライフスタイルを実現するためにも、「資産価値の下がりにくい中古物件」×「リノベーション」は極めて有効です。
長い目でみて安心・安全・快適な生活を賢く手に入れましょう!
(加藤 豊/不動産コンサルタント)
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